『市場ベースの経営
価値創造企業コーク・インダストリーズの真実』
2016年10月発売/四六判 382頁
ISBN978-4-7759-7211-3 C2033
定価 本体2,800円+税
著 者 チャールズ・G・コーク
監修者 長尾慎太郎
訳 者 山下恵美子
1961年、チャールズ・コークはウィチタにある父の経営する会社に入社した。当時の企業価値は2100万ドルだった。それから6年後、彼は会長兼CEO(最高経営責任者)に任命された。現在、コーク・インダストリーズの企業価値は1000億ドルで、世界最大級の非上場企業へと成長した。50年にわたるコーク・インダストリーズの成長率はS&P500の27倍を超え、現在も6年ごとに価値を倍増しようと計画している。
一体、この会社は何をして稼いでいる会社なのだろうか。なぜこんなに利益が出ているのだろうか。コーク・インダストリーズの名前は、汚れがつきにくいカーペットや、ストレッチのデニムジーンズや、スマートフォンのコネクターや、超吸収力の高い赤ん坊用おむつの説明書には載っていないかもしれないが、彼らはこれらのすべてを作っている。こうした画期的商品をこの世に送り出したのが、コーク・インダストリーズの市場ベースの経営(MBM。Market-Based Management)システムである。
コーク・インダストリーズはMBMを世界中の事業で実践し、50年にわたって多くの分野で研究を行い、発見をしてきた。MBMが目指すものは「良い利益(Good Profit)」を生むことである。「良い利益」とは、顧客がお金を出しても使いたいと思う商品やサービスや、人々の生活を豊かにする商品やサービスから生まれるものだ。「良い利益」とは、社員が顧客の好みを気づくように社員一人ひとりが経営者の立場で行動する権限を与えられた文化から生まれ、また顧客を満足させる最高の方法から生まれるものだ。「良い利益」とは、長期的価値が顧客や社員や株主や社会のために創造されるとき、初めて生みだされるものなのである。
本書では、およそ60年間にわたるビジネスを通じて、これまで語られることのなかった真実のストーリーをひも解きながら、コークのMBMの5つの要素を紹介していく。どのような規模の企業・業界・組織においても、より多くの良い利益を生みだすために、MBMのフレームワークをどう適用すればよいのかを示していく。
MBMの5つの要素とは、以下のとおり。
Copyright(C) Gavin Peters |
チャールズ・G・コーク(Charles G. Koch) 1967年からコーク・インダストリーズの会長兼CEOで、『フォーブス』の米国長者番付け第4位。コーク・インダストリーズを米国で2番目に大きな非上場企業へと成長させた。コーク・インダストリーズの現在の企業価値は1000億ドル。コーク・インダストリーズとは、カンザス州ウィチタに本社を置き、1940年にウッド・リバー・オイル・アンド・リファイニング・カンパニーとして創業。世界60カ国で10万人を超える社員を抱え、そのうちの6万人は米国内勤務。2009年1月から、コーク・インダストリーズは安全、環境優良度、コミュニティーへの貢献、イノベーション、カスタマーサービスの分野で1000を超える賞を授与された。 |
第1部
序章 ウィン・ウィンの哲学
第1章 輝かしい達成感――父からの教訓
第2章 フレッド亡き後のコーク――ぴったりと合った石を積み重ねる
第3章 女王と女子従業員とシュンペーター――創造的破壊がもたらす信じがたい(時として恐ろしいほどの)利益
第4章 官僚社会と景気停滞の克服――あなたを自由にする経済的概念
第5章 逆境から学ぶ――MBMの応用におけるコークの最大の過ち
第2部
第6章 ビジョン――未知なる未来への案内人
第7章 美徳と才能――まずは価値観より始めよ
第8章 知識プロセス――結果を出すために情報を使う
第9章 意思決定権――組織内における財産権
第10章 インセンティブ――正しい行いを促すための動機づけ
第3部
第11章 自生的秩序――市場ベースの経営の四つのケーススタディ
第12章 結論――押さえておきたい要点
謝辞
付録A
付録B
付録C
「良い利益と悪い利益とは違う、とチャールズ・コークは言っているが、まったくもって彼の言うとおりだ。国際的なスーパーマーケットチェーンで働く人にとっても、中規模の地方の会社で働く人にとっても、起業した人にとっても、本書は良い利益を追求するための指南書となるものだ」――ジョン・マッケイ(ホール・フード・マーケットの共同創立者兼共同CEO)
「成功する会社を経営するための究極の“ハウツー本”だ。チャールズ・コークのアプローチは、非常に思慮深く包括的で、コーク・インダストリーズを米国で2番目に大きな私企業へと成長させた50年以上にわたる経験に根ざしている。彼はリーダーシップや経営モデルにおける価値が果たす役割を重視しているが、今日のビジネス環境においてこれは特に重要だ。会社を次なるレベルに引き上げたいと思っている人にとっての必読書だ」――リチャード・B・マイアーズ(元アメリカ空軍軍人、第15代アメリカ軍統合参謀本部議長)
「本書はアメリカで最も素晴らしいビジネスマンの精神と哲学を探究したものだ。本書では、実例、秘話、印象的な分析を通して、市場ベースの経営(MBM)がコーク・インダストリーズをしていかにして顧客と会社に対して真に持続可能な価値を生みだすことを可能にしてきたかが述べられている。彼は成功だけでなく失敗についても率直に述べている。社会の大義のためにこれらを隠すことなく白日の下にさらそうという意欲が感じられる」――レスリー・ラッド(起業家、ワイナリーのオーナー、ディーン・アンド・デルーカの元オーナー)
「本書はアメリカンドリームの好例を示すものであり、また成功した起業家が慈善活動に対して大金を提供しながら新しい仕事を創造するとき、われわれの国がどれほどの恩恵を受けるかを如実に示すものである。本書が描き出そうとしているのは、チャールズ・コークの成功の秘訣だけでない。彼が弟とともにアメリカで最も気前の良い慈善家になるために歩んできた道のりも描いている。“良い利益”を生みだすための彼らのレシピによって、彼らの会社は成長し、社員に報償金を与え、それでもなおかつ残った大金は重要な慈善活動グループとアメリカの自由を支える組織に投資している。これほど読む価値のある本があるだろうか」――チャールズ・R・シュワブ
「チャールズ・コークのことを書いた本はたくさんあるが、彼自身が書いた本はほとんどなかった。さあ、本書を読んで、彼が何を考え、世界最大の最も成功した会社をどう作り上げてきたのかを、彼から直接学ぼうではないか」――マイケル・L・ローマックス博士(ユナイテッド・ニグロ・カレッジ・ファンドの社長兼CEO)
一般に、成功した経営者が書いた自伝的な読み物は、後付けの恣意的な解釈や都合の良い箇所だけを切り取った記述に終始したり、なかには本人ではなく代筆者が書いたのではないかと疑われるものもあるが、本書は明らかにそれらとは趣を異にしている。これを読めば、チャールズが強い意志を持った博学で聡明な人物であること、そして哲学と理念を有する経営者が専心すれば、企業は短期間でこれほどまでに成長できるという事実に驚かされることになる。
さて、私たちが本書から学べることの一つにオペラント・リソースの重要性がある。タンジブルなオペランド・リソースであるヒト・モノ・カネはコストがかかり有限であるのに対し、情報や知識といったインタンジブルなリソースは、そのオペラント性ゆえに価値創造において無限のレバレッジ可能性を備える。一般的な認識とは違い、企業の業績は経営戦略の優劣のみによって決まるのではなく、固有の文化や組織の構造のような数字に表れない要素が生産性を大きく左右するのである。コーク・インダストリーズの興隆は、非上場企業であるゆえの合理的な意思決定や行動に原因の断片を求めることができるが、成功の真の理由は、科学的根拠に基づいたイノベーションによって創造的破壊を繰り返したことにある。本書が、企業経営にかかわるエグゼクティブ(およびその候補者)並びに経営学専攻の学究だけではなく、この社会の未来をより良いものに変えていこうとするすべての人々に読まれることを切に願うものである。
翻訳にあたっては以下の方々に心から感謝の意を表したい。まず翻訳者の山下恵美子氏には、正確で分かりやすい訳出を行っていただいた。そして阿部達郎氏は丁寧な編集・校正を行っていただいた。また本書が発行される機会を得たのはパンローリング社社長の後藤康徳氏のおかげである。
2016年9月
長尾慎太郎
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