■はじめに
警告 先物トレード、株式トレード、通貨トレード、オプショントレードなどは大きなリスクをはらんでいて大金を失う可能性がある。
なんという書き出しだろう!
でも、これはFTC(米連邦取引委員会)が一般投資家向け投資講習会の主催者に、明確な表示を提案した文言のほんの一例でしかない。そして、だれがこれに反対できるだろうか。少なくとも、筆者にはできない。
しかし、ここには2つの点が抜けている。1つめは分かりきったことだが、もしだれかがマーケットで損失を出せば別のだれかが儲けているということだ。失ったお金は、すべてだれかのものになるわけで、それがわれわれならうれしい。そして、これは裏を返せば、マーケットには途方もない利益を上げるチャンスがあるということになる(FTCが広めたくない事実)。時間も手間もかけず、少ない資金しかなくても、何百万ドルが稼げるところなどほかのどこにあるだろうか。
幼いとき、両親が言っていたことは正しい。リスクをとらなければ多くを得ることはできない。リスクとリワードは常に隣り合わせで、リスクがなければ利益の可能性もない。リワードを得るために、リスクが必要なのは当たり前だ!
初めてマーケットに興味を持ったとき、読者はお金を失くす可能性について考えただろうか。筆者はもちろん考えた。つまり、お役人はすでに分かっていることを述べているだけで、そうでなければ心の底から抑圧的なのかもしれない。
2つめの点は、さらにとんでもない。今日のインベスターズ・ビジネス・デイリー紙を見ても分かるが、取引所の協力を得ている「オプションユニバーシティー」は、オプショントレーダー志望者を震え上がらせる必要がない。それなのに、なぜ筆者が行っている宣伝のなかではこの当たり前のことを言わなくてはならないのだろう。ウォール・ストリート・ジャーナル紙、フォーブス誌、ビジネス・ウィーク誌、そしてインベスターズ・ビジネス・デイリー紙を購読しても、このような警告は載っていないし、ブローカーでさえこのような文言は義務付けられていないのに!
もうこれは、これがふざけたビジネスだからというしかない。
取引所やブローカーや大手ファンドは、自分たちのためにお膳立てをして自分たちのためのルールを作ったが、それは小規模なプレーヤーのためのルールとは違う。前者ができることと普通のトレーダーができることのリストは別なのである。
正直言って、筆者は別にそれでも困らない。トレードは彼らのためのゲームだし、玉を持っているのも彼らなのだ。ただ、彼らのゲームに引き込まれないためにその違いを知っておく必要はある。これに勝つためにはルールを知らなくてはいけないだけでなく、詭弁にひっかからないようにしなければならない。まずはそのいくつかを紹介しよう。
詭弁1――「彼らは何か知っている」
2000年にウォール・ストリート・ジャーナルが行った調査では、96%のエコノミストがブル(強気)だった。
2001年の調査では、なんと99%のエコノミストが景気に関してブルだった。
この調査は2002年にも行われ、エコノミストの100%がブルだった。
ウォール・ストリート・ジャーナルは、この調査を1982年から実施しているが、エキスパートによる将来の予測が当たったのは全体の22%にも達していない。この確率は当てずっぽうより低い!
それでも同紙はこの調査を続けているが、エキスパートたちの予測がどれほどひどいものだったかについては伝えていない。
フィナンシャル・タイムズ紙が1995年に行った調査によると、「過去7年間に起こった重要な経済発展を予想したコンセンサス予想はひとつもなかった」という。
詭弁2――「彼らがもし知っていたら教えてくれるはずだろう」
43年前に株を始めたとき、筆者はブローカーが大いに力を貸してくれるだろうと思っていた。何といっても、それが彼らの仕事ではないか。でも、しばらくして筆者にも事情が分かってきた。彼らは手数料で儲けるためにこの仕事をしているだけで、何と言おうと結局は高い手数料を設定し、それで大きな利益を得ている。彼らが動くのは手数料のためであり、顧客のためではない。
もし違うと思うなら、なぜシティコープやメリルリンチやそれ以外の大手金融機関が偏ったレーティングを発表して投資家をだまし、14億ドルの罰金を課されたのか説明してほしい。
うーん、それならなぜFTCは先の警告を、彼らの広告や彼らがスポンサーになっているゴルフやテニスの大会に義務付けないのだろうか。
筆者の目覚め
何年も前のことだが、やはりメリルリンチが自社の売り物を顧客に勧めて数億ドルかの罰金を課されたことがあった。もし普通の人が同じことをしたら牢屋に入ることになるのだが、彼らの場合はニューエコノミー会議(米国内の経済サミット)のスポンサーになって政治献金の機会が増える。
筆者にも、これは自己責任で行うゲームで、弱者(われわれ)対組織の戦いということが分かってきた。自分に回ってくるすべての順番は、自分のためではなく彼らのために設定されている。われわれ対彼らという図式はそう悪くないが、現状が認識できるようになるまでは彼らの側にいるかのような戦い方をする必要があることをさまざまな事例が示している。
このことこそFTCがみんなに伝えるべきことではないのだろうか!
ひとつだけ、すでに伝えられている真実がある。それは、マーケットについて自分よりも詳しい人がいるということで、それもたくさんいる。もしかしたら、あらゆるところで彼らを探し、ブローカーやマスコミからアドバイスをもらおうと思っていないだろうか。チャーリー、目を覚ますんだ。このゲームはそんなに甘くはない。
スーパーパワー
本書では、マーケットには本当の強者、つまりスーパーパワーがいることや、彼らはマーケットの構造上不可欠な存在だということ、そして彼らが行う巨額の売買は連邦法によって毎週報告を義務付けられているということを学んでいく。
もしも報告を怠るようなことがあると、彼らは巨額の罰金を課されたり、実刑を受けることになる。このことからも、彼らの影響力の大きさが分かるだろう! そして、彼らが買っていることをだれかがこっそり教えてくれたとしたらどうなるかを想像してほしい。この情報は使えないだろうか。
筆者の見たところ、このように重大な情報が毎週インターネットにタダで掲載されていることを知っているトレーダーや投資家は1万人に1人程度だろう。ほとんどの投資家は、チャートを動かしている人たちの売買を追わないで、チャートばかり見ている。
ここで言っているのは、企業の社員や幹部や経営陣のことではない。もちろん、彼らもうまく売買することはある(ビル・ゲーツやポール・アレンは確かにうまくやっている)。社員や幹部も自社株を売って利食うことがあるが、彼らは値下がりを予想して売るのではなく、子供の歯の矯正や学費、あるいは離婚などに備えているにすぎない。
ミューチュアルファンドが何を買っているかなどというつまらない話をするつもりはない。何しろ、これらのファンドの85%は、動きの遅いダウ平均を買っただけのパフォーマンスにすら達していないという驚くべき事実がある。そしてさらに驚くのは、ダウ平均を上回る15%の顔ぶれがいつも違うことだ。15%の成功ファンドのリストは、ラップソングのヒットチャートよりも目まぐるしく入れ替わっている。
というわけで、ここではもっとも大きくて力のある企業の話をしたい。毎週最大限の利益を目指して巨額資金をビジネスにつぎ込んでいる連中は、一体、何をしようとしているのだろうか。
筆者は、このスマートマネーの一群を1970年から観察している。そして、この目先が利く金融界の権力者たちを30年以上追跡してきたことで、紹介すべきさまざまなことを学んだ。また、これらの投資家やトレーダーが、いつも正しいわけではないにもかかわらず、常にもっとも有利な戦いをしていることも知った。
幸運にも1969年のある日、カリフォルニア州サンノゼで何人かのトレーダーからビル・ミーハンという男性を紹介された。ちなみに、このときのトレーダーのなかにいたチェット・コンラッドとキース・キャンベルはその後、大成功を収めた。キャンベルは10億ドルを超える資金を運用しているし、コンラッドはさらに確実な賭けを手に入れた。ネバダ州リノにあるカジノを買ったのである。1970年代以降、われわれは別の道を歩み、2人とは会っていないが、3人ともミーハンが教えてくれたさまざまな知識に対して大きな借りがある。
CBT(シカゴ商品取引所)の元会員だったミーハンは、スーパーパワーの動きを利用する方法を有料で教えてくれた。彼は、このスーパーパワーのグループをいくつかのデータとともに観察しており、なかでも重要視していたのがCOTレポート(米商品取引委員会が毎週発表する取組高明細)と呼ばれるものだった。当時、このレポートはスーパーパワーの売買の1カ月後にならないと発行されなかったため、情報としては少し遅かったが、それでも大きなメリットがあった。現在は、ほんの数日前の売買情報を載せたものが毎週発行されている。
たいていの人は投資といえば、昔ながらの株や債券を思い浮かべる。しかし、彼らは毎日その5倍以上のお金が商品相場で動いていることを知らない。伝統的な不動産投資家や株式投資家は、いわば小さな池に浮かぶ小さなボートに乗っているようなもので、商品市場という大きな池にあるチャンスを逃している。
もし「商品相場はリスクが大きくないか」などと言う人がいたら、率直に言って答えはイエスに間違いない。でも、株以上のリスクがあるわけでないことはいずれ分かるだろう。商品と言えば、かつてはもっとも勇敢な人か愚かな人(どちらと見るかは自由)のための舞台だという冗談もあった。しかし、筆者が1968年に初めてポークベリーをトレードしたころと比べて、状況は一変している。世の中が変わるのと同様に、マーケットも変わった。卵、オレンジジュース(朝食メニュー)や肉牛、小麦(夕食メニュー)に代わって、債券、短期国債、通貨、ダウ平均やS&P500などの株価指数、金融商品を含む新しい商品が登場した。
オーバーナイトで銀行や政府や世界的な企業が利益を守るために商品市場を使い始めた。もしGM(ゼネラル・モーターズ)が日本で車を売れば、支払い時に受け取る円の価値が下がらないよう確認しておきたい。スーパーパワーが商品マーケットに入ってきて以来、シカゴのピットの様子は一変した。1人か2人の大手トレーダーがマーケットを動かすことも、個人がそれほどの資金や企業の支援を受けることもなくなった。
コマーシャルズ(現物業者・当業者)やスーパーパワーはリサーチのためのスタッフを抱え、各分野(小麦、金、トウモロコシといった実物から、人工的な商品である英ポンド、円、米国債、S&P500、株価指数、そのほかの世界の指数)のすべてを知ろうとしている。
コマーシャルズは、トレードすれば必ず売買記録という跡を残す。そして、これは簡単に追跡できる。本当に知識を持ったプレーヤーが自分の資金を賭けるときは、これに従っている。
商品市場の投機家はこのインサイダー情報を合法的に利用できることで、大いに優位に立っている。ちなみに、株式トレーダーにこのような特典はまったくない。
毎週発行されるCOTレポートが最強プレーヤーが行った売買を教えてくれるのだから、われわれはその行動の意味を理解して、それに合わせていくようにすればよい。そして本書には、世界最大の商品取引とぴったり歩調を合わせ、投資したりトレードしていく方法が書いてある。
商品と先物トレーディングの歴史
今日、われわれが目にしている商品市場も、始まりはささやかなものだった。先物取引は18世紀の日本で米や絹を取引するために生まれた。一方、米国では1850年代になってようやく先物市場ができ、綿やトウモロコシや小麦の売買が始まった。
先物取引は、一種のデリバティブか金融契約で、金融商品や現物の商品を将来、特定の価格で受け渡す二者間の合意を指す。もし、先物を買えば、まだ売り手が生産していないものを特定の価格で買うことに合意したことになる。ただ、先物市場に参加したからといって必ずしも莫大な量の現物商品の受け渡しを行われなくてはいけないわけではない。そもそもこのマーケットは、物理的な受け渡しのためではなく、ヘッジと投機のために生まれたといってもよい(現物スポット市場の主な役割)。そのため、生産者や消費者だけではなく投機家にとっても先物は金融商品と同様に扱われている。
150年ほど前に北米の先物市場が発足する前、農民は自分の育てた作物をできるだけ高く売りたいと願いながらマーケットに持っていった。しかし、需要に関する情報がなかったため、多くの場合、供給が需要を上回り、売れ残りの作物は道端で腐っていった。反対に、ある商品(例えば小麦)の収穫期以外には供給がなくなるため、その商品を原料とする品の価格は高騰した。パンは秋には安いのに、春には非常に高くなった。
19世紀半ばには、中央穀物市場が設立され、農民のために直渡し(スポットトレード)または先渡しで売ることができる中央市場も作られた。そして先渡し契約(将来実行する取引)は、今日の先物取引の先がけになった。この画期的な概念によって、農民は収穫を無駄にせず、利益を確保し、シーズンオフの時期の供給と価格を安定させることができるようになったのである。
先物は、リスクをとりたくない人には向かないが、9時から5時の退屈な仕事から抜け出したいさまざまな人たちの役には立つ。このなかには、筆者のように個人の自由を奪うような収入源に頼るべきではないという人たちも含まれている。
謝辞
人生とマーケットにおいて、多くの人たちに助けられてきた。1969年に初めて商品取引について講義してくれたビル・ミーハンもそのひとりだ。また、長年の仲間であり、大切な友人でもあるトム・デマーク、ハービー・レバイン、リチャード・ジョセフ、そしてこれまで出会ったなかで最高のパートナーであるルイーズ・ステープルトンにも感謝したい。彼女の愛と細部に及ぶ配慮がなければ、本書が日の目を見ることはなかっただろう。また、一度も会ったことはないがカントリーシンガーのクリス・ルドーには、彼の曲がいつも筆者のトレーディングと生活に刺激を与えてくれていることに特別な感謝を捧げたい。さらに、ニュースレターを手伝ってくれているブライアン・シャード、アシスタントのジェニファー・ウエルズ、とにかく面倒見の良いカーラ、そして何といっても筆者の5人の子供たちにもお礼をいいたい。彼らは、それぞれの方法で筆者に株以上に楽しいことがあるということを教えてくれた。
2005年 米領バージン諸島セントクロア島にて ラリー・ウィリアムズ
■第1章 新しい投資パートナー兼アドバイザー
コマーシャル(ズ)はテレビより役に立つ
本書の唯一の目的は、読者をマーケットに参加している10億ドル規模の成功したトレーダーやファンドと、同じポジション側にいることにある。これは信頼できる相談相手というよりも、それ以上の投資パートナーを得るようなもので、毎週独自の方法で彼らの資金がどこにあるかを教えてくれることになる。彼らがだれなのかと、彼らを追いかけるためのいくつかの方法をこれから紹介していくが、そうすることでマーケットの仕組みも、より理解できるようになるだろう。
マーケットの観察にはたいていチャートが使われるが、ここでは価格を変動させる実際の条件である大口売買を見ていく。これは、言い換えれば10億ドル規模の成功したトレーダーとマーケットに流れ込む資金を毎週目で見て本当の需給関係を知ることでもある。
われわれのパートナーとなるこの連中を紹介しておこう。まずはこのトレーダーのグループについてできるかぎり知っておかなければならない。彼らは、非常に尊敬され、かつ恐れられているため、アメリカ政府に登録してマーケットにおけるすべての活動を報告するように義務付けられている。これは、空手の有段者が強力な拳固を地域の警察署に登録するのと似ている。
この場合の政府はCFTC(米商品先物取引委員会)になる。この組織についてもう少し説明しよう。CFTCの使命は、詐欺、不正操作、商品先物や金融先物やオプション取引の悪用などからマーケットユーザーや一般投資家を守り、競争力があって財政的にも安定した開かれた先物とオプションのマーケットを育てていくことにある。
アメリカでは農産物の先物取引が150年以上トレードされているが、1920年代以降は政府の規制の下で行われるようになった。近年、先物取引は急速に拡大した。トレードされているのは従来の現物や農産物といった商品だけでなく、外国通貨、アメリカや外国政府の発行する証券や株価指数などを含むありとあらゆる金融商品に広がっている。
進化する使命と責任
アメリカでは、CFTCが1974年に商品先物とオプションマーケットに対する独立行政機関として設立された。それ以降、CFTCの任務は何回か更新や拡大され、最近では2000年に商品先物取引現代化法(CFMA)が施行された。今日、CFTCは競争力と効率性を考慮した先物市場を利用するように呼びかけている。また、マーケットの統合性を高めたり、不正操作、トレーディングの悪用、詐欺から参加者を守る試みも実行され、決済過程の保全にも力を入れている。さらには、効率的な監視体制によって、CFTCは先物市場が価格を開示したり、価格リスクを相殺するなどの機能も先物市場に提供している。
CFTCの構成
CFTCは、大統領に指名された5人の委員によって構成され、各委員の任期は交代で5年ずつになっている。大統領は、さらに上院の同意を得たうえで5人の中から委員長を1人指名する。委員は、同時期に1つの政党から3人以上就任してはいけないことになっている。
委員長のスタッフは、委員会の情報を一般に周知し、ほかの政府機関や議会と協力して委員会関連の文書を準備、配布する責任を負っている。また、スタッフは情報公開法に基づいて提出された要望に対してCFTCとして速やかに対応する責任も負っている。委員長直属のスタッフには、それ以外にもCFTCプログラムと運用の監査を行うオフィス・オブ・ザ・インスペクター・ジェネラル、各国の規制当局間との連携の中心となるオフィス・オブ・インターナショナル・アフェアースなどがある。
また、委員長室は、一般市民、議会、メディアとの連絡係であるのに対し、オフィス・オブ・エクスターナル・アフェアース(OEA)は内外メディア、生産者、マーケットユーザー団体、教育団体や機関、そして一般市民向けの対応を担っている。OEAは、委員会に委任された規制や先物市場の経済的役割、新しい金融商品、マーケットの規制、強制行動、顧客保護に対する姿勢、活動、課題などについて適切かつタイムリーな情報提供を行っている。そのほかにも、OEAはインターネット上にあるCFTCのサイト(http://www.cftc.gov/)を利用しているメディアや一般ユーザーに対するサポートも行っている。
CFTCは、本部のあるワシントンだけでなく、先物市場があるニューヨーク、シカゴ、カンザスシティ、ミネアポリスにも事務所を設置して、マーケットとその参加者を詳しくモニターしている。
トレーダーは登録と活動報告が法律で義務付けられているが、CFTCもレポートの発行が義務付けられている。本書では、このレポートを使ってもうすぐわれわれのパートナーになるヘッジャーの動きを読みとる方法を学んでいく。また、彼らのポジションがコマーシャルズ特有の目的で建てたものか、それとも投機目的で建てたものかを見分ける方法も学ぶ。ヘッジャーやコマーシャルズ(われわれのパートナー)には売買の制限がなく、保有できる枚数に上限がある読者や筆者やいわゆる大口トレーダーとは桁違いに大きな取引を行っている。
つまり、コマーシャルズがマーケットでチャンスを見つければ、彼らはマウンドに上がって数百万単位で商品を買う。彼らには豊富な資金があり、マーケットに参加する主な目的はただひとつ、実際にこれらの商品を使用し、生産したりすることだ。彼らはその商品のプロとしてわれわれのようなアウトサイダーよりもマーケットについてよく知っている。例えば、自動車にさほど興味はなく、機械的な知識もない筆者がクルマを買うときは、カタログなどをよく読んで、セールスマンの話を聞き、もしかしたら試乗もしたうえで(これはマーケットではできない)、ある程度の情報をもとに判断を下すことになる。
あるいは、もしたまたま地元のシボレ販売店のオーナーであるロイ・スタンレーと個人的に知り合いだったら、何が良いのか直接聞くこともできる。スタンレーはクルマの知識を備えてそれを売買するのが仕事で、いわばその世界のインサイダーなのだから、彼のアドバイスは貴重だと思う。
コマーシャルズは、無限の資源を持っているように見える。ビル・ミーハン(「はじめに」参照)は、マーケットの出来高の約60%に上る彼らの判断には敬意を払い、彼らの英知を吸収し、彼らの行動に注目する価値は十分あると教えてくれた。彼らにとって、マーケットは仕事の場であり、投機をしているわけではない。
われわれが投機で利益を上げようとしているのに対し、コマーシャルズの最終的な目的は損失を最小限に抑えることにある。もしあるコマーシャルズがある製品の在庫を持っているか、その製品を必要としているとすると、その製品関連の売買が行われる。例えば、あるコマーシャルズが自分の会社で来月100万ポンド(約450トン)の砂糖が必要になったとき、砂糖の価格が今後上昇すると考えれば、文字どおり今日買ってしまわなければならない。しかも、もし砂糖が下落すると思ったとしても、彼らはやはりある程度の砂糖を買わなければならない(今日も彼らは綿菓子か何かを製造しているから)。ただこの場合には、さほど積極的には買わない、などということを毎週発行されるCFTCレポートから読み取ることができるのである。
ここで、コマーシャルズの信奉者の多くがよく困惑するケースを紹介しよう。コマーシャルズは極端な下降相場で買い続けることがある。これは高値で買う愚かな行為に見えるが、筆者はこれを「キツネのように愚かなこと」と言いたい。砂糖を安く買えば買うほど綿菓子のコストも下がり、それを売った利益は大きくなる。
つまり、ポイントはコマーシャルズは読者や筆者とは違うということなのである。彼らは商品を利用したり、急激な価格変動に備えたり、生産者としての利益を確定するために買っているのであって、われわれとは目的が違う。われわれの使命は安く買って高く売ることで、言い換えればマーケットのスイングを利用して利益を上げようとしているが、われわれの師であるコマーシャルズは自分のビジネスで利益を上げるためにマーケットを使っているにすぎない。
しかしそれでも、われわれの作戦に彼らの動きを利用することは絶対にできる。彼らがマーケットに対して極端にブルかベアのポジションをとったときには、マーケットが大きく動いて数百万ドル規模のチャンスが生まれることが多い。ビル・ミーハンの教えに従ってコマーシャルズと同調してトレードをしたことがある筆者は、このことを知っている。
ただ、読者や筆者にはコマーシャルズよりも有利な点がひとつある。彼らは、毎日マーケットで取引しなくてはいけないのである。彼らは永続的な仕事の一環として、来る日も来る日もできるかぎりの方法で自分たちのポジションを守っていかなければならない。しかし、われわれは違う。われわれは気が向いたときにマーケットに行き、待ちたければいつまでも待つ自由もあるし、忍耐強く完璧なタイミング(コマーシャルズが大きな動きを予想して売りか買いに大きく偏ったときだけ)を狙うこともできる。
さらに付け加えれば、われわれは不完全な世界に生きている。コマーシャルズが間違ったり、少なくとも短期的にマーケットとは逆のポジションをとっているように見えるときもある。もちろん彼らも間違いたくはないだろうが、将来はあやふやで、正確に予想するのはとても難しい。もし彼らが常に正しければ、われわれも簡単に大金持ちになれる。そうなれば、どれほど良いだろうか。
しかし、彼らは間違うこともあるため(少なくとも一時的には)、われわれが苦労してためた資金を奪われないように、ツールと作戦が必要になる。本書後半では、仕掛けと手仕舞いポイントや、破綻リスクを回避して効率的なマネーマネジメント(資金管理)ができているかを確認するために、筆者が使っているマネーマネジメントテクニックを紹介する。
投機の世界に確実なものは何もない。コマーシャルズは、少し早めに買うときがあるが、大きなポケット(豊富な資金)を持つ彼らにとって、それは大した問題ではない。しかし、小さなポケットしかない(あるいはポケットすらない)われわれの多くは、もっと正確な仕掛けの水準や、損失に対する絶対的なコントロールが必要である。
毎週、われわれは大きく分けて3つのクラスのトレーディングについて知ることができる。ヘッジャー(ヘッジを目的とした取引をする人たち)またはコマーシャルズ、大口トレーダー(大口投機家)、小口トレーダー(一般投機家)である。3つのグループは同じマーケットに対して、それぞれが別の使命を受けたかのように違った動きをする。
マーケットには投機筋もいればヘッジャーもいる。投機筋は値上がりを期待して買い、値下がりを期待して売る。彼らは安く買って高く売り、その差で儲けようとする。大口ヘッジャーはユーザーなら安く買いたいが、生産者なら高く売りたい。ヘッジ目的の取引は商品や通貨や証券の価格を確定するために行われる。
ここで、自分が小麦農家だと想像してほしい。今年の収穫は約5万ブッシェル、1ブッシェル当たりのコスト(生産から穀物埠頭に運ぶまで)は約3.25ドルである。ある晴れた日、新聞を見ると12月渡しの小麦が1ブッシェル当たり4.10ドルになっている。今は5月で、作物はまだ土の中だが、今の価格で売って12月に渡せば、1ブッシェル当たり85セントの利益が上がる。そうなると、全体の利益は4万2500ドル(0.85ドル×5万ブッシェル)になるが、これには問題もある。
まず、もし予定どおりの収穫ができなかったらどうなるのだろう。干ばつ、害虫、あるいは収穫直前に霰や雹が降るかもしれない。そうなると、5万ブッシェルの小麦を受け渡すことができないし、もし受渡日の価格が1ブッシェル当たり4.10ドル以上だったら困ったことになる。いずれにしても、もし小麦を引き渡せないときは、いやでも売値と受渡日の価格の差額を支払う必要がある。
一方、もし小麦の価格が下がって受渡日近くで1ブッシェル当たり4.10ドル以下になったら、これはうまく利益が上がったことになる(そのときの価格と先物価格の差額分)。ただ、ここでもし自分の小麦を受け渡せないときは、ほかの農場も受け渡しができない可能性が高い。そして、商品が不足していれば価格は上がる。
それでは、もし小麦の価格が1ブッシェル当たり8.10ドルに高騰したらどうだろう。その価格で売れば、1ブッシェル当たり4.85ドルの利益(純利益の総額は24万2500ドル)になる。そろそろ都会ずれした頭でも、農業がトラクターを動かすだけの仕事ではないことが分かってきただろう。これらの理由(ほかにもあるが)から、小麦でも金でも、豆でもベーコンでも、生産者は先物市場を利用したいと同時に、注意も必要になる。
もし小麦の価格が上がり始めたら、違う価格で少しずつ売っていくこともできる。例えば、1ブッシェル当たり4.10ドルで収穫の10分の1を売り、5.00ドルで3分の1を売るころには、自分が豊作になることが分かっているのだから6.00ドルでさらに売って、残りを7.00ドルで売り切る。
こうなれば、収穫のすべてをコスト以上の価格で売ることができたのだから大いに満足できる。もし、これから1ブッシェル当たり20ドルになったら、売り急いだことを悔やむかもしれないが、関係ない。そして、毎週発行されるCFTCのレポートにはこの売りが反映される。もし、多くの農家が例えば1ブッシェル当たり5ドルで売ったあとで10ドルに値上がりすれば、一見愚かな売りに見える。しかし本当にそうだろうか。利益を上げることができた農家は、自分が売った値段にきっと満足しているだろう。
先物市場の重要な特性のひとつに、ヘッジャーと投機筋との相互作用がある。投機筋には投機筋の価格変動に対する見方があり、それに基づいて先物を売買する。また、同じヘッジャーでも生産者は受け取る価格を確定したいし、製造加工業者は支払う値段を確定したい。
生産者も加工業者も、リターンを確定するために自分たちが受け取る金額や支払う金額を確定したいと思いながら、お互いに先物を売買する。しかし、実際の取引は、投機筋とヘッジャーとの間で行われることが多い。
価格が上昇すると、投機筋はさらに買おうとし、生産者はさらに売ろうとする。これがこのジャングルの重要な掟と言ってよいだろう。
また、価格が下落すると、投機家はもっと売ろうとし、加工業者はもっと買おうとする。ここで、目の前の下降トレンドを利用して儲けようとしている投機筋の気持ちを考えてみよう。彼らはこのまま下がり続けることに賭けて空売りするため、どんどん下がって利益が積み上がっていくことを期待している。
ところが、ヘッジ目的のコマーシャルズの考えはかなり違う。このコマーシャルズはほとんどの場合、マーケットの動きではなくて自分がかかわっている商品のマーケットにおける現在価格で儲けようと考えている。コマーシャルズは自分が支払ってきたよりも安い価格を見れば、生産コストを下げる目的でさらに買おうとする。こうすれば商品の価格が高かったときより生産コストを下げることができ、利幅が広がるからである。
もしトレンドが続いて価格が下がれば、コマーシャルズは気にするのだろうか。そうでもない。彼らは、価格が下がっても何らかの形で商品を受けとることに変わりはないため、損失を被るわけではない。一方、彼らの利益は製品とコストの利幅であるため、価格が下がり続けても、すでに確保した利益に影響はない。
もし下がれば、彼らはむしろもっと買おうとする。製造者が望むのはコストをゼロにすることで、原料がタダになれば、あとは製造コスト――トウモロコシをコーンフレークにしたり、小麦をパンにすること――のことだけを心配すればよい。
投機とヘッジの割合は、先物市場によって違う。例えば、金融関連のマーケットなどではお互いのヘッジが売買の中心になっているが、それ以外のマーケット、例えば商品市場の多くは投機筋同士の売買が中心になっている。
ただ、どのマーケットにも取引の両側に投機筋とヘッジャーの両方がいる。これは大事なポイントで、詳しくはマーケットタイミングとトレードすべきマーケットの選択について述べるときに触れることにする。
先物市場では、ヘッジャーをコマーシャルズ、投機筋を非コマーシャルズと呼んでいる。すべての先物取引は、業界に対する政府監督機関であるCFTCに登録されているが、取引の登録コストはヘッジャーよりも投機筋のほうが高くなっている。そのため、生産や加工にかかわっている大口トレーダーはコマーシャルズとして登録し、それ以外のトレーダーは、非コマーシャルズとして一度に多く枚数をトレードする者と、少ない枚数しかトレードしない者に分かれる。
CFTCは、約75のマーケットについて登録された取引をトレーダーの区分ごとに毎日リストにまとめ、毎週インターネット上に公表している(http://www.cftc.gov.com/)。このレポートはCOT(CFTC取組高報告書、Commiments of Traders)と呼ばれ、コマーシャルズの建玉、大口の非コマーシャルズの建玉、そしてそのほかの売買(小口プレーヤー、つまり一般トレーダー)の建玉などが記載されている。これらのレポートから、何枚がコマーシャルズの建玉か、つまりわれわれがお友だちになりたいビッグプレーヤーのものかを知ることができる。
世界最大のトレーディングマーケットは何だろうか。実は、株式でも債券でも商品でもない。
信じがたいかもしれないが、世界最大のマーケットは通貨取引なのである。日々の出来高は、1兆5000億ドルを超えていて、これは世界最大の証券取引所であるニューヨーク証券取引所の50倍以上に当たる。すでに述べたように、彼らはスーパーパワーであり、マーケットが彼らを中心に動いているのは間違いない。
ちなみに、通貨トレードはお金持ちだけのものだと思っている人が多いが、それは違う。もちろん、スーパーパワーがビッグプレーヤーだということや、このマーケットほど短期間で大きな資産を築けるところがないことに間違いない。しかし、正しいガイドに従って、正しいグループのあとに続けば、わずか1〜2万ドル、あるいはそれ以下の資金でもこれらのマーケットで非常に効率的にトレードすることができるのである。
ちなみに、CFTCは2005年1月にレポートの規定を若干変更している。
CFTCは、大口トレーダーの報告規定を改正した。これまでの規定では、future commission merchants、クリアリングハウスの会員、外国ブローカー、報告義務のある大口トレーダーは、規定水準以上のポジションとその明細を委員会に報告することが義務付けられていた。しかし、最終的なルールのひとつとして、報告義務水準を上げ、その結果がCOTレポートに反映されるようになった。
委員会は通常、全体の約70〜90%程度の建玉の情報が集まるように報告義務水準を調整している。また、委員会は出来高、取組高、特定の取引の監視をしたり、報告義務水準に対する個人トレーダーの数とポジションサイズを比較することで、現在の報告内容がマーケットを効率的に監督するために適当かなどについて定期的に見直しを行っている。COTデータは、毎週火曜日に報告義務水準以上のポジションを保有している20以上のトレーダーの建玉の明細で、ポジションは報告義務がある分とない分というカテゴリーに分類され、ある分に関しては追加情報も提供している。報告義務水準が上がったことで、COTレポートに掲載される報告義務のあるポジションの数とそれに伴う情報が変わる。COTレポートに頼っている人たちは、この改正に伴う影響を理解しておくべきだろう。
われわれの相棒となる人たち
われわれの相棒になるのはアメリカ政府がコマーシャルズと分類する連中で、おなじみの名前であることが多い。例えば、天然資源の分野ならピルスベリー、ゼネラル・ミルズ、カーギル、アイオワ・ビーフ、ナビスコといった大企業がそれに当たる。どの分野においても、商業的、金銭的に自分の仕事を熟知することで生き残り、成功して自分のマーケットで本当の経済的地位を固めている企業である。
抽象的な商品、あるいは金融商品の場合は、J・P・モルガンチェース、ゼネラル・モーターズ、マイクロソフトをはじめとする世界最大の銀行や証券会社に従うことにする。彼らは毎日、通貨市場で金利をヘッジする必要があり、それだけでも十分CFTCの報告義務水準を超えている。なんて親切なことだろう!
現在言えることは、数十年前から変わっていない。約四半世紀前のビル・ジルターの指摘は、今日そのまま通用するし、かつての権力者は今でも同様の力を持っている。次に紹介するコメントは、1985年に彼が書いた「予測の手法」という論文から抜粋した(ジルターは商品先物の重要指数であるCRB指数の開発者)。
われわれは基本的に大口ヘッジャー、大口投機筋、小口トレーダーなどマーケット参加者のなかで確認できる大きなグループのパフォーマンスを「予想」しようとしている。取引量が大きく、洗練されたトレーダーほど将来の価格変動に対する洞察も深くなる。絶対とはいわないが、少くとも「十分な情報を与えられていない一般トレーダー」を含むであろう小口トレーダーよりはましだと思う。また、マーケットにおけるさまざまな時期のさまざまなポジションサイズも一種の自己達成的予言になるだろう。
COTレポートの統計からは、大口ヘッジャー、大口投機筋、小口トレーダーの月末のネットポジションが推測できる。われわれは、何年間にもわたって月末統計の平均値を算出し、彼らの各月の平常ポジションを割り出した。次に、各グループの実際のポジションと、いわゆる平常ポジションを比較した。そして、彼らのポジションが平常値から大きく外れるときは、彼らがブル(またはベア)になっていることの目安と考えることにした。
最後に価格の動きを調べてみると、グループごとの「成績」が分かる。思ったとおり、大口ヘッジャーと大口投機筋がもっとも良く、小口トレーダーは桁違いに悪かった。意外だったのは、大口ヘッジャーの予想が常に大手投機筋を上回っていたことだった。ただし、大口投機筋の予想成績は、マーケットによってかなりの差があった。
彼らの現在の建玉と季節的な平常値の差からは、各グループがそのマーケットでどの程度ブル(またはベア)なのかをある程度はっきりとした割合(%)で知ることができる。この「ネット・ネット」の数値からマーケットの主なプレーヤーの姿勢が全体的に分かる。そこで、われわれの調査と経験をもとにいくつかのガイドラインを作成した。
まず、通常と比べて大口ヘッジャーが大きくネットロング、大口投機筋も明らかにネットロング、小口トレーダーは大きくネットショートのときがもっともブルの配置と言える。配置にはブルからこれと正反対のもっともベアな配置(大口ヘッジャーが大きくショートになっているなど)までさまざまな形があり、さまざまな影響を及ぼす。平常値からの乖離を分析するときに注意すべき点が2つある。長期の平均より40%以上外れたポジションと軽視されがちな5%以下の乖離の2つで、十分警戒してほしい。
ここで、われわれが発行している『CRB・フューチャーズ・チャート・サービス』のなかの「テクニカルコメント」のなかから、建玉分析の利用例をいくつか紹介しよう。1983年8月末にわれわれはそれまで1ポンド当たり10セントだった砂糖に対してベアに転じた。そして、1983〜1984年を通してわれわれはベアの姿勢をとり、その間に16年来の安値である1ポンド当たり4セント以下に下落したときもこの姿勢は変えなかった。われわれの粘り強さの主な理由は、チャートがベアを示していることに加えてわれわれがCOTレポート(このなかのCはコミットメント、つまり確約を意味する)を分析していたからだった。もう2年以上も大口ヘッジャーの平均ネットショートポジションは、その前6年間と比較して20%以上大きくなっていた。ところが、小口トレーダーのほうは多大な損失にもかかわらず、暴落時期を通して平均で20%近くネットロングのポジションを維持していたのである。
1983年8月に、シカゴの小麦先物は高騰し、過去最高値を記録した。1983年8月12日の「コメント」でも述べたとおり、チャートは非常にブルになっていた。しかし、直近のCOTレポートを見ると、マイナスの要素が見える。大口ヘッジャーは、36%ネットショート、小口トレーダーはネットロングと両サイドで当時の10年平均を超えていたため、マーケットは天井に達して価格は次の6カ月間下降トレンドに転じた。
1983年夏の壮大なブル相場直前のトウモロコシと大豆の取組高の構造を調べてみると、この分析には「うまくいったところ」と「いかなかったところ」があることが分かる。大口ヘッジャーが平常よりも大きくネットロングで、小口トレーダーがネットショートだったトウモロコシの場合はうまくいった。一方、大豆は、大口ヘッジャーがかなりのネットショートで、小口トレーダーは6月が平常値が10%に対して20%のネットロング(トウモロコシのブルパターンの正反対の構造)になっていた。しかし、どちらの商品も結局は同じようなブル相場になった。意外な結果は、この夏の思いがけない干ばつが原因だったのかもしれない。
ここに紹介しているのは比較的最近の取組高分析の例だが、われわれはすでに20年以上の経験を積んでいる。パフォーマンスのパターンは比較的一貫しているが、なかにはかなり劇的な例外もあった。そこで、これ以外にも入手可能なテクニカルやファンダメンタルのツールを合わせて使うことが勝率を上げるためには重要になる。先物の価格トレンドを形成する出来事の本質に対しては、もっとも経験豊富なテクニカルアナリストやファンダメンタルアナリストでさえ警戒と柔軟性を維持しなくてはいけない。国際的な出来事、気候、政治的な立法行為など、マーケットの方向性を一気に変えかねない予想不可能な力はいくつもある。価格予想というカギをすべて開けることができるマスターキーなど存在しないが、COTレポートの適切な解釈は価値があるし、アナリストのキーホルダーに備えておくべきツールだと思う。
コマーシャルズのデータのもっとも良い使い方は、「ローハイド」の歌詞に出てくる。
ヤツらを分かろうとするな
とにかくロープで縛って焼印を押せばいいんだ
このあと分かるとおり、コマーシャルズを追跡するのは、それほど難しくはない。迷路や複雑な行列で悩む必要もない。ただひとつ、彼らがだれよりもうまくプレーできるということさえ知っておけばよい。
この商業と産業の巨大権力者たちの仲間になるのはなかなか悪くない。
次は、彼らを追跡する方法を学んでいこう。
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