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[グラフィックノベル] 少女が見た1945年のベルリン

[グラフィックノベル] 少女が見た1945年のベルリン
ナチス政権崩壊から敗戦、そして復興へ

2022年3月発売/A5判 248頁
ISBN978-4-7759-4264-2 C0098
定 価 本体2,800円+税

原作 クラウス・コルドン
脚本・構成 ゲルリンデ・アルトホフ
作画・構成 クリストフ・ホイヤー
翻訳 鵜田良江


目次掲載されました

戦争の悲惨さを伝えるドイツ発のグラフィックノベル

 本書は、クラウス・コルドンの長編小説『ベルリン1945 はじめての春』(岩波書店)を原作としたグラフィックノベル。第二次世界大戦の末期を生きる少女の物語である。廃墟と化したベルリンで、恐怖と絶望を強いられながら平和を待ち望む人びとが市街戦を生きのびたようすを描いている。

 クラウス・コルドンの「ベルリン3部作」は、それぞれ1918年、1932-33年、1945年という、ドイツ近代史における3つの重要な転換点に直面したある家族の暮らしが描かれている。この作品で特筆すべきは、物語で採用されている視点で、子どもや若者の目から歴史的な出来事を語り、主人公ゲプハルト家の生活を焦点を当ててストーリーを展開させているところだ。本書ではこの3部作のなかから、わたしたちの時代にもっとも近い3作目を原作として取り上げている。幼いころや10代のころに終戦を経験した多くの人たちは、すでに孫がいる年齢となり、悲惨な戦争の記憶を新しい世代に伝えようとしている。

 作画のクリストフ・ホイヤーは、絵の細部にまでこだわり、綿密な調査にもとづいて、当時のベルリンを忠実に再現した。街は瓦礫に埋もれていたが、エネのような子どもたちは、破壊された国の希望だったのだ。

 本書では、ベルリンで暮らす人びとの惨状だけでなく、出征していた家族や隣人、脱走兵、ナチスの少年兵、強制収容所の生還者、地下活動家、ソ連兵といった登場人物が、独ソ戦、ヒトラー政権、親衛隊(SS)の横行、強制収容所での過酷な生活をそれぞれ語る。当時のドイツを取り巻いていた歴史的背景が把握できる。

 市民が空爆にさらされている、現在のウクライナと同じようなことが77年前のベルリンでも起きていた。

[あらすじ]

1945年春のベルリン。連合国軍が最後の空爆をおこない、地上ではソビエト連邦の赤軍が迫っていた。この街で暮らすエネは12歳。生まれてまもないころ、ナチスの共産党弾圧で両親が逮捕されたため、育ててくれた祖父母のもとで終戦やソ連軍の進駐を経験する。戦争のないはじめての春が訪れたある日のこと、ひとりの男が家の前にあらわれた。それはブーヘンヴァルト強制収容所から生還した、エネのお父さんだった。



著者紹介

Der erste Fruehling ■脚本・構成

ゲルリンデ・アルトホフ(Gerlinde Althoff)
1958年生まれ。1964年以来の熱心なコミック読者である。書店員を育成する専門学校を卒業したのち、大学で文学を学び、数えきれないほどのアルバイトを経験した。そのあいだにアフリカやアジアに何年も旅行している。子どもひとりと、2匹の犬、たくさんのウサギ、数千冊の本とともにビールフェルトに住んでいる。フリージャーナリストとして、また、ニール・ゲイマン、アラン・ムーア、グラント・モリソン、ビル・ウィリンガムなどの作品の訳者として活躍している。

■作画・構成

クリストフ・ホイヤー(Christoph Heuer)
1962年、エッセン生まれ。土木建築設計士を育成する専門学校を卒業したのち、大学で土木工学を専攻。パリ旅行中にフランスコミックの世界を発見し、それから数冊の手引き書をカバンに詰めてコミックを描きはじめた。1993年、エッセン大学でコミュニケーションデザインを学び、2002年に複数の賞を受賞した論文「子どものお話―ある非線形短編」で学位を取得した。その後はエッセンを拠点にフリーデザイナーとして活躍。さらに、デュースブ ルク・エッセン大学土木工学部で教職についている。

■訳

鵜田良江(うだ・よしえ)
ドイツ語翻訳者。1970年、宮崎県生まれ。九州大学大学院農学研究科修士課程修了。技術者として化粧品や洗剤の開発にたずさわったのち、翻訳者となる。訳書に、宇宙英雄ローダン・シリーズ645巻『スリマヴォの冒険』『スターリンの息子』(いずれも早川書房)などがある。

原題: Der erste Fruehling by Klaus Kordon


掲載されました

全国学校給食協会様の『月刊 学校給食』2023年2月号に、本書が掲載されました。

「ドイツの戦争直後の描写は、今、ロシアがウクライナで行っている戦争を思わせる。小麦粉のスープやじゃがいもの皮のステーキなどで飢えをしのいだエネたちの姿に、戦火のウクライナの子どもや大人たちは何を食べているのかと痛切に感じる」
――日本漫画家協会理事 石子順様


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