ルイス氏がコラムで名を挙げたアイホーン氏著作 |
著 者 マイケル・ルイス
訳 者 東江一紀
2005年12月16日発売
ISBN4-7759-7062-3 C2033
定価本体1,800円+税
四六判 ソフトカバー 452頁
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本書の冒頭で引用された「巨大な幼稚園」のもととなった 『投資家のヨットはどこにある?(Where Are the Customers' Yachts?)』の邦訳が、2010年12月ついに出版! |
「大変印象的で、生き生きと描写されている……ひとつの時代を活写した素晴らしい書籍である。1980年代を覚えているだろうか? この活気あふれる10年を思い出そうとするなら、『ライアーズ・ポーカー』を1冊、手にとるだけでいい」
――フォーチュン
「痛快だ! 実に痛快だ!」――ワシントン・マンスリー
「もしウォール街で本当は何が起こっているのか知りたいのなら、またついでに大笑いしたいのなら、『ライアーズ・ポーカー』を読めばいい。とてもよく書かれているし、それもおもしろおかしく書かれている。この洞察力に満ちた本書は、あなたがブローカーとやり取りするときに知っておくべきすべての事柄も教えてくれる」――ニュースデー
「はちゃめちゃな喜劇小説のように呵々大笑できる……投資銀行員の独特でマッチョな文化を、インサイダーの側から暴露してくれた」――ロサンジェルス・タイムズ
「ルイスの冴えた筆力で、トレーダーたちの眉毛から滴り落ちる汗まで見えそうになる。内側から見たソロモン・ブラザーズは、まるで小汚い巨大な男子寮のようだ。市場が荒れ狂い、激しく華やかだった時代を描写したものとして、『ライアーズ・ポーカー』はトム・ウルフの『虚栄の篝火』に匹敵するものだ」――ビジネス・ウィーク
「逸品だ!」――カーカス・レビュー
「たとえ、金利スワップやジャンクボンドにそれほど精通していなくても、ルイスの厚かましさと茶目っ気のあるユーモアを楽しむことができる」――グラマー
「債券トレーディングは、薄汚い男子寮と貪欲法人を足して2で割ったようなものだ。顧客には資金をマットレスのなかに詰めて、手放していけないということを、ルイスは教えてくれている」――ワシントン・ポスト
「抜け目がなく、とても愉快な書物だ」――タイム誌
「これまでの作家たちが見向きもしなかった視点から、新しい声が発せられた。これは古き良き時代の、面白い物語である」――ナショナル・レビュー
「生き生きとして滑稽……時間を割いて読むのに十分値する」――USAトゥデー
「ほとんどは冒涜的。でも、いつも陽気。それで実に的を射ている!」――ピープル
「マイケル・ルイスは優れた作家であり、かつて優秀な債券セールスマンだった。もしかしたら、面白い物語を書けたのは、この職歴のおかげかもしれない」――ザ・ニューヨーク・タイムズ・ブック・レビュー
「ハイテク株より熱い!」――アトランタ・コンスティテューション
著書『マネーボール』がブラッド・ピット主演で映画化決定!
ルイス氏はブルームバーグのコラムも担当しています。
(中略)
被告人
連鎖的な腐敗
ヘッジファンド「グリーンライト・キャピタル」を運営するデービッド・アインホーン氏。同氏の投資手法は、株価の上昇と下落の両方を見込んだもので、空売り一辺倒ではない。そんなアインホーン氏はここしばらくの間、リーマン株を空売りしていることを大々的に公言し、同社の疑わしい会計慣行について詳しく説明していた。
2人目は、大手金融機関の最高経営責任者(CEO)たち。スタン・オニール氏はメリルリンチのCEO、ディック・ファルド氏はリーマンのCEO、ジェームズ・ケイン氏はベアー・スターンズのCEOだった。3氏は会社を崩壊させる決定を下したにもかかわらず、数千万ドルの報酬を得た。
(中略)
2008/09/17の記事より『【経済コラム】金融市場の混乱、非難されるべきは誰か−M・ルイス 』
9月17日(ブルームバーグ):リーマン・ブラザーズ・ホールディングスが破たんし、メリルリンチが身売りを強いられ、金融市場が大騒ぎするなか、ブルームバーグ・ニュースは、金融業界と無関係な一般市民の印象を取材してみた。
そうした経営陣を白日の下にさらすことができたとしても、どんな責任があるのかを理解することは誰もできない。しかしここに、犯した罪が理解しやすい被告人が2人いる。バークさんの考えもぜひ聞いてみたいものだ。
1人目は、米証券取引委員会(SEC)のクリストファー・コックス委員長。低所得層向けの住宅ローンを積極的に販売し、経営が立ち行かなくなった企業を監視するのが彼の仕事だ。
このこと自体は、彼を責める理由にならない。SECの規律の緩みは今に始まったことではない。職員が金融機関の監督業務という低収入の官職を捨て、その金融機関で高収入の仕事に就く慣習は長年にわたり続いている。要職に就いた職員は特にそうだ。
構造的に腐敗している人たちが、連鎖的な腐敗の阻止に取り組む図式。年収8万5000ドル(約900万円)の公務員が、年収1500万ドル(約16億円)の金融関係者を取り締まるのは難しい。
だが、コックス委員長を批判する理由がないわけではない。証券業界の存続のため、市場に真実を伝えようとしていた見識のある少数派=空売り筋=に対する規制を強化したためだ。空売り筋は、常に株価の下落を見込んでいることから、一般的な受けは悪い。しかし、今回はその功績を称えても差し支えないだろう。
SECはこれに、アイホーン氏の電子メール履歴の提出を要求する形で対応。同氏がリーマンを破たんに追い込む何らかの策略にかかわっているかのように見せた。
コックス委員長は恐らく善人で、完全には何が起きたのか把握していないのだろう。しかしアインホーン氏のように権力に立ち向かう精神力を持った正直者に対する扱いを見る限り、委員長を批判しても差し支えはないはずだ。
だが、振り返るまでもなく、感じでわかる。あたりの空気が、大地震の前ぶれみたいにわなわなけいれんし始めるのだ。周りの同僚たちは、髪の毛振り乱して働いているようなふりをしながら、こちらの頭上の一点をじっと見ている。背すじに寒けが走る。それはたぶん、熊が音もなく近づいてくるときに小動物が感じる不安のうずきに似た、一種の直覚とでもいうべきものだ。頭の中に警報が鳴り渡る。グッドフレンド! グッドフレンド! グッドフレンド!
わが会長はしばらく無言でそこに立ち、ときにはそのまま歩き去る。そういう場合、こちらにはまったく彼の姿が見えない。唯一の痕跡は椅子の横の床に残された糞のような形の灰だけだったという経験が、ぼくにも二度ほどある。グッドフレンドの葉巻が落とす灰は、平均的なソロモンの幹部連中のものより長くて、形もしっかりしている。そのとびきり高価で上等な葉巻を買うカネも、一九八一年にファイブロに身売りして得た四千万ドル(あるいは、一九八六年にCEOとしてみずからに支払ったウォール街一の報酬三百十万ドル)からすれば、ごくごく一部、痛くもかゆくもないはしたガネだ。
ところが、一九八六年のこの日、グッドフレンドは変わった動きを見せた。みんなをびくつかせるかわりに、ソロモンの重役であり、最も優秀な債券トレーダーのひとりでもあるジョン・メリウェザーの机にまっすぐ歩いていったのだ。そして、二言三言ささやいた。近くにいたトレーダーたちがそれを盗み聞きした。グッドフレンドのその言葉は、ソロモン・ブラザーズの伝説となり、俗悪な社風を表わすエピソードとして広められることになる。彼はこう言ったのだ。
「一手、百万ドル、泣き言なし」
一手、百万ドル、泣き言なし。メリウェザーは即座にその意味を了解した。『ビジネス・ウィーク』から”ウォール街の帝王”の称号をたてまつられたグッドフレンドが、”うそつきポーカー”と呼ばれるゲームをひと勝負百万ドルでやりたいと言っているのだ。ほぼ毎日、午後になると、彼はメリウェザーやその下で働く六人の若いトレーダーたちとこのゲームに興じ、たいていはこてんぱんにやっつけられていた。あまりにもへぼすぎるのだと言う者もいた。ジョン・グッドフレンドの全能を信じて疑わない社員たち――意外と数が多い――は、負けることで彼は目的を達しているのだと主張したが、どういう目的かときかれると口をつぐんだ。
この日のグッドフレンドの挑戦が異例なのは、賭かけ金の額が大きいことだった。いつもは、せいぜい数百ドル。百万などという数字は聞いたこともない。三つめの条件である”泣き言なし”という言葉は、敗者は多大な苦痛をこうむるけれど、ぐちを言ったり泣きついたり恨んだりする権利を持たないという意味だ。フロアのすみにうずくまって、ふところの寒さをひとりかみしめるしかない。しかし、何のために? ウォール街の帝王ならぬ身としては、つい尋ねてみたくもなる。そもそも、なぜそういう勝負をするのか? もっと小物の取締役が相手ならまだしも、なぜメリウェザーに挑戦するのか? どう見ても、狂気の沙さた汰だ。メリウェザーはこのゲームの帝王、ソロモン・ブラザーズのトレーディング・フロアにおけるうそつきポーカーのチャンピオンなのだから。
(第1章「うそつきポーカー」より) →全文を読む
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