2000年11月20日発売/ISBN4-939103-31-5
定価 本体 7,800円+税/A5判 上製本 354頁
著者 トゥーシャー・シャンデ(TUSHAR S. CHANDE)博士
訳者 鶴岡直哉
本書で紹介されてるユニークな指標をチャートギャラリーエキスパート・プロに組み込むことができます。無料サンプル公開中
トゥーシャー・ シャンデ
原書
ドイツ語版
|
トレーディングで成功を収めるためには、完璧なトレーディング・システムが不可欠だ。
だがそれだけでなく、そのトレーディング・システムを安定的に運用するための効果的なシステムもまた必要である。それがなければ、トレーディングはストレスの元となり、最悪の場合は異常なまでに矛盾に満ちた行為になる。トレーディング・システムという名の「既製の」ブラックボックスはいつでも手に入れることができるが、長期間にわたってそれを忠実に運用し続けるトレーダーはほとんどいない。トレーダーにとっての最適なシステムは十人十色で、各々のトレーディング・スタイルに合わせた個人専用のシステムが必要だということで専門家たちの意見は一致している。
本書では、高名なシステム開発者であるトゥーシャー・シャンデが、あなたのトレーディング上のニーズに即した「実際的な」システムの構築法を示してくれている。最先端の技術、時間を超えた原理の数々、そして実践的な指針が刺激的に組み合わされた本書は、あなただけのシステムを作り上げ、それを運用し、分析と現実のギャップを埋めるための方法論を示してくれている。
シャンデはその重要な一歩として、あなた自身のトレーディングに対する考えをしっかり定めることを勧めている。彼によれば、「値動きに対するあなた自身の考え方が、トレーディング・システムの核とならなければいけない。それによって、そのシステムがあなたの個性を反映し、そうしたシステムを長期に用いることで成功を収める確率が高まる」のである。自らの考えの本質が完璧に把握できれば、それに即して効果的なシステムを作り上げることがで可能となる。
これらのシステムを構築・運用する手助けをするために、シャンデは基本原理から最新技術までを取り上げている。本書は見やすい図表や数々の例を用いて、トレードの基本、新しいシステム、資金残高曲線分析、マネーマネジメント、データスクランブルなどについての探求に及んでいる。
簡潔かつ完璧なる参考書である本書を読めば、基本概念から実際の運用まで、システムデザインを作り上げる過程の複雑さに徐々に慣れていくことができる。
「トゥーシャー・シャンデは、トレード未経験者から学者までが満足できる、明快かつ洞察力に満ちた技術を教示している。シャンデの非常に有益な手法を、すべてのレベルのトレーダーたちに取り入れさせたいほどだ!」
――チャールズ・ルボー(アイランド・ビュー・フィナンシャルグループ社長、『マーケットのテクニカル秘録』著者)
「『資金残高曲線の分析』の章だけでも、大手商社が何百万ドルも費やしてようやく見いだしてきた貴重な概念を会得することができる」
――マレー・A・ラジエロ・ジュニア(『フューチャー・マガジン』誌のチーフエディター、ラジエロ・アソシエイツ社長)「トゥーシャー・シャンデは定量分析の傑出した専門家であるが、本書は単に数字をいじくるレベルをはるかに超越している。システム構築に関するくだりは、特定のトレーディング・システムおよびそれを運用した場合の実用性の両方について、初めて完全な形で扱った1冊だ」
――ジョン・スウィーニー(『テクニカル・アナリシス・オブ・ストック・アンド・コモディティ』誌のテクニカル・エディター)「本書は向上心あふれるCTAにとって、トレーディング・システムを開発するための必読書である」
――リック・リースレー(ジャック・カール・フューチャーズ)
本書は大きく分けて2つのパートから構成されている。前半は開発と検証(過去データにおいてシステムがどのような結果を残したか)、そして基本的なルール、重要な問題、様々な新システムなどについての議論を中心に展開している。一方、後半はシステムが将来においてどのように機能していくかについて、特に純資産曲線、リスク管理、マネーマネジメントに焦点を絞りながら解説していく。ここでは、“データスクランブル”と呼ばれる新たな方法がキーとなる。これは、本当の意味でサンプル外検証を行うことが可能となる擬似データを無制限に作成する方法である。最終章では実際にトレーディング・システムを運用する段階で遭遇する実務上の問題に対するソリューションを提供することで、本書がカバーしている全内容をまとめている。
本書は一般的に言われるテクニカル分析の範囲を超えている。分析とトレーディングの間に存在する溝を埋める役割を果たしている。トレーディング・システムを包括的に扱っている。さらに新らしく刺激的なアイデアの数々、普遍的な原則、そして実際に機能するトレーディング・システムを開発するために不可欠な実践的ガイドラインを提供している。
