『トレードコーチと メンタルクリニック』 |
『新版 魔術師たちの心理学』 |
『魔術師たちの 投資術』 |
2009年12月5日発売
ISBN 978-4-7759-7127-7 C2033
定価 本体2,800円+税
A5判 ハードカバー 310ページ
著 者 バン・K・タープ
監修者 長尾慎太郎
訳 者 山下恵美子
トレーダーズショップから送料無料でお届け バン・K・タープ博士のセミナーを収録したDVD『魔術師たちの心理学セミナー』も発売中!
バン・K・タープ |
■本書で紹介されている著名投資家
新版 魔術師たちの心理学 |
魔術師たちの投資術 |
トレードコーチとメンタルクリニック |
DVD 魔術師たちの心理学セミナー |
監修者まえがき
謝辞
はじめに――「普通」の投資家の宿命
序章 常に利益を上げ続けるための5つのステップ
第1部――自己改善努力
第2部――ビジネスプランの作成
第3部――さまざまな市場状態で機能するトレーディング戦略の開発
第4部――自分の目標を達成するにはどうすればよいか
第5部――過ちを最小限に抑えるために必要なステップ
第1部 自己改善――すべての基礎になる最も重要な要素
トレーディングを成功させるための要素
自分を正直に評価せよ
あなたはどんなタイプのトレーダーか
強い関心
自分の好きなことをやる
自己責任
あなたの言い訳
もっと自分に自信を持とう
自分の信じていることを書き出してみよう
障害を楽しもう
「柔らかい心」でトレードせよ
内なる通訳者と友だちになろう
「意識を肉体から解離させる」方法
トレーディングや投資ではバランスが大事
心の行き詰まりを克服する
失敗は動機になるか
幸せになるのに条件はいらない
トレーディングを改善するための心のビタミン
目標を達成するために必要な規律
蓄積された感情を取り除く
十分なセルフワークを行ったかどうかの判断方法
第2部 ビジネスプランの作成――市場で成功するための手引書
トレーディング・投資の計画を立てる
自分への約束事はトレーダーとして成功するのに不可欠なもの
あなたの目標は?
市場についての信念
大局を理解する
あなたのトレーディング戦略
あなたの目標を達成するためのポジションサイジング
自分の欠点に対処する
あなたが毎日やるべきことは何か
自分の教育計画を立てよう
最悪の事態に備えた計画
最悪の事態に備えた計画のメンタルリハーサル
トレーディングシステム以外のシステム
四分円
第3部 自分がトレードするそれぞれの市場タイプに合うトレーディングシステムの開発
あなたに合ったトレーディングシステムの開発
トレーディングの概念
お膳立てはあなたが考えるほど重要ではない
仕掛け
銘柄選びという迷信の出所
金儲けの奥義は手仕舞いにあり
最初のストップを超えた手仕舞い
リワードとリスクで考えよう
あなたがやるべき最も重要な仕事
――あなたのトレードのR倍数をトラッキングせよ
良いトレーディングシステムの6つの要素
成功する人に共通する要素
「それはうまくいかなかった」の心理
トレーディングのリアリティチェック
自分に自信を持つために必要なこと
第4部 ポジションサイジングの重要さを理解する
システムの質とポジションサイジング
ポジションサイジングはあなたが思う以上に重要
ポジションサイジングを構成する3つの要素
ポジションサイジングのためのCPRモデル
ポジションサイジングの基本
資産のいろいろな計算方法
いろいろなポジションサイジングモデル
ポジションサイジングの目的
ポジションサイジングを使って目標を達成するためのひとつの方法
――シミュレーションによるポジションサイズの最適化
R倍数シミュレーターの問題点
シミュレーション問題を回避するためには
第5部 トレーディングパフォーマンスを最適化するためのそのほかのアイデア
物事はシンプルに
トレーディングの聖杯を理解する
トレーディングビジネスで金を儲けるためのさまざまな方法
市場予測は避けよ
過ちとセルフサボタージュ
過ちを犯さないようにするためには
過ちを繰り返さないようにするためには
トレーディングの基本を無視してはならない
回答
バン・タープの世界へようこそ
用語集
この意味では、著者が長いコンサルタント経験を経てから書かれた本書は、タープ博士が深い知識を有し、したがってもっとも自信を持って書ける分野であるトレーダーのあるべき心理状態の獲得方法に範囲が絞られている。そしてそれはほとんどの成功したトレーダーがもつ必要条件のひとつなのである。
もちろん、メンタルヘルスケアはあくまで必要条件のひとつであるから、資金管理や具体的で堅牢なストラテジーの獲得など、満たさなければならない条件はほかにたくさんあるが、現在ほとんどのトレーダーや投資家の興味関心が主として「どの銘柄を買うか」とか「どんな指標を使うか」といったことに注がれ、そういった要求を満たすモノがあふれているなかにあって、本書はトレーダー向けのメンタルヘルスケアの数少ない優れた啓蒙書として稀有な存在である。実際、同じ著者による書籍も含めこの分野は類書もきわめて少ないうえに、本書は初心者にとってもっとも読みやすい相場書になっている。
ところで、タープ博士が繰り返し書いていることのひとつに、「最終的に運用の結果を左右するのは、使用するシステムのアルゴリズムの良し悪しではなく、ポジションサイジングである」という概念ある。この主張はまさしく事実であって、同じトレーディングプログラムを用いていても、レバレッジ如何によって結果は大きく変わってしまうのである。この辺りのことは、ラルフ・ビンスが書いた『投資家のためのマネーマネジメント――資産を最大限に増やすオプティマルf』(パンローリング)を併せてお読みいただければ、より理解が深まるものと思う。
なお、訳出に関しては同じ原語に対し一部に前著と異なる訳語をあてた個所があるが、これはひとえに本書が初心者向けであることを意識して理解しやすく誤解の可能性の少ないような表現を心がけた結果である。どうかご理解いただきたい。
最後に、翻訳にあたっては以下の方々に心から感謝の意を表したい。山下恵美子氏には、正確で分かりやすい翻訳をしていただいた。そして阿部達郎氏には丁寧な編集・校正を行っていただいた。また、本書が発行される機会を得たのは社長である後藤康徳氏のおかげである。
2009年11月
長尾慎太郎
2000年から2003年にかけての市場の大暴落でジョーは退職後資金として貯めた金のおよそ30%を失った。しかし、2003年には市場はまた上昇し始めたため、最悪の時は去った、これからは年に10%の利回りはかたいだろう、とジョーは思った。そうなれば、月々に使える金は5000ドル増えるため、住宅ローンを支払っても十分すぎるほどの金が残る。土木工学の上級学位を持つ彼にとって、投資など赤子の手をひねるほどのことでしかなかった。明晰な頭脳でこれまで投資で成功してきた。自分は平均以上の投資家だから、口座を100万ドル(2000年の株価大暴落以前の水準)まで戻すこともそれほど難しくはないはずだと彼は思っていた。
ところが、ジョーはだれもが犯す過ちを犯した。彼はエンジニアになるために8年勉強し、彼の人生はその上に成り立っていた。自分は頭がいい、だから退職後は市場のプロを出し抜いて年間10%の投資利回りは得られるはずだと思った。要するに、市場で儲けるには正しい銘柄を選べばよいのであって、自分にはそれができると彼は思ったのだ。
そのとき彼は68歳だった。彼の投資に関する勉強はといえば、正しい銘柄の選び方について書かれた本を3〜4冊と、ウォーレン・バフェットについてウォーレン・バフェット以外の人が書いた本を読んだだけだった。もちろん経済ニュースは毎日欠かさず見た。こうして彼は投資に対する自信を強めていった。数紙の経済新聞にも毎日目を通した。いまやいっぱしの情報通だ。そう自分では思っていた。
しばらくの間は順調だった。2003年から2005年にかけては12万ドル稼ぎ、そのおよそ半分は使った。したがって2008年当初の彼の口座資産はおよそ68万3000ドルだった。しかし、その後の長引く下げ相場に対する準備はできていなかった。2008年9月30日、株式市場は年初から40%以上も下落し、ジョーの口座も29%減少し、口座資産は48万4000ドルにまで目減りしていた。ここで住宅ローンを完済すれば資産のほとんどは消える。さらに救済法案が可決すると、市場は毎日100ポイントずつ下落した。口座資産が40万ドルに近づくにつれてジョーは不安になった。
CNBCの経済専門家、スージー・オーマンとジム・クレーマーは、株価は間もなく安値圏に入る、現金が必要でなければ売るな、と伝えた。ジョーの資産は買い持ちしていただけで2000年のピーク時から60%近くも目減りしたのだ。彼らはこういった事実を知らなかったのだろうか。その年、ジョーはブレイクイーブンにもっていくだけでも70%の稼ぎが必要だった。しかし、現実はというと年10%がやっとだった。
彼の最大の問題点は、エンジニアになるのには8年も勉強したにもかかわらず、投資はだれもが簡単にできるものと甘く見て十分な勉強をしなかった点である。これでは素人が橋を建造するようなものだ。仕事は素人ではできないが、市場では素人で通用する、というわけだ。素人が橋を造れば崩壊する。同じように、素人が投資するということは、口座の死を意味するのである。
それでは、トレードで成功するためには、特に今の市場で成功するためには、何が必要なのだろうか。今は長期の下げ相場で、あと10年は続きそうな雰囲気だ。米国は国家としては破産状態にあるにもかかわらず、湯水のように金を使うわれわれ米国民のだれ一人としてこの事実に気づいている様子はない(http://www.research.stlouisfed.org/publications/review/06/07/Kotlikoff.pdf を参照)。不良債務の買い取りに使われた7000億ドルはほんの序章にすぎず、公的資金の投入はこれからまだまだ続くことが予想される。
ベビーブーマーたちが定年退職を迎え現金を必要とするようになり、株式市場から金が引き揚げられたらどうなるのだろうか。市場から金が吸い出されるけたたましい音が聞こえてくるだろう。あなたはそのときに備えて準備はしているだろうか。 次の質問に答えてみてもらいたい。自分に合っているものに○をつけよう。
1.トレーディングや投資をビジネスとみなしているか。ビジネスをやるときのような準備はしたか。
2.ビジネスプラン(トレーディングビジネスを行ううえでの手引きとなる作業文書)は作成したか。
3.よく過ちを犯すか(過ちとは自分のルールに従わないことを意味する)。
4.過ちを犯さないために規則正しい手順に従っているか。
5.検証済みのシステムを持っているか。
6.そのシステムの市場タイプ(市場状態)別パフォーマンスを把握しているか。
7.今の市場状態が分かっているか。また、今の市場状態で自分のシステムからどういったことが期待できるか分かっているか。
8.7でノーと答えた人は、市場からはもう撤退したということか。
9.今建っているすべてのポジションに対する手仕舞いポイントを事前に決めているか。
10.トレーディングの目標を立てたか。
11.目標はポジションサイジングアルゴリズムで達成することを理解しているか。自分の目標を達成するためのポジションサイジングアルゴリズムは作成したか。
12.これまで述べてきた事柄の重要性は理解できているか。
13.投資結果は自分の思考と信念によって作り出されることを理解しているか。
14.投資結果はすべて自己責任として受け入れる心構えはあるか。
15.これまで述べてきた事柄に忠実に従うことができるように常に自己改善努力をしているか。
○の数が9以下の人はトレーディングを真剣に考えていない人だ。あなたのトレーディングビジネスは経営破綻の危機にひんしている。
何をしなければならないか 自分は普通の投資家だからできることはない、という考え方をまず捨てよう。結果は自分自身で作り出すものだ。今のあなたは、何の訓練も受けずにゲームに参加したときの結果しか得られない。
自分でトレードするのなら、本書に示すガイドラインに従う必要がある。自分ではトレードせずにプロに任せるという人――あなたは、プロの大部分がたとえ下げ相場でも95%の時間帯で投資しなければならないという事実を知っているだろうか。彼らは自分の管理下にある資産価値の1〜2%を報酬として手にする。あなたが損をしても彼らは報酬を得るのだ。
今のあなたの保有しているポジションを考えてみよう。各ポジションに対して損切りポイントを設定しているだろうか。つまり、あなたにとって1Rの損失がどれくらいになるのかを知っているかということである。ただし、Rは初期リスクを意味する。またはもうすでに損失が3R(想定した損失の3倍の損失)に達してしまったので、市場は見ないことにしたという人もいるだろうか。見なければ下落が止まるわけではない。市場を無視する原因を作ったのはだれだろうか。
市場が明らかに下落に転じたときは、市場からすみやかに撤退しなければならない。2007年、株式市場は方向転換を示すシグナルを出していた。図P.1を見てみよう。それまで上昇トレンドにあった株式市場の上昇トレンドの終焉時点がはっきり見て取れる。これはS&P500の2003年以降の週足チャートを示したものだ。10週移動平均線と40週移動平均線はプロたちが使う200日移動平均線と50日移動平均線に相当する。2007年終盤、10週平均線が40週平均線を下抜いているのが分かる。これは市場が変化したことを示すシグナルだ。これが発生したのは2007年12月、1484ポイント辺りだ。本書の執筆時点では、S&P500は2009年3月におよそ670ポイントで底を突いた。高値からおよそ60%の下落である。
市場からはこのほかのシグナルも出ていた。
■1400ポイント辺りに来るまでははっきりしなかったが、ヘッド・アンド・ショルダーズの天井が形成されている。
■2003年以降の長期トレンドラインを引いてみると、やはり1400ポイント辺りで上昇トレンドは終わっていたことが分かる。
■2006年中ごろからトレンドラインは急勾配になったが、それは1450ポイント辺りで終わっている。
■私の市場タイプ分析によれば、米株式市場は2008年1月以降はおおむね下げ相場で、上げ相場が終わってボラティリティの高い横ばい相場に転じたのは2007年6月である。
私がこういったことを言うのには根拠がある。これらのシグナルのいずれかが出たら投資信託を解約すると事前に決めていたのであれば、あなたの経営状態は良好ということになる。しかし、もしあなたが普通の投資家だとすると、時間をかけてじっくりと市場を研究したことはないだろう。あなたは自分のやっていることを分かったつもりになっているだけだ。何かを作ろうと思ったとき、十分に勉強しなければどうなるだろうか。
相場のことわざに「上がっている株を買え、上げ止まったら売れ」というよく知られたことわざがある。残念ながら、ほとんどの人は他人の意見は聞くが、何が起こっているのかを自分の目で見ることはしない。2003年4月28日から2008年1月にかけて、私の市場分類モデルでは下げ相場に分類された期間はただの1週間さえなかった。その間、市場は上げ相場か横ばい相場のいずれかだった。図P.1を見ると分かるように、こういったときが投資信託の買い時だ。
2008年1月になるとベアが頭をもたげてくるが、こういった時期は投資信託などの株式市場関連の長期投資には向かない。再び図P.1を見てみよう。2008年1月以降は上昇相場はない。小さな調整の戻りをとらえてトレードするデイトレーダー以外のトレーダーにとって、ここは買い控えるべきときだ。
多少経験のあるトレーダーであれば、上がっている株を買い、下がっている株を売るといったことも可能だ。図P.2はMYGNのチャートを示したものだ。市場全体が下げ相場だった2008年、MYGNは上昇していたことが分かる。3月から7月にかけてはトレンドに多少逆らっている感はあったが、7月と8月はきわめて好調だった。 しかし、この間は売りのほうがよかった。2007年7月に株式市場が下落するまでは好調だったほとんどの株式が急落したからだ。原油株、鉱業株、金関連株やアップルなどのハイテク株がそうだ。これらの株式は昔は絶好の売り対象銘柄で、そのほとんどは799の空売り規制リストに入っていなかった。空売り規制リストとは、米政府が金融株の空売りを短期間(2008年9月19日から2008年10月8日まで)だけ禁止するために作成したリストである。
ところで、良いトレーダーや投資家になるためにまず学ばなければならないことは何だろうか。それは、自己改善である。これまでどれくらいの人にこのことを話してきただろうか。しかし、上がっている株を自分の目で確かめ、上げ止まったら売ることを実践できるのは、頭の中からがらくたを排除(つまり、トレードのじゃまになるナンセンスな信念や感情を捨てるということ)できた人のみである。
あなたはどうだろう。今のまま普通の投資家を続け、普通の投資家のたどる宿命に甘んじるか。「いやいや、私はそうはならない」と言いながら、手数料を稼ぐために株価が下がっているときでもあなたに投資させ続けるプロにすべてを丸投げするか。またはトレードをビジネスととらえ、自分の金を自分で管理するための方法を学ぶか。
投資に真剣に取り組みたいと思うのならば、そろそろ修業を始める時期ではないだろうか。本書は5部から構成されている。各部はバン・タープ・インスティチュートのスーパートレーダープログラムの各ステップに対応している。まずは「序章」で本書の概要をつかんでから各部へと読み進めてもらいたい。市場タイプとは無関係に、常に利益を上げ続けるためのさまざまなアイデアと手法が満載の本書に、きっと満足してもらえるはずだ。
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