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青柳孝直

1948年富山県生まれ。1971年早稲田大学法学部卒業後、邦銀に入社。その後、外資系金融機関の外国為替ディーラーとしてニューヨーク、ロンドン市場などの金融最前線で活躍。外為経験は20年余り。海外滞在中にコモディティ・マーケットに興味を覚え、その影響から、日本古来の相場手法の研究を始める。投資全般に関するコンサルティングを主たる目的として1997年、金融コンサルティング・相場分析・翻訳・執筆・講演活動を主たる業務内容とした、株式会社青柳孝直事務所を設立。日本におけるギャン理論研究の第一人者でもある。著書は50冊を超えるが、代表作としては、「ギャン理論」「不動産大暴落」「ジョージ・ソロスの戦略」 「日本国倒産」など多数。

ギャン理論の日本の第一人者 青柳孝直ブログ

『びー・だぶりゅー・れぽーと』2009年11月30日付627号より

11月30日
以下は青柳事務所が発行する、週刊「びー・だぶりゅー・れぽーと」
2009年11月30日付627号の巻頭文です。

今回分は11月27日の講演会出席のため、26日に執筆したものです。

●ドル円の長期的分析
月末恒例のドル円の長期的分析です。
ジリジリした円高・ドル安の流れが継続しています。特徴的なのは、急激な流れではないという点。客観的に考えれば、確かに米国の経済不況も深刻ですが、不況の嵐が吹き荒ぶ日本の通貨・円は買われるはずがないという、根幹の警戒感があるに違いありません。
いすれにしても神経質な展開です。理論的にはドルが反転し易い地合いである点は認識
したい局面です。

-ジリジリした段階的な下落で、86円台に突入。
08年10月の大陰線の余熱残る。
サイクル転換直後で「更なる円高の始まり」か「大底をつけにゆくのか」は未知数。
乖離拡大で、理論的には反発し易い地合い。歴史的な正念場-


1. ドル円の月足は12ヵ月サイクルが機能しているようです。08年10月の大陰線の余熱が残り、ジリ安の流れになっています。07年6月22日の124.14円を頭に下押しが先行してきました。ここ08年9月からの陰線5連発はここ10年来なかったもので、その余熱が残っています。

2. 08年3月16日の95.77円で底打ち、4月から8月まで大きな空間をベースにした自然反発となりましたが、8月の110.48円を頭にした急落で、99年11月30日の101.35円と04年12月2日の101.83円で構成される(長期的に重要な)ダブルボトムを下抜けています。同レベル下抜けの影響が後を引いています。結果的に同レベルがレジスタンスとして機能する態勢です。

3. 長期的下値のメドは07年6月22日の124.14円と06年5月17日の波動倍返しの95.10円。04年5月14日の114.80円と04年12月2日の101.83円の波動倍返しの88.86円。08年8月の高値110.48円と08年3月の安値の95.77円の波動倍返しの81.06円。

4. 直近の安値・08年12月18日の87.19円を下抜けています。12ヶ月サイクルが転換したことで、4月6日の101.24円を頭にした逆V字型の下落態勢が本格化しています。今回のサイクル転換が「更なる円高・ドル安を呼ぶ」のか、「大底をつけにいっているのか」は未知数。ただ、大きな空間が目立ち、形態的には反発し易い地合い

5. 歴史的な下押しの流れとなっていますが、08年10月の強烈な大陰線の影響が依然として残っているようです。この影響を払拭するにはもう少し時間がかかりそうですが、ここにきて“反発マグマ”も燻ぶり始めています。

6. ドル円は「拡大した乖離は時間がかかっても修正する」性格があります。形態に安定性のないまま、乖離が拡大しており、形態的には「買い拾い」パターンと見るのが自然。反発のタイミングを念頭に対処したい局面です。

7. 大きな転換期の様相は否めません。根底には「相当の円高レベル」という警戒感ありつつも、1995年4月19日の79.75円という歴代安値を意識しながらジリジリした動きが続いています。私見ですが、「売り」で攻めるよりは「買い」で攻めてみたい局面です。
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ネット取引拡大と短期利益主義

11月24日
●金融取引はパチンコ・ゲームと同じか?

パチンコをしたことがありますか?
「そんなの当たり前」「やったことあるに決まってる」
と言われる方が大半であると思う。

最近のデジタル化したパチンコ・ゲームは、ネットを利用した金融取引、
特にネット為替取引に似ていると思う。
「今日は当たり台を選択しよう」と、開店前からパチンコ店の前に行列ができ、
恒常的にゲームが継続される。

本来の仕事を放棄し、取引回数を多くし、その戦績を競うネット為替取引の世界に
蔓延する風潮は、現在のパチンコ店の風景そのものであると思う。
だが、血眼になって頻繁な取引をして、果たして恒常的に利益が上がるのだろうか。

●地上デジタル化の意味
ここ2年、「地デジの準備をお願いします」と連呼するCMが盛んに流されている。
2011年7月には日本では地上デジタル化(=アナログ停波)が施行される。

そして地上デジタル化に向け、ネット取引は益々拡大していく傾向にある。
一台のテレビ受像機が、テレビ機能だけではなく、PC機能を具備する時代が本格的に
始まる。逆にPCで「TV番組を見る」時代になる。
要は1台の大型受像機で、世界のTV番組は勿論、バンキング(預金の出し入れ)や
生損保の加入、買い物や、為替取引・株式取引・先物取引も可能になる時代がカウント
ダウンに入っている。確かに便利で、世界が一気に狭くなる。

しかしネットを利用した金融取引には大きな問題が潜んでいる。
為替取引は、本来がボラティリティー(相場変動率)が高く、値動きは大きい。
ところが、サブプライム問題が表面化する以前は、ネット取引中心の日本人投資家が
増加するにつれ、円売り・外貨買いに大量の資金が投入され、市場の動く速度も緩く
なっていった。

そうした安易な状況下で、個人投資家は変動リスクを意識せずに取引ができた。
しかし、サブプライムショックのような突発的事態が発生し、大混乱する相場に、
ネット情報だけで対応していくのは限界があったのはご存じの通りである。

●ネット万能主義の落とし穴
日本の個人投資家による為替取引拡大の大きな要因になったのは
「円と外貨の金利差があり」
「円安基調が長く続いていた」からである。
為替の知識があまりない主婦でも会社員でも若者でも、ネットの画面を見て
「金利が高いからこの通貨を買ってみよう」
「ちょっと動いたから売ってみよう」といった調子だった。
ボラティリティーが低かったことで、スワップ金利を得ることも難しくなかった。
しかし、サブプライムショック以降の世界的な低金利の中、相場変動率が高くなっている。
市場が不安定な状態になってくると、一連のスワップ取り一筋の手法だけでは利益は
上げられなくなってきている。

「値動きの荒い状態なった場合、ネット画面は何も教えてくれない」。
「取引ページにログインしても、何も答えてくれない」。
ネットは、あくまでも取引を行う道具にしかすぎないのである。

●一緒に「相場の原点」を探ってみませんか?
世の中には、若いOLや主婦が書いた為替のノウ・ハウ本が溢れている。
「私にもできますFX取引」「1ヶ月で100万円儲ける方法」等など…

そうですか、金融取引って、そんなに簡単だったんですか…
んじゃどうぞご勝手に、と言ってきたし、(本来は)言い続けたいところである。
未熟な自分に、短期利益主義を批判するつもりも、その資格もない。

しかし、これまで幾多の方々から相場に関する相談を受けるに至り、
気がつけば相応の歳になってしまっている自分を考え、IT中心の次代の日本を考える時、
そうも言えなくなってきた。

「温故知新」。
気持ちを新たに、一緒に相場の原点を探ってみませんか?
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