“トレーディング・システムを開発するのに、トライアル・アンド・テラー(試し、そして恐怖を味わう)のプロセスを経ること以上に容易な方法などない”
前半で扱われているトピックは以下の通り。
1.トレーディング・システムをデザインする際の原則――この原則は6つの極めて重要なルールとしてまとめている。
2.システム・デザインの基礎――主要な10の問題点を挙げている。
3.新たなトレーディング・システムの開発――新たに7つのシステムを紹介し、それらについて詳細に述べている。
4.トレーディング・システムのバリエーションを開発する――既存アイデアをもとにした8通りのバリエーションについて解説している。
この前半部分を読み終えると、実際にそれらのシステムを使ってトレードする方法についての疑問が浮かび上がってくるだろう。そこで後半部分は以下のような構成となっている。
5.資金残高曲線分析――資金残高曲線の滑らかさに影響を与える要素について調べていく。
6.マネー・マネジメントに関するアイデア――これがリスク管理の出発点となる。
7.データ・スクランブル――必要となる合成データをすべて提供する。
8.実際にトレードするためのシステム(ガイドライン)――実践的な問題に対する解決策を提示する。
本書を読み終わるころには、自分のアイデアをもとに、有効なトレーディング・システムを開発する方法を身につけているはずである。本書は決定論的トレーディング・システムの開発を目指している。要するに、すべてのルールを明確に検証することができるのである。本書では2つの単純だが重要な理由から、エクスパート・システム、ニューラルネット、ファジー理論などを利用したトレーディング・システムについては触れていない。①より多くのユーザーは他のどのようなシステムよりも決定論的なシステムについて理解し、また容易に利用することができる、②決定論的システムを検証するソフトはリーズナブルな価格で手に入れることができる――この2つが組み合わされることで、本書は多くの読者に読んでいただけるものになるのである。
本書を通じて、多くのトレーディング・システムがシステムをデザインする芸術的な方法例や検証例として解説されている。しかし、これは何らこれらのシステムを利用することを勧めるものではない。私は、これらのシステムが将来において利益を上げるとか、本書の中の損益計算結果が同じように実現されるなどとは決して言ってはいない。実際、本書の中の計算結果が寸分たりとも間違っていないということも何ら保証していないのである。私は読者の方々が第3章の“リアリティーチェック”を読むことを強く勧める。その項では、過去の事象をもとにシステムを開発することの限界について指摘している。読者は本書の中で紹介されている数々の例を、自分でトレーディング・システムを開発する際に役立てる一種のインスピレーションとしてとらえるべきである。先物取引には損失を被るリスクがあるということを決して忘れてはならない。
トレーディング・システムとは、トレードを仕掛けたり仕切るための必要条件を定義するルールの集合体である。通常ほとんどのトレーディング・システムは、仕掛け、仕切り、リスク管理、マネー・マネジメントのルールといった多くのパーツが組み合わさってできている。
トレーディング・システムのルール自体は暗黙のルールから明確なルール、単純なものから複雑のものまで多種多様である。最も単純なルールとしては、「夏にセーターを買う」または「彼女が売ったら買う」といったものまで考えられる。トレーディング・システムについて定義すると、「実行可能なもの」ということである。売買シグナルを出すことから注文執行、リスク管理といったトレーディングにおいて直面するすべての問題を考慮しているのが理想的である。「効果的なシステム・デザインとはどのようなものか?」ということを思い浮かべるためには、トレードについて全く知らない人が実際にそのシステムを利用してトレードすることができるようになるか考えることがひとつの有効な方法となる。
一般的にすべてのトレーダーはシステムを利用している。大多数のトレーダーにとってシステムとはいろいろな形を取り得る。自由裁量、部分的に自由裁量を用いる方法、そして完全に機械化されたシステムなどである。システムによって利用するデータも5分足チャートや週足チャートなどと異なることも考えられる。また、システムは常に一定であるわけでも、簡単に検証することが可能なわけでもない。ルールには多くの例外が存在することもあるだろう。数多くの変数やパラメータを含んでいることもある。また、同じマーケットでも異なるパラメータの組み合わせを使用することも可能だし、マーケットごとにパラメータを変更することもできる。逆にすべてのマーケットで同一のパラメータを使用することもