バフェット関連書 | ||||
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著者 ロナルド・W・チャン
訳者 船木麻里
「バークシャー・ハサウェイの今日があるのは、傘下のさままざまな企業がオールス ターによって経営されているおかげです。彼らがいかに傑出しているか、本書にその 答えがあります」――ウォーレン・バフェットバークシャーには「バフェット」が何人もいる!
ウォーレン・バフェットの投資哲学は伝説になるほど有名だが、バークシャー・ハサウェイの経営者たちについて知る人は少ない。本書でロナルド・チャンは、バークシャーの成功に貢献してきた取締役やCEO(最高経営責任者)の素顔に迫り、彼らひとりひとりが若いころにどのようにして今の道を選んだのか、仕事を通じて何を得たのか、身につけたスキルはどのようなものだったのか、そして、いかにして世界で最もダイナミックなコングロマリットの一員になったのかについて、ページを追うごとに興味深いエピソードとともに読者に明らかにされる。
独占インタビューに基づいた深い洞察力と実践的な助言を凝縮した本書の内容は、
■本書への賛辞
「ロナルド・チャンは本書でバークシャー・ハサウェイの舞台裏を明らかにした。ウォーレン・バフェットがバークシャー・ハサウェイの傘下に収めた素晴らしい数々の企業を経営している、驚くべき指導者チームのぜいたくなサンプルをわれわれに紹介してくれた」
――ドン・キーノー(アレン・アンド・カンパニーインク会長)「本書は、バークシャー・ハサウェイ傘下の経営者たちがバークシャーに買収される以前から素晴らしい事業を展開し、現在もそれらの事業が非常に高い収益を生み出している理由について読者に示してくれている。企業幹部や人を指導する立場にある人が本書を丁寧に読み込めば、明日から役立つ多くのヒントがちりばめられていることが分かるだろう」
――プレム・C・ジャイン(『バフェット・ビヨンド・バリュー』の著者兼ジョージタウン大学マクドナー・スクール・オブ・ビジネス財務・会計学教授)
日本語版への序文
序章
第1章 キャシー・バロン・タムラズ――冒険すると人生は変わる/ビジネスワイヤ
第2章 ランディー・ワトソン――チームワークが良ければ必ず成功する/ジャスティン・ブランズ
第3章 スタンフォード・リプシー――達成感こそ働く原動力/バファロー・ニューズ
第4章 バリー・タテルマン――創造性と独創性こそが成功を導く/ジョーダンズ・ファーニチャー
第5章 デニス・ノーツ――数字を超えたところに経営の神髄がある/アクメ・ブリック・カンパニー
第6章 ブラッド・キンスラー――「妥協なき品質」こそが千年企業への第一歩/シーズキャンディーズ
第7章 マーラ・ゴッチャーク――夢中になれるものを見つけるまであきらめない/パンパード・シェフ
第8章 デビッド・ソコル――あきらめず上を目指せばチャンスは必ず訪れる/ミッドアメリカン・エナジー・ホールディングス・カンパニー
第9章 ウォルター・スコット・ジュニア――激変する社会に適応する者だけが生き残る/ミッドアメリカン・エナジー・ホールディングス・カンパニー
結論
謝辞
訳者あとがき
ウォーレン・ バフェット (Warren Buffett) 「バークシャー・ハサウェイの今日があるのは、傘下のさまざまな企業がオールスターによって経営されているおかげです。彼らがいかに傑出しているか、本書にその答えがあります」 |
キャシー・バロン・タムラズ /ビジネスワイヤ 「試練を経験した真のリーダーは自分の能力をひけらかしたり、世間を騒がせたり、大げさな態度をとったりはしない」 |
ランディー・ ワトソン /ジャスティン・ブランズ 「わたしの仕事は、適材適所に人材を配置したら、あとは社員に任せて邪魔にならないようにすることだけです」 |
スタンフォード・ リプシー / バファロー・ニューズ 「若い世代には、インターンシップに参加して実社会を体験するように勧めます」 |
バリー・ タテルマン / ジョーダンズ・ファーニチャー 「従来の方法や一般的にこうあるべきだと考えられているやり方でやっていたら、結果は隣の店よりもヒドイか並のままです」 |
デニス・ノーツ /アクメ・ブリック・カンパニー 「数値で全貌がつかめるか? それはイエスでもあり、ノーでもある」 |
ブラッド・ キンスラー /シーズキャンディーズ 「リーダーは十人十色で、危機的な状況やッ非常事態に陥ってこそ、彼らの真の実力が浮かび上がってくる」 |
マーラ・ ゴッチャーク /パンパード・シェフ 「直販のデモ販売員であるあなたのボスは、あなた自身。自分の目標を立てて、それを達成するように努力する」 |
デビッド・ソコル /ミッドアメリカン・エナジー・ホールディングス・カンパニー 「わたしがバフェット氏から学んだのは、意思決定に感情をはさんではならないということ。どんな場面でも、事実、データ、そして状況に基づいていなければならない」 |
ウォルター・スコット・ジュニア /ミッドアメリカン・エナジー・ホールディングス・カンパニー 「新しい機会に常に目を向けて、柔軟性のあるビジネスマンになり、必要に応じて進んで適応することを、わたしの仕事は教えてくれた」 |
バフェットが頭の切れる人物なのは、本書でインタビューをしたバークシャー・ハサウェイの経営者たち全員の一致した意見である。しかし、彼らは、バフェットが成功した理由はそのこと以上に彼の断固とした心構えや姿勢によるものだと思っている。
投資対象や企業の価値についてバフェットがどのように評価しているのか知りたがる人が多いが、このような質問はあまり意味がない。バフェットの企業価値評価法が一般的な財務関連の教科書に書かれているものと大きな差があるとは、バークシャー・ハサウェイの経営者たちのだれも思ってはいない。バフェットがほかとはっきりと違うのは、市場の動きに振り回されることなく、常に自分の原則を曲げないしっかりとした精神力を持っていることだろう。
しかしこれは、バフェットが変わり続ける市場の力学に関心を払っていないという意味ではない。バフェットはむしろ、市場全体と一緒に進化しながら、投資やビジネスに対する彼自身の心構えは一切崩さないのだ。つまり、バフェットを天才たらしめているのは、彼の心構えや姿勢だといえる。バフェットにとって、ある企業や事業の価値を評価するのはそれほど難しいことではない。勝敗の決め手は、むしろしっかりとした心構えなのだから、感情をいつもコントロールすることのほうが重要なのだ。
しかし、こういった単純明快な答えでは満足する人はほとんどいない。われわれは、どうしても専門的で定量化できる答えを求めてしまう。それは、成功を数学の方程式に変えることができれば、あとは数字を当てはめて、すぐにビジネスに応用ができるからだ。このような考え方は、必ずしも誤りではないのかもしれない。だが、ビジネスはアートであり、科学でもあるのだということを理解する必要がある。人類の偉大な発見のなかには、方程式や数学からではなく、鋭い観察眼や論理的な思考によって得られたものがある。チャールズ・ダーウィンがその好例だろう。彼の代表作『種の起源』のなかにはグラフも数式も実験データもないが、ダーウィンは、それぞれの種の性質や起源を入念に、そして論理的に推理することで、進化のメカニズムを解明した。史上最も偉大な科学者の一人として認識されているダーウィンはわれわれに、科学は時としてアートでもあることを教えてくれているのだ。
たしかに、ビジネスの世界では正しい計算をするために、ある程度の財務会計の知識は必要だ。しかし、われわれがビジネスマンや投資家として平均的な存在から優れた存在へ、そして偉大な存在へと進化できるかどうかは、つまるところ、たったひとつの勝利の方式ではなく、しっかりとした考え方を身につけられるかどうかにかかっている。
2011年11月
ロナルド・W・チャン
本書を執筆しながら30歳を迎えたわたしは、これまでの人生を振り返り、自分がいかに恵まれるているかを実感している。香港で生まれ育ち、アメリカに留学する機会を得たわたしは、心から楽しいと思える仕事に巡り会えたのだ。20歳代のうちに成し遂げたいと思っていたことを達成できたことに感謝をしている。
株式市場に興味を持ち始めたのは大学生のころだった。最初はほんの小遣い稼ぎのつもりだったが、そのうちに銘柄選択に夢中になっていた。そして、正しい投資判断に基づいた自分の投資計画の展開を注意深く追うことに、最高の満足感を得ることができた。
2002年にニューヨーク大学のスターンビジネススクールから、財務と会計学の学位を修得して卒業すると、目の前には就職の選択肢が幾つかあった。しかし、自分の情熱に従い、投資についてさらに学びたいと思ったのだ。そこで翌年、投資パートナートップを設立し、銘柄選定を本業にすることにした。
新卒者はひとまず就職をして、仕事の経験を積むべきだというのが世間一般の考え方だが、投資パートナーシップを立ち上げたいというわたしの判断に、父は全面的に賛成してくれた。父は、投資家になるための勉強は貴重であり、とくに若いうちにその経験をするのは、将来、役に立つと考えていたようだ。
父からは、知性を磨き続け、常識的な行動を取ることを忘れなければ、いずれうまく行くと助言された。父は、わたし以上に、わたしの能力を信じてくれたのだ。
起業するとき、わたしのそばには信頼してくれるビジネスパートナーが何人かいた。設立当初は、優れた投資成果を上げることよりも、持続的な事業を作り上げて、自分の実力を証明したかった。その意味において、ウォーレン・バフェットのバリュー投資哲学は、わたしのスタイルに最適だった。
バリュー投資とは、本質価値よりも安く売られている投資対象を見つけだすことだと言える。バフェットの恩師であるベンジャミン・グレアムによると、バリュー投資とは徹底的な投資分析に基づいて、元本の安全性と適正なリターンを確保する投資法だ。
バフェットはこの定義にさらにこう付け加えている。「投資した元本に最低限、見合う価値を見いだせなければ、それは『投資』とは言えないでしょう? まだまだ高値で売り抜けられると思いながら、計算した企業価値を超えた株を持ち続けるのは単なる投機です」
このバリュー投資のコンセプトはもっともに思えた。そこでわたしの事業もこのコンセプトに基づいて運営することにしたのだ。
自分の投資哲学をさらに深めたいと思い、2003年のバークシャー・ハサウェイ年次株主総会に参加するためにアメリカのネブラスカ州オマハに向かった。当初の目的は、投資の秘訣を教わることだったが、バフェットやビジネスパートナーのチャーリー・マンガーは、ビジネスや投資についてだけではなく、人生そのものについて語っていた。
わたしはまだ若く、インスピレーションを求めていたので、彼らの考え方に深く感銘を受けた。バフェットとマンガーは、価値志向の考え方だけではなく、明晰さや個人の幸せを象徴していたのだ。その哲学を知れば知るほど、わたしは以前より投資家としての腕が上がり、人として成長し、そしてこの二つの間には相乗効果が生まれた。
そのときも今もまったく変わっていないが、わたしは自分のキャリアのすべての瞬間を楽しんできた。バフェットの言葉を借りるなら、毎朝、仕事にタップダンスをしながら通っているのだ。
しかし、この経験を同世代の仲間に話してみて気づいたのは、彼らの多くがキャリアや、自分が人生に何を求めているのか確信が持てないようだった。情熱を抱いているものがあったとしても、それを追求できない理由が常にあった。たとえば、仕事はつまらないが給料は良い、あるいは、情熱の対象はもう少しあとまでとっておこうというような具合に。 2007年後半から2008年にかけて世界規模の金融危機が起きると、さらに多くの同世代の仲間たちが自分の仕事の将来性や人生について悲観的になっていた。当然、わたしも不安だった。しかし、できるだけ前向きになり、周りの人々が楽観的になれるように手助けしたいと思うようになったのだ。
そこであるアイデアがひらめいた。成功した人たちが、人生の最初の時期をどのように過ごしてきたのかについて知りたいと思ったのだ。人生や仕事上の助言をしてくれるとしたら、彼らは何を言ってくれるのだろう。その思いをもとに、本書の概念を確定し始めた。同世代の仲間や、あらゆる職業の人たちが、本書と自分を比較しながら、参考にしたり、キャリアの青写真として活用できるような本だ。
本の趣旨をさらに追求していくうちに、バークシャー・ハサウェイがまさにこのプロジェクトに最適な存在だと思えてきた。バークシャー・ハサウェイは、靴や家具やキャンディー、建築資材やエネルギー関連、新聞までカバーするコングロマリット(複合企業)なのだから。
バークシャー・ハサウェイ傘下の各企業の経営者たちは、自分の仕事に情熱を注いでいる人ばかりだ。さまざまな背景を持ち、自分が一番楽しいと思えることを、それぞれの業界で実現しているこれらの経営リーダーなら、人生の教訓や事業の原則について、多くの助言を提供してくれるに違いない。
2008年の暮れに、わたしはウォーレン・バフェットに自分の執筆計画と、その目標について説明する手紙を書いた。間もなく返事をくれたバフェットは、こう言ってくれたのだ。「これはやらない手はないね!」。バフェットの前向きな反応に背中を押され、バークシャー・ハサウェイの経営者ひとりひとりに連絡を取り始めた。最初のころは、くじけそうになることも多かったが、あきらめなかった。そして、そのうちに彼らは取材の要求に応じてくれるようになったのだ。
次の一年間で、わたしはバークシャー・ハサウェイ傘下の企業の経営者たち九人に会うことができた。そのひとりひとりに会ううちに、それぞれが経営者として、また個人として、学ぶべき異なる強みを備えていることが分かった。
たとえば、ジャスティン・ブランズのランディー・ワトソンはチームワークの大切さについて語ってくれた。ミッドアメリカン・エネルギー・ホルディングスのデビッド・ソコルは規律について論じてくれた。彼らとの直接的な対話を通じて学んだものは計り知れない。
わたしにとって本書の執筆は夢の実現を意味する。そして、この計画を追求したのは、だれかのためになると思ったからだ。バフェットの名声にあやかりながら利益を得るつもりはないと彼には伝えてある。本の売り上げの一部は義援金として教育機関に渡されることになっている。
本書の主役は、バークシャー・ハサウェイのカーテンの影に普段は隠れているリーダーたちである。彼らのキャリアについて学ぶ旅を通して、彼らがこれまでの人生のなかで、どのようにさまざまなスキルを身につけ、そしてまた、彼らのキャリアが時間をかけて育まれたものなのだということを知った。彼らの成功は一律ではない。
本書は、ほかのバフェット関連の書籍のように投資アドバイスを提供することはないかもしれないが、人生について、また人生の可能性や、人生がどうあるべきかについてのヒントは提供できるはずだ。
2010年1月
ロナルド・W・チャン
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