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ウィザードブックシリーズ Vol.159

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ロジカルトレーダー
――オープンレンジブレイクアウト戦略の基本と応用

2009年11月14日発売
ISBN 978-4-7759-7126-0 C2033
定価 本体5,800円+税
A5判 ハードカバー

著 者 マーク・B・フィッシャー
監修者 長尾慎太郎
訳 者 井田京子

トレーダーズショップから送料無料でお届け
著者紹介 | 目次 | 正誤表 | 関連書籍  ◆立ち読みコーナー 監修者まえがき ・ まえがき ・ 序論 (本テキストは再校時のものです)
マーケットの魔術師ポール・チューダー・ジョーンズが、まえがきを寄稿!


超短期のトレードからポジショントレードまで応用可能!

王道のオープンレンジブレイクアウト戦略のすべてが詰まっている!
オープンレンジブレイクアウトの基本書――ピットトレーダーのバイブル!

トレーディングも人生と同様、計画が必要である! 本書では、トレーディングの専門家であるマーク・フィッシャーが20年以上にわたって成功を収めてきたトレード計画とその手法を公開している。その手法とは、フィッシャーが取引所のフロアトレーダーからパソコンでトレードする個人投資家までの何千人もの人たちに伝授してきたACDシステムである。フィッシャーはその革新的で勝率の高いACDシステムを使って、株や商品や通貨など、あらゆるマーケットでトレードする方法を教えてきたのだ。本書では、そのACDシステムの全貌を明らかにするとともに、ACDシステムを利用したより効率的で利益率の高いトレード方法を紹介している。

本書ではまず、ACDシステムの概要を詳しく説明していく。オープンレンジの値幅で決まってくる基準点には、仕掛けのためのA点とC点、ストップを置くB点とD点がある。またこれらの基準点と組み合わせて、最大の枚数や株数で最小のリスクのトレードにするためのピボットレンジも学んでいく。

フィッシャーは本書でトレーダー心理という非常に重要な課題についても述べている。エゴを捨てる、ギャンブル理論、「次!」などの概念を組み合わせれば、ACDシステムはあらゆるトレードスタイルや理論にも応用できる。第4章のあとの「中間試験」でそれまで学んだ知識を確認したあとは、ACDシステムをほかのトレードツールと組み合わせた使い方を紹介していく。

本書ではACDシステムを使い、上回ったら買うべき価格や下回ったら売るべき価格の算出方法を説明する。また、ACDシステムを基礎にそれ以外の指標を重ね合わせ、それまでの価格や動きに基づいたトレード戦略の構築の仕方も明らかにしている。

また、トレードしているマーケットに十分なボラティリティと流動性さえあれば、ACDシステムは超短期のトレードやスキャルピングでも、長期のポジショントレードでも利用できる。初心者であれ経験豊富なトレーダーであれ、ACDシステムをひとたび習得すれば、トレーダー自身はもちろん、そのトレードスタイルも好い方向へと変化させることができるだろう。最後は実話に基づいたエピソードや身近なことを例に挙げながら、この手法で成功したトレーダーの逸話などを紹介し、ACDシステムのすべてとそれを最大限活用する方法を伝授している。


■本書への賛辞

「フィッシャーが開発した素晴らしいシステムを快く一般公開しようという救世主的な気持ちはぜひとも利用すべきだろう」
――ポール・チューダー・ジョーンズ(チューダー・インベストメント・コープ会長兼CEO、『マーケットの魔術師』インタビュー掲載)


「フィッシャーは、プロの運動選手やコーチが試合に勝つための精神的アプローチをトレーディングに応用している。また、大学生やプロの運動選手の何人かに、バスケットボール引退後の行動計画としてトレーディングという道を提供した」
――ジョン・カリパリ(メンフィス大学バスケットボールチームのヘッドコーチ兼元NBAニュージャージー・ネッツのヘッドコーチ)

「私は1970年代前半から積極的にマーケットにかかわっており(為替、株式、デリバティブ)、CBOTの債券ピットのフロアトレーダーや大手多国籍銀行の為替ディーラー、銀行の先物ブローカーの責任者を務め、世界中の資本市場のアナリストとしてある程度の知名度を獲得し、毎日マーケット解説を執筆したり、自己資金でトレードしたりしている。この間に数え切れないほどトレード関連の手引書を読んだが、その大部分は得ることがほとんど(あるいはまったく)なかった。ところが、本書を読んでフィッシャーのACDシステムに関する洞察を理解していくと、それまで直感的に分かっていたトレード手法を論理的に、数字に近いほどの合理性をもって理解することができた。本書は初心者にとっては少し難しいかもしれないが、この教えがすぐに役に立つことは間違いない。本書を初心者にもプロのトレーダーにもぜひ勧めたい」
――デニス・ガートマン(ザ・ガートマン・レターの編集長兼発行者)



11月12日
オープニングレンジ9925〜9950をブレイクダウンあと、Aダウン9905をつけた。
偶然にもAダウンとピボットレンジ上限が9905で同じであった。ピボットレンジ下限9885を抜けたのち、マーケットは真っすぐ下がっていった。
(画像はマネックストレーダーより)




原書
The Logical Trader:
Applying a Method to the Madness』



■著者 マーク・B・フィッシャー(Mark B. Fisher)

独立したトレーダーで、NYMEX最大の先物取次会社であるMBFクリアリング・コープの創設者。フィッシャーは、彼が考案したACDシステムというトレード手法を5000人以上の人たちに教えてきた。このなかには、トップヘッジファンドであるチューダー・インベストメンツに所属するトレーダーも多く含まれている。また、夏休みにはNYMEXでインターンプログラムを主催し、さまざまな経歴の見習いトレーダーや大学生を受け入れている。フィッシャーは銀先物ピットで最年少のトレーダーになった21歳からトレードを続けている。ペンシルベニア大学ウォートン校を最優等で卒業、同大学院で金融と会計の修士号を修得。

■目次

監修者まえがき
まえがき ポール・チューダー・ジョーンズ
謝辞

序論 トレーダーの計画

第1章 ACDシステムを知る

オープニングレンジ
A点
C点
時間の要素

第2章 ピボットの概念

ピボットレンジとは何か
日々のピボットレンジを算出する
ピボットレンジを使う
ピボットレンジ戦略
ピボットレンジを使ったトレード
狭いピボットレンジと窓を空けた日のピボットレンジ
重要な時間枠
3日間ローリングピボット
プラス日とマイナス日
長期のピボット

第3章 ACDとピボットレンジを組み合わせる

A点とピボットレンジ
ピボットレンジをブレイクしたAダウン
ピボットレンジ内の届かなかったA点
C点ピボット
遅い時間帯でのC点ピボット
ピボットレンジ内における最初の1時間の高値と安値
信用できないトレード
ACDシステムのダマシのトレード
まとめ

第4章 マクロACD

論理的なトレーダー――中間試験
問題
解答

第5章 ピボット移動平均線

ピボット移動平均線へのダマシ
移動平均線のダイバージェンストレンド
移動平均線ダイバージェンスのときにナンバーライン値を使って仕掛ける
幼稚園児でもできるトレード

第6章 進化したトレーダー

ローリングピボットレンジ
モメンタム
リバーサルトレード
2方向スイングエリア
トレンドリバーサルトレード
頭にきてこれ以上我慢できないトレード
トレンドの変化
手巻き寿司
アウトサイドリバーサル週
1929年の暴落――ほぼ完璧なトレード
正しい時間枠を選ぶ

第7章 ACDシステム版「ウソのような本当の話」

配管工のライザ
良いニュースでの悪い反応
期待に応えてくれないマーケット
まったく見当がつかない
トレーダーの弱点を探す
現実を直視する
初めての取引
規律
MBFの夏休みインターンプログラム
リスクマネジャーの仕事
センチメントのダイバージェンス
ブラックマンデー
大きなトレードと巨漢トレーダー
道に迷ってみる
ガートマンのルール
恐怖と強欲
ハウス側になる
リスクの測定と観察
絶対に起こらない
次!
金銭感覚を失うことについて
ひづめのハリー

第8章 トレーダーへのインタビュー

ケーシー――間違ったらすぐ手仕舞い
RN――システムを一から学ぶ
スキャルパーのスピーディー
リビ――ペナルティーボックスを避けるトレーダー
バーノン――1日のスタンスを知る
ドーブ――ACDを組み込む
グラニテ――フロア外のトレーダー

付録
用語解説

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■監修者まえがき

本書はMBFクリアリング・コープ(MBF)の創始者にしてCEOであるマーク・B・フィッシャーの著した“The Logical Trader”の邦訳である。最初に結論を書いておくと、これは日本の個人投資家、特にこれからトレードを始めようとしている人にとって間違いなく最高の教科書である。この手放しの評価は最近めったに相場書を褒めなくなった私が言うのだから確かである。本書の原書は2002年に出版されているが、これほどの秀作が長い間翻訳されずに放置されていたとはにわかには信じがたい。私たち日本のトレーダーにとっては邦訳が7年間も遅れたことによる機会損失は計り知れない。逆に言えば、原書の存在を知る人にとっては絶対に翻訳してほしくなかった書籍のひとつである。本文のなかでも触れられているがMBFはNYMEXにおける最大手のFCMで、あのポール・チューダー・ジョーンズの主宰するチューダー・インベストメントの運用担当者を含め、数多くのトレーダーにとって、そこは優れた教育の場となってきた。そしてフィッシャーが彼らを教える際に用いたのが本書で紹介されているACDシステムである。

 さて、ではACDシステムとは何であろうか? それはオープニングレンジブレイクアウト(ORB)の派生形のことである。今でこそ、ORBは知る人も多くなったし、実際に日本の市場で使っている人も少なくない。だが、10年ほど前にパンローリングの翻訳書によって紹介されるまでは、その名が一般投資家の口の端に上ることはなかったし、したがって当時は日本の市場においてORBはその単純なバージョンでも最強のトレード手法であった。そしてその後の経緯はさらに興味深い。時間がたち、多くの人が日本の市場においてORBを用いてトレードを行うようになると、当然のことながらだんだんとそれは機能しなくなっていった。そのためほとんどの人はそれを使うことをやめてしまったのである。だが、私の友人の個人投資家(彼はこの手法の日本における始祖のひとりとも言える人物である)は、日本の市場で機能しなくなったからといってORBを捨てたりせず、代わりにORBが機能する市場を世界中探してトレードし続けたのである。もちろん彼の使っているトレード手法はORBだけではなかったが、こうして長年慣れ親しんだ手法に特化することで彼はわずか10年ほどで数十億円を稼いだ。

 ここでの教訓は2つある。その1つめは、自分がトレードするマーケットを固定してあれこれと有効な手法がないかを探して回るのではなく、特定の枯れた手堅い手法に特化して、それが有効なマーケットを探しながらトレードを続けたほうがはるかに成功に近いということである。そして2つめは、ORBは個人投資家が一生付き合っていくに足る信頼できる手法であるということだ。つまりORBが機能する市場はいつでも必ずどこかに存在し、私たちはそこに行ってトレードすればよいだけのことなのだ。

 冒頭に書いたとおり、本書はORBの基礎と応用に関する理想的な教科書である。特に初心者にとっては本書があれば、それ以外の相場書は全部捨ててしまってよいのではないか? 少なくとも本書を何度も読み込み、実践してORBを自分のものとするまでは、ほかの書籍を手にする必要はまったくないだろう。これを著したフィッシャーの努力と英断を称えたい。

 最後に、翻訳に当たっては以下の方々に心から感謝の意を表したい。翻訳者の井田京子氏は正確な翻訳を実現してくださった。阿部達郎氏にはいつもながら丁寧な編集・校正を行っていただいた。また本書が発行される機会を得たのはパンローリング社社長の後藤康徳氏のおかげである。

 2009年10月
                         

長尾慎太郎



■まえがき――ポール・チューダー・ジョーンズ

 私がマーク・フィッシャーに初めて会ったのは1980年代の初めで、場所は当時彼がほとんどの時間を過ごしていたCOMEX(ニューヨーク商品取引所)の銀のピットでだった。あるとき、このピットを頻繁に訪れる紳士が上の階のフロアトレーダーを通して、大引けで銀を200枚買う注文を引き受けてくれるよう私に頼んできた。このときのフィッシャーの行動といえば、何日かぶりに肉の塊を与えられたときのライオンそのものだった。すぐに4〜5人の「ローカルズ」(自己勘定で売買するトレーダー)が私を取り囲み、早口でまくし立ててきた。そのなかで私に唯一見えたのはFSHと書いてあるバッジだった(もしかしたらFISHだったかもしれない、彼は立会場で何千人ものトレーダーからフィッシュと呼ばれていた)。彼はいつものように私が何枚買うかを正確に、そして本能的に察知していた。引け間際の高値で売らそうと、私が20枚か30枚買うまで待っていたのだ。後にも先にもマーク・フィッシャーほどピットブローカーの手持ちの注文をかぎつけるのがうまいトレーダーはいなかった。

 本書を読めば、フィッシャーが普通の人の世界には存在しない何らかのエネルギー源から力を得ているということがすぐに分かるだろう。それは支配欲が強いという言葉ではとても言い足りないが、もしトレードを学びたくて本書を読む時間を割く気持ちがある人ならば、彼が開発した素晴らしいシステムを惜しげもなく一般公開しようという救世主的な気持ちはぜひとも利用すべきだろう。彼は、マーケットに対する独自のアプローチと素晴らしい利益を上げる可能性を作り出す手法を整然と系統立てて詳しく説明している。この方法はデイトレーダーから長期投資家まで、あらゆる時間枠に応用できる。リスク・リワードの観点から見て有利なトレードをすることは、トレードで利益を上げるための基本であり、すでにこの手法を取り入れた何百人ものトレーダーが成功を収めている。このことに加えて、かつて私の部下だった多くのフロアトレーダーたちが実際にフィッシャーの手法を使って大きな利益を上げてきたことを、私自身も直接目撃していることを書き添えておきたい。

 フィッシャーのトレーダーとしての経験と彼のACDシステムは、トレーダーになりたいすべての人にとって成功するための貴重な道しるべになってくれる。彼のトレード手法の中核をなすものは非常に厳格な規律であり、これは長年トレーダーをやってきた彼の特徴ともなっている。彼が本書を通して強調しているように、トレーダーにとって最も重要な要素は、間違ったときに撤退するポイントを見極めることにある。もし本書でそれ以外に何も学べなかったとしても、いつ手仕舞うべきかという教えはトレーディングに伴う肉体的・精神的・金銭的な痛みを大いに和らげてくれるだろう。
 フィッシャーはマーケットに対する理論的な手法を紹介すると同時に、彼の周りのトレーダーたちの破綻や成功を描いたさまざまな面白いエピソードも紹介している。さらに、第7章「ACDシステム版『ウソのような本当の話』」では、トレーディングピットでの驚くべき実話も披露している。経験を積んだトレーダーならばこれらのエピソードに自分自身の弱点を重ね合わし、初心者ならばプロの過ちから多くを学ぶことができるだろう。

 トレードを始めたい人には、私がトレーディングのバイブルだと考える4冊の本を勧めている。
 まずはエドウィン・ルフェーブルによるジェシー・リバモア
の自伝風小説である『欲望と幻想の市場』(東洋経済新報社)。
 次はマギーとエドワーズの共著であるマーケットのテクニカル百科 入門編・実践編』(パンローリング)で、20世紀前半に書かれたこの本の教えは今でも有効だ。

 3冊目のロバート・プレクターとA・J・フロスト著エリオット波動入門』(パンローリング)は古典と言える1冊である。
 最後のジャック・シュワッガー著マーケットの魔術師』(パンローリング)は優れたトレーダーのインタビュー集となっている。

 『欲望と幻想の市場』はトレーディングと株価テープを読むときの感情の起伏を描き出した非常に面白い読み物になっている。
マーケットのテクニカル百科 入門編・実践編』と『エリオット波動入門』は優れたリスク・リワード比率のトレードを仕掛けるための具体的かつ体系的な方法を紹介した本で、すべてのトレードを適切で思慮深く執行するための指針となってくれる。
最後に『マーケットの魔術師』は素晴らしい読み物で、この本に登場するほぼすべてのトレーダーが述べているとおり、大金を儲けるためにはまず間違ったときに失う金額を少なくするべきだという教えを学んでほしい。

 この4冊を紹介したのは、本書を読み終えてこれをトレード初心者の必読書に加えようと思ったからだ。チューダーグループを訪れる何百人ものトレーダーたちを見ていると、ほぼ全員が違う方法でマーケットにアプローチして利益を上げていることにいつも驚かされている。お金を儲ける方法は何十通り、いや何百通りもある。ただ、テクニックや方法は異なっていても、みんな何らかの方法で非常に有利なリスク・リワード比率のトレードを仕掛けていることは共通している。そして本書もこのことを非常に単刀直入に述べている。本書は、マーケットで効果的なレバレッジを掛けて素晴らしいパフォーマンスを上げるための考え抜かれた体系的な手法が紹介されている。最も成功したフロアトレーダーのひとりが公開してくれた視点なら、それをありがたく注目しないともったいない。フィッシャーと出会ってから20年がたつが、彼はどんな時でもどんな場面でも寛大で親切だった。このことも、彼が知り合いでも知り合いでない人でも、その両者に与え続けてきたもうひとつの驚くほど貴重な贈り物と言ってよいだろう。ありがとう、マーク。
                          

(チューダー・インベストメント・コープ会長兼最高執行責任者)



■序論

 トレーダーの計画

 人生と同じように、トレーディングにも計画が必要である。このなかには、ミクロレベルのこと(トレードごとの戦略)だけでなく、マクロレベルのこと、つまりトレードする理由やどのように目標を達成するかということや(望む結果を出すための手段)、うまくいかなかったときにどうすればいいのかということも含まれている。私はトレーディングを始めて20年になるが、それと同じくらいの期間、トレーディングも教えている。これらの活動を通して、計画に沿ってトレードしている人が非常に少ないことと、ミクロレベルではトレードの規律を守れない人があまりにもたくさんいるということをいつも感じていた。彼らが天井だと思って売ってもマーケットはそのまま上げ続けたり、押し目だと思って買ったらそのまま下がってしまうことがよくあるし、リスクや投資資金や自分自身を管理できていない人もいる。しかし、トレード計画を持つということは、初心者にとっても経験を積んだプロにとっても、同じくらい重要なことである。

 マクロレベルでは、人生で何がしたいのかをまったく考えていない人が多すぎる。これは、私の会社で夏休みに実施しているインターンプログラムでも毎回感じている。ちなみにこのプログラムは高校生と大学生だけでなく、意欲のあるトレーダーなら経歴を問わず受け入れている。毎年25〜30人のインターンが参加するが、このなかにはハーバード大学やペンシルベニア大学ウォートン校をはじめとする名門大学出身者もいれば、高校を卒業していない人もいる。私はさまざまな生い立ちの人たちが一緒に学ぶのが大事だと考えているため、毎回貧しい層や労働者階級の生徒も入れるようにしている。このプログラムを開いているのには、利他的理由と利己的理由がある。私は昔、この世界に入るチャンスをある人にもらったため、そのお返しをしたいという気持ちもあるし、才能あるトレーダーを見つけて採用したいという気持ちもある。ちなみに、本書も同じ理由で執筆している。  夏のインターンプログラムを見るかぎり、トレーディングで成功するかどうかと学歴はほとんど関係ないように思う。私自身はペンシルベニア大学ウォートン校のMBA(経営学修士)を優秀な成績で修得しているが、そういうことを踏まえて言っている。むしろ、大事なのは計画を立てておくことである。思いどおりに計画が進めば問題はないが、もしそれがうまくいかなかったらその代わりにもなるような計画も立てておくのである。  優秀なトレーダーの特性のなかには、運動選手が競技場全体を見回す能力も含まれている。これについては後述するが、まずは本書の主題である計画について見ていこう。

 本書は文字どおり、私のトレーダーとしての経験と長年にわたって私を成功に導いてくれた計画が基になっている。これまで私はこの手法を約4000人に教えてきた。このなかにはNYMEX(ニューヨーク商業取引所)のフロアトレーダーになった300〜500人も含まれている。ちなみに私自身もNYMEXでトレードし、私が経営するMBFクリアリング・コープもここで営業している(MBFはNYMEX最大のクリアリング会社で、世界中でトレードされている原油取引の5分の1と、天然ガス先物の4分の1を取り扱っている。詳しくは当社のサイト http://www.mbfcc.com/ 参照)。さらに、50人以上いる当社と契約しているトレーダーもこの手法を学んでフロアでトレードしたり、上の階にある事務所でエネルギー株や個別銘柄、その他の商品をトレードしたりするときにこのシステムを使っている。つまり、この手法はすでに広い範囲で利用され、実践され、検証されている。

 私がクリアリングハウスを作ったとき、当然のことながらまずは顧客が必要だった。しかし、精算手数料を他社よりも安く設定して勧誘するよりも、トレーダーの本当の優位性はトレードのやり方を熟知しておくことだということは分かっていた。これは子供のころに見習いからスタートして以来、長い年月をかけて私が学んだことでもある。古い諺に「魚の捕り方を教えれば、一生食べていける」というのがあるが、私はこれを「トレードのやり方を教えれば、忠実な顧客が一生ついてくる」と言い換えたい。そういう理由からも本書が誕生した。本書には、私が使ったり教えたりしている手法だけでなく、その手法に含まれる教えが詰め込まれている。

 私がトレードを教えた4000人のうち、約半分は居眠りしたりトレード自体にまったく興味を示さなかった。つまり、約2000人が真剣に講義を聞き、何かを学び取っていったことになる。そのなかで、私の手法を実際に取り入れたのは1000人程度だと思う。この1000人という数字に先生として私が落胆したかといえば、それは違う。この手法を取り入れた1000人のうち、約100人は毎年トレーディングで75万ドル以上の利益を上げており、彼らはクリアリングハウスの素晴らしい顧客基盤となっているからだ。

 しかし、この数字は読者にとっても意味がある。このシステムが私にとってうまくいっただけでなく、私以外の多くの人たちがやってもうまくいったからだ。そして何よりも素晴らしいのは、この手法がフロアでのトレードにも、フロア以外の商品や株のトレードにも同じようにうまく機能したことだ。このシステムは、マーケットに適度なボラティリティと流動性があれば、ホームトレードでも、デイトレード用の貸しブースでも、フロアトレードでも使える。この手法を教え始めてから約15年がたつが、今までの結果から見てトレーダーとして成功する確率を大幅に高めることは間違いない。普通のトレーダーが成功する確率はせいぜい10〜15%だろうが、私が教えたトレーダーが成功する確率は40〜50%にも達している。成功する確率が約3倍にもなっているということだ。

 ただ、これをうのみにしてはならない。本書には、この手法を使っている多くのトレーダーのエピソードや実例や逸話も紹介されている。それでもまだ信じられないなら、伝説のヘッジファンドマネジャーであるポール・チューダー・ジョーンズの下で働いた最初のフロアトレーダーたちにトレードを教えたのも私だということを覚えておいてほしい。

 ACDシステムと名づけた私のトレード手法は魔法ではないし、実践するために高いソフトウエアを買う必要もない。これは論理的なシステムで、悪い言い方をすれば、バカでもやれる手法で、そういうものを目指して開発してきた。ACDシステムはどこでトレードすべきかのポイントを示してくれる(A点とC点は仕掛けで、B点とD点は手仕舞いのポイント)。それは、ある価格を上回ったら買い、ある価格を下回れば空売りするなどを簡単に算出できる。このACDシステムを基礎に、ほかの指標を重ね合わせれば、一般的な価格とマーケット動向を基としたトレード計画を立てることができる(ACDシステムに関する解説と日々の値は専用のホームページを http://www.thelogicaltrader.net 参照)。

 さらに、ACDシステムはトレードの規律とリスク管理にも取り入れることができる。実際、このシステムは規律を順守してリスク管理と投資資金保持に利用した場合に最もうまく機能する。私は、投資資金の大きな増減やドローダウンがあっても、大きな勝ちトレードが1つ2つあれば相殺できるだろうといったたぐいのシステムは好きではない。負けトレードはできるだけ早く損切りし(私が「次に行こう」と呼ぶ概念)、計画と目標を持って利を伸ばす必要がある。それにはACDシステムを使ってシグナルを確認すれば、最小限の下方リスクでどれくらい有利なトレードかが分かる。私はこれを「アクセルを踏むタイミングを知ること」と呼んでいる。もしシステムがすべてゴーサインを出していれば、アクセルを踏む。もし計画に反してトレードしてしまったときは(トレーダーならだれでもそういうときがある)、このシステムがアクセルからブレーキに踏み代える手助けをしてくれるかもしれない。愚かなトレードをしたときには、少なくとも増し玉をするようなバカなまねはやめてほしい。  もし上で述べたことが単純で論理的なものとして聞こえれば、このシステムの素晴らしさに出合ったあなた自身を褒めてあげてほしい。これはe=mc2や量子物理学などといった複雑なものではないし、代数ですらない。ここで必要なのは算数程度の単純なもので、それこそがこのシステムの魅力でもある。
 ACDシステムの全体像として、逆三角形をイメージしてほしい。頂点は下にあって、それを支点として左右バランスをとっている。このポイントがACDシステムで、これがなければ全体が崩れてしまう。ほかの指標や手法はACDシステムの上に重ねて配置してあるが、基礎となるACDシステムがなければどれも使うことはできない。  本書ではそれ以外にも、トレーディングスタイルや手法に関係なくACDシステムと組み合わせて使える非常に重要な心理面の教えについても紹介していく。そのいくつか挙げておこう。

●基準点を持つこと
●ギャンブル理論
●エゴ(思い入れ)を捨てる
●「次に行こう」の概念
●「痛みなくして得るものなし」が良くない理由
●サイズを最大にしてリスクを最小にする
●良いニュースでの悪い反応
●最も難しいトレードが最高のトレードになる理由

 この手法を説明する前に、その由来について説明しておきたい。ACDシステムは、もともと私がペンシルベニア大学ウォートン校で行っていた研究の一部だった。私は在学中もフルタイムのトレーダーとして、何とか学業と両立していたが、2カ所に同時にいることはできないため代役を雇っていた。同級生にお金を払って出席できない授業のノートをとってもらっていたのだ。このときの契約は、もし私が最優秀で卒業できれば彼女を商品取引所のフロアに招待し、トレーディングのインターンとして取引所の会員権を貸与するというものだった。当時は2つの仕事をこなすため、毎日午後2時までトレードしたあと、すぐに列車でニューヨークからフィラデルフィアに移動し、夜は大学の授業に出て、そのあと夜中から翌朝にかけてニューヨークに戻るという強行軍を繰り返していた。

 それが、私が立てた人生の計画だったのだ。もちろん取引所のピットにずっといることもできたが、文字どおり未成年の13歳から証券会社のランナーとして商品先物市場で働いていた私は(この話はあとで詳しく書く)、自分の人生計画に何らかの理由でトレーディングがうまくいかないときの予備も必要だと分かっていた。そこでウォートン校に進学し、繰り上げプログラムで早めにMBAを修得することにした。この資格があれば、投資銀行や取引所の上の階で営業している証券会社に勤めることもできる。トレーディングは自分の天職だと思っていたが、現実も直視しなければならない。必要なときに頼れる専門的な資格があれば、トレーディングに集中することもできると思ったのだ。

 ウォートンではランダムウオーク理論や効率的市場など、マーケットを打ち負かすことはできないという理論を学んだ。実を言うと、母校(卒業後は客員講師として何度も訪れている)の恩師を尊敬しつつも、20歳のトレーダーとしては、これらの理論をできれば間違いだということを証明したかった。マーケットで育ち、18歳から(祖父名義の口座を使って)定期的にトレードしてきた私は、マーケットはたとえランダムに見えても実は違うと思っていた。マーケットの動きには識別可能なパターンがあり、それを図表にして分析すれば指針として利用できると信じていたのだ。

 12歳のとき隣に住む友だちのお父さんに頼み込んで商品取引所のランナーの仕事をもらってからずっと、私は相場に夢中になっている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙に掲載されているさまざまな銘柄の価格(始値、高値、安値、終値)など、マーケットの統計データは何年研究しても、日々発見があって魅力は尽きない。そんな私には、これらの数字はマーケットがランダムに動くという考えを否定しているように思えてならなかった。自分の観察結果を証明するため、私は金融学の教授にマーケットタイミングモデルに関する研究論文の執筆を申し出た。目的は、商品の短期トレードで儲かる手法を考案することとした。この研究のために、私は大豆と銀(私はかつて商品取引所最大のブローカーで見習いをしていたことがあり、この会社はハント兄弟の仲介をしていた)と米短期国債の値動きを観察した。
 このとき統計データを集めて数字をさまざまに処理した結果が、トレーディングモデルACDシステムの基礎となっている。このシステムを私は今でも使っているし、本書で紹介しようとしているのだ。読んでいて理解できない概念があれば、前に戻って読み返してほしい。本書は系統立てて構成されており、ACDシステムから始まってその上にさまざまな概念を積み重ねていく構造になっている。

 ただ、この手法だけではトレード結果は向上しない。必要なのは規律と、それを守ってシグナルを実行したり、間違ったときは素早く損切りして次に進んだりするための固い意志であり、それにはまず自分のエゴ(思い入れ)について知っていなければならない。このときは、頭の良さや金融市場について知識をたくさん知っているかどうかは関係ないため、ACDシステムを学ぶときはそれらはすべて忘れてよい。長年、夏休みにインターンに教えてきた経験から言えば、高学歴かどうかはトレードするときにはまったく意味がなく、一番重要なのは持って生まれた能力だと私は確信している。そして何よりも、次のことができなければならない。

●情報収集
●情報分析
●判断
●判断結果の実行

 私の知るかぎりで、これらのことを教えてくれる大学院はどこにもない。人はもともとこのような能力を持っているか持っていないか、また自分で伸ばすことができるかできないか、でしかない。できるだけ早くこれらのことを身につけ、規律を保つことができれば、トレーダーとして成功する確率は高まるだろう。  あとは、数字に強いことも助けになる。私はこのスキルを「レジの計算力」と呼んでいる。近所のコンビニや総菜店でサンドイッチとジュースとクッキーを買うと、レジ係はちらっと見て「4ドル26セントです」などと言う。トレーダーも、このような計算ができると大いに助かるだろう。

 ここでロブという男性のエピソードを紹介しよう。ロブはもともとアイスクリームを売っていた。「オクラホマミキサー」か何かやかましい曲を繰り返し流すアイスクリームを売るトラックの窓口にロブがいて、その周りには40人の子供たちが大声で注文を叫び、母親たちが財布からお金を取り出している光景を想像してほしい。ロブはこれをすべて難なくさばくことができるのだ。「コーンアイスが3つで3ドル75セント、棒アイス2本で1ドル50セント、コーンアイス2つとアイスクリームバー2つで5ドル」などと1日中やっていても、注文を間違えたり、おつりが足りなかったりすることはない。計算が違う自体がないのだ。  ここからもう少し想像を膨らませて、トレーディングピットにいるロブの周りを大勢のトレーダーが取り囲み、動きの速いマーケットで買い気配や売り気配を叫んでいる様子を思い描くのはそう難しくないだろう。もしロブが生まれつき持っていた情報を吸収して暗算する能力が、先物トレーダーとして大成功を収める助けになったとしたらどうだろう。実はロブのモデルは実在する。

 フロアでもそれ以外の場所でもトレードするときはさまざまなところから情報が飛び込んでくるが、これらをすべて精査し吸収する必要がある。そのためには、一度に10の異なったことを処理できなければならない。視野が狭くて一度に1つのことにしか集中できなければ、マーケットの全体像をつかむことはできないからだ。  運動選手の多くがマーケットで良い成果を上げるのは、彼らが生まれつき競争心旺盛だからではなく、種目に関係なく競技全体を見る能力があるからだ。トレードするとき、彼らの多くはこの技術を生かしてマーケット全体を視野に入れることができるし、彼らの視野は広い。読者もトレードするときは、このような能力を持つか、あるいは伸ばす必要がある。  次は、同じ時期に教えていたある2人に関する私のお気に入りのエピソードを紹介しよう。あるとき私は、ハーバード・ロー・スクールを上位5位の成績で卒業した素晴らしい経歴の男性と、ネジやボルトといった工具の訪問販売をしていた男性を同時期に採用したことがある。訪問販売の男性は、妻が出産間近なのでもう少しましな仕事に就きたいと応募してきた。また、「トレードについての思い入れはまったくありません。自分が無知だということも分かっています。とにかく一生懸命がんばります」と断言した。

 2人は一緒にトレーニングを始めたが、そのあとどうなったと思うだろうか。ハーバード大学卒業の男性は法律事務所に戻って、おそらく今では顧客から1時間500ドルの相談料を取っているのだろう。彼は優秀だったが、トレーダー向きではなかった。一方、訪問販売のセールスマンのほうは必死でトレーディングを学んだ。彼は夕方から夜にかけてと週末に工具を売って、昼間はトレーディングをしていたが、今ではフロアトレーダーとして年収が7桁に達している。  ハーバード卒の男性は何でも知っているという自負があり、新たに学ぶことができなかった。一方、訪問販売のセールスマンは平均的な人だったが、強い働く意欲と動機を持っていて、成功したいという強い気持ちからプライドを捨ててスポンジのように学べることをすべて吸収していった。そして、最後に笑ったのは訪問販売のセールスマンのほうだった。

 ACDシステムを学ぶときには、この訪問販売のセールスマンから得られた教訓を覚えておいてほしい。ACDシステムの手法を使って成功するためには、この手法を理解して応用しなければならない。しかし、それと同じくらい自分自身を理解し、これまでの知識をひとまず忘れることも必要となる。何かを学ぶときもそうだが、ここでもエゴ(思い入れ)を捨てて前向きに取り組まなければならない。それをACDシステムを学んでトレードを始めるときに計画の一部に組み込んだり、トレードに応用したりしてほしい。自分が何かを達成したくて、どのようにそれを達成するつもりで、うまくいったりいかなかったりしたときはどうしたいのかを知っておいてほしい。計画を立ててそれを守れば、トレーディングも人生もうまくいく。

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正誤表

94ページ中段、図3.6に誤りがございました。 [
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94ページの白抜き部分の1行目が抜けていました。お詫びして訂正いたします。



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