2023年3月発売/A5判 上製本 256頁
定価 本体 3,800円+税
ISBN978-4-7759-7311-0 C2033
デールはトレード歴10年以上の専業トレーダーである。彼は大学でファイナンスの学位を修得し、卒業後は大手ブローカーでマーケットアナリストとして働き始めた。就職後、会社は顧客本位ではなく、利己的で、手数料のことしか頭になく、責任感もなければ、顧客の利益など一切考えていないことに疑問を感じてすぐに辞めることになった。会社を辞めたあとは、苦労をしながら、専業トレーダーの道に進み、今はトレードで生計を立てている。
デールがトレーダーとして一皮むけたのは、巨大な銀行や金融機関の「足跡」をたどることを「発見」したときだった。なぜなら、市場を動かしているのは銀行や金融機関で、彼らが市場を操作していたからだった。彼は可変式価格帯別出来高指標を用いて毎日トレードしている。
本書には、デールがトレードを始めたころ、こういう本を読みたかった、こういう本があれば無駄な時間を節約できたというエッセンスと指針が詰め込まれている。本書は迷えるFXトレーダーの救世主となるだろう。
本書に書かれていることは以下のとおり。
●プライスアクションはどう機能するのか
●すぐに使えるプライスアクション戦略
●価格帯別出来高の仕組み
●私のお気に入りの価格帯別出来高戦略
●自分に合ったトレードスタイルの見つけ方
●ポジション管理法
●正しい資金管理法
●トレードの心理学
●正しいバックテストのやり方
●最もよくある間違いとその回避法
●私自身のトレード法とルール
値動きが横ばいの重要なエリアにアミをかけている。
このような値動きが横ばいのエリアで、大きなポジションが買い集められている証拠を見てみよう。
上の図とまったく同じものだが、価格帯別出来高を表示している。
出来高が多いのは、値動きが横ばいのエリアであることがわかる。
つまり、ポジションの大半がこのエリアで買い集められていた。
この横ばいの値動きは、1分足でも30分足でも日足でも週足でも、
つまりどの時間枠チャートにもあり、重要なポイントだ。
アグレッシブな買い方が価格を押し上げたり、
売り方が価格を押し下げたりすることがあるが、
たいていの場合、横ばいの値動きのあとに起こることが多い。
これは大口の機関投資家のポジションのを積み上げに関係している。
市場は「機関投資家によって操作されている」というのは、
『出来高・価格分析の完全ガイド』にも共通する考え方だ。
こちらは株式市場について書かれたのに対して、本書はFX市場を対象にしている。
序章
著者について
本書の内容
なぜ秘密にしておかないのか
注意事項
第1章 プライスアクション
なぜ価格は動くのか
だれが価格を動かすのか
指標
プライスアクションを用いて機関投資家の動きを見抜く方法
横ばいの値動き
アグレッシブな最初の値動き
より高い値動きやより安い値動きへの強い拒絶
全体像
機関投資家の動きを見抜くにはどの時間枠を使えばよいか
プライスアクションを用いたトレード戦略
戦略1――支持線が抵抗線になる(逆も同様)
戦略2――オープンドライブ
戦略3――AB=CD
戦略4――取引開始
戦略5――デイリーオープン
戦略6――前日や前週の高値と安値
強い高値や安値、弱い高値や安値
失敗したオークション
第2章 価格帯別出来高
価格帯別出来高への案内
どこからデータを取るか
価格帯別出来高対マーケットプロファイル
価格帯別出来高――ポイント・オブ・コントロール
価格帯別出来高――さまざまな形の価格帯別出来高とその応用
「D型の価格帯別出来高」
「P型の価格帯別出来高」
「b型の価格帯別出来高」
「細型の価格帯別出来高」
可変式の価格帯別出来高
価格帯別出来高によるセットアップ
出来高セットアップ1――出来高積み上げによるセットアップ
出来高セットアップ2――トレンドによるセットアップ
出来高セットアップ3――拒絶のセットアップ
価格帯別出来高セットアップ――ビデオ
逆トレード
第3章 自分のスタイルを見つける
デイトレード
デイトレード向きの金融商品
デイトレードにおける損切りと目標値
スイングトレード
スイングトレード向きの金融商品
スイングトレードにおける損切りと目標値
スイングトレード――ビデオ
長期投資
長期投資向きの金融商品
長期投資における損切りと目標値
第4章 どんな金融商品をトレードするべきか
相関性と過度なリスクイクスポージャー
手いっぱいになる
正しい通貨ペアを選ぶ
正しい金融商品を選ぶためのステップ
主要な通貨の特徴
私のお気に入りの商品
ボーナス――トレード向きの仮想通貨
第5章 マクロ経済ニュース
ヒント1 ニュースの中身やそれに対する市場の反応を予想しようとするな
ヒント2 マクロ経済ニュースを見逃さない
ヒント3 予想外のニュースにどう対処するか
ヒント4 さまざまな種類のマクロ経済ニュースの重要度とそれがもらたし得る影響
1.弱い赤色のニュース
2.標準的な赤色のニュース
3.壊滅的な赤色のニュース
ヒント5 どのニュースがどの通貨ペアに影響するか
ヒント6 重要なニュースの発表中はトレードしない
ヒント7 重要なニュースの発表前に手仕舞う
ヒント8 ニュース発表後いつトレードを再開するべきか
ヒント9 マクロ経済イベントの通過後に仕掛け直す
ヒント10 ニュース発表後の動きにトレードを合わせる
第7章 ポジション管理
目標値
固定目標値
出来高に基づく目標値
損切りの設定
固定損切り
出来高に基づく損切り
出来高に基づく損切り――別の損切り手法
損切りの管理
早めに手仕舞う
第8章 資金管理
1回のトレードでどれくらいのリスクをとるべきか
リスク・リワード・レシオ
ポジションサイジング
相関性
第9章 トレードの心理学
4種類のトレード
良い勝ちトレード
悪い勝ちトレード
良い負けトレード
悪い負けトレード
ルールを破らないために
破滅と絶望のサイクル
勝ちトレードの扱い方
負けトレードの扱い方
標準的なドローダウンの対処法
過度なドローダウンの対処法
正しい元への戻り方
第10章 バックテストとトレードの始め方
フェーズ1――大ざっぱなバックテスト
フェーズ2――徹底的なバックテスト
フェーズ3――マイクロトレード
フェーズ4――半分のポジション
フェーズ5――完全なポジション
トレード日記
第11章 トレードでよくある10の間違い
1.指標を使う
2.マーチンゲール法
3.1回のトレードを過信する
4.ポジションが大きすぎる
5.自分の間違いを認めることができない
6.損切りを置かない
7.無計画に仕掛ける
8.他人のアイデアをうのみにする
9.戦略をコロコロ変える
10.質の低いブローカーに固執する
第12章 私流のデイトレードのやり方
どのように仕掛けるか
損切りと目標値をどこに置くか
損切りを動かす
仕掛けポイントへの試し
どれくらいの期間ポジションを保持するか
寄り付きでの窓空け
以前の仕掛けポイント
有効なセットアップをすべて使う
第13章 トレード例
デイトレード
セットアップ1――出来高積み上げによるセットアップに基づくトレード
セットアップ2――トレンドによるセットアップに基づくトレード
セットアップ3――拒絶のセットアップに基づくトレード
逆トレード
スイングトレード
セットアップ1――出来高積み上げによるセットアップに基づくスイングトレード
セットアップ2――トレンドによるセットアップに基づくスイングトレード
セットアップ3――拒絶のセットアップに基づくスイングトレード
おわりに
また、これら2冊の著者に共通していることは、「市場は機関投資家(大手金融機関)によって操作されている」と考えていることである。そうした極端な解釈が神の目から見て真に正しいかどうかといえば、現実的にはその命題が普遍的かつ恒常的に成立しているわけでもないだろう。しかし、それが多少なりとも説明力を持つかぎり、その思い込みは、それを信じる者に強い信念と自己規律をもたらし、彼らをトレードにおいて極めて有利な立場に導くことになる。
一方で、多くの投資家やトレーダーは、市場を正確に予測しようとして、あまりに数多くの情報やデータを参照しようとしている。本書にも指摘があるが、投資の世界に数えきれないほどの指標があふれているのはそのせいである。だが、それは一種の自己撞着にすぎない。多くの情報に基づいてあなたが市場で何かを買おうとするとき、同じものを売る相手が現れて売買が成立することを不思議に思わないだろうか? 相手も自分と同じことを知っているはずなのに。
四半世紀以上前ならともかく現代の市場においては、売買主体間の情報格差は極めて少ない。今や他人が知らないのは、あなた自身がどのように考え行動するのか、その限界はどこなのかということだけだ。だから私たちは、情報による差別化よりも、ほかの市場参加者の動きを知り、彼らが非合理的に行動せざるを得ない時と場所を見極め、その刹那に自身は冷静さを保ち、合理的に行動することを重視するのである。出来高によって市場を理解する著者らの体系は、それに必要な優れたヒューリスティクスをわれわれに与えている。
本書は著者の長年の研究と実践に基づいた市場理解の解説書で、稀有な秀作である。ぜひクーリングの著書と合わせて読んでいただきたい。なお、売買主体の動向をより深く理解したい方には、CFTC(米商品取引委員会)が発行しているCOTリポート(コミットメント・オブ・トレーダーズ・リポート)のフォローを強く推奨する。これについては、カーリー・ガーナーの『先物市場の高勝率トレード――市場分析、戦略立案、リスク管理に関する包括的ガイドブック』(パンローリング)が非常に詳しい。
翻訳にあたっては以下の方々に心から感謝の意を表したい。翻訳者の西田隼人氏は実に丁寧な翻訳を、そして阿部達郎氏は丁寧な編集・校正を行っていただいた。また本書が発行される機会を得たのはパンローリング社社長の後藤康徳氏のおかげである。
2023年2月
私の名前はトレーダー・デール。2008年から専業トレーダーをしている。経済学とファイナンスとトレードに並々ならぬ熱意を持っている。大学でファイナンスの学位を取得し、ポートフォリオマネジャーと投資マネジャーとデリバティブ取引の資格を持っている。トレード世界の多くの「カリスマ」たちとは違い、私は正当な教育を受けた有資格者であると自負している。もちろん、これらの教育や資格は私の両親のおかげで得たものである。両親は私の学生時代を大いに支えてくれただけでなく、私が駆け出しのころにも助けてくれた。
私は大学を卒業後すぐに、大手証券会社でアナリストとして働き始めた。大学を出てすぐにアナリスト職に就けるのはありがたい話だと思う人が多いだろうが、私はあまりそう思わなかった。この仕事には2つの問題があった。まず、あれをしろこれをしろと言ってくる上司がいることが嫌だった。私は会社員であるためではなく、将来独立するために常日ごろ努力していたからである。次に、顧客に対する会社の姿勢が嫌いだった。これは大半のFXブローカーに当てはまる問題であるだろう。実のところ、彼らは自分の顧客が儲かるかどうかなど気にしていないのである。彼らは利己的で、自分たちが取る手数料のことしか考えていない。責任感もなく、顧客の利益など気にもしない。このような会社の「道具」であることが嫌で、私は会社を辞めた。
会社を辞めたあとは、トレードに全力を注いだ。まさに全身全霊で臨んだ。私はあらゆる種類のトレード戦略を検証し、さまざまなアプローチを試し、多種多様なパターンのバックテストを行うなど、できることはすべて行った。これらの作業は毎日12〜15時間に及んだ。
私はさまざまな商品をトレードし、多種多様なトレードスタイルを用いた。株や投資証書を取引することもあれば、自動化したシステムトレードを行うこともあった。そして現在は、FXの手動トレードを中心に行っている。
FXのトレードを始めたころは、短期間で巨額の利益をもたらしてくれるような「聖杯」を見つけださなければならないと考えていた。そして、さまざまなトレード指標のなかからそのような聖杯を探し出そうとした。しかし、うまくいくはずもなかった。一般的な指標のほとんどをあらゆる設定で試してみたが、どれもあまりうまくいかなかった。少なくとも長期的にはうまくいかなかったのである。
初めてはっきりと成功したと思ったのは、すべての指標を見ないで、プライスアクションだけに絞ってやり直したときであった。このとき初めて自分の成長を実感した。さらにプライスアクションと価格帯別出来高を組み合わせたときは、まさに「ひらめきの瞬間」であった。このときにようやく自分が普遍の優位性を手にし、継続的に利益を上げることができるのだと感じた。
本書を書くにあたっての私の目標は、10年前、私が駆け出しのころに欲しかった本を作ることである。この本があったなら、当時の私は何をすればいいのかも分からないまま無為に過ごすこともなく、研究に多くの時間を使うこともなかっただろう。そして、この本こそが複雑なトレードの世界における私の指針となり、私を正しい道に導いて、トレードに必要なすべてのことを教えてくれたはずだ。
本書で学ぶのは次のとおり。
●プライスアクションはどう機能するのか
●すぐに使えるプライスアクション戦略
●価格帯別出来高の仕組み
●私のお気に入りの価格帯別出来高戦略
●自分に合ったトレードスタイルの見つけ方、トレードするのに最も良い投資商品は何か
●マクロ経済ニュースに対してトレードをどのように管理するか
●相場分析の1から10
●ポジション管理法
●正しい資金管理法
●トレードの心理学
●正しいバックテストのやり方、バックテストした戦略を用いたトレードの始め方
●最もよくある間違いとその回避法
●私自身のトレード法とルール
これらすべてについて多くの例と画像を交えながら、シンプルかつ的確な説明を通して学ぶ。
なぜ秘密にしておかないのか
多くの読者が抱くであろう非常に重要な疑問に答えよう。そもそも、この疑問を持たないのであれば、賢い投資家とは言えない。その疑問とは次のようなものだ――なぜ自分のトレード戦略を他人に教えるのか。自分だけのものにしておけばいいではないか。本当に良い戦略なら、秘密にしておけばいいのではないか。
この業界にはあまりにも詐欺師が多い。何ら金融教育を受けておらず、資格も持たず、実際の相場をよく知らないのにもかかわらず、自らを「カリスマ」と名乗る人間が非常に多い。彼らは自分のサービスにお金を払う信者たちが成功するかどうかなど気にしていない。そして、私が勤めていた証券会社も同じであった。
私はこのような慣例に強く反対している。そして彼らとは違うやり方で、本当に人助けをしたいと思っている。そもそも他人を助けたからといって、私が損を被るわけでもない。読者や私と同じようにFX取引をしている人がどれくらいいるかご存じだろうか。個人投資家はどれほどの出来高を作っているだろうか。たった3.5%である。FX取引において、1日当たりの出来高のうち個人投資家の占める割合は3.5%しかないのである(BIS[国際決済銀行])。そして、残りは機関投資家によるものなのである。
この事実に基づくと、読者をはじめとする個人投資家のトレードを手助けしたところで、相場には何ら影響がなく、私自身や私のトレード戦略に危害が及ぶこともない。それなら、自分の持っているものを共有しようではないかと思った。あなたに学ぶ気があって、自分のトレードをより良いものにするために役立てる気があるのならば、私は喜んで自分の知識を惜しげもなく公開したいと思う。
注意事項
「手っ取り早く儲かる」魔法のガイドなどありはしない。私は皆さんにウソをついたり、守れない約束をしたりはしない。トレードや価格帯別出来高分析を習得するためには、時間をかけて努力しなければならない。魔法の公式を探すつもりなら、この本では見つけられない。私から約束など一切できない。私が普段やっていて、私がうまくいっている内容を公開するだけである。私の手法が皆さんにとってもうまくいくという保証はできない。人それぞれやり方が違うので、私のトレードスタイルが合わないという人もいるかもしれない。しかし、それが現実なのである。一方で、これまでトレーダーとして十数年のキャリアを積むなかで、本書で紹介するトレード手法こそが私にとって最良のものであることもまた事実である。これから説明するのは、私が知るかぎり最も優れた手法であると確信している。
それでは、「魔法の薬」をもらえないことに不満がなければ(そもそもそんなものありはしないのだが)、第1章に進んでほしい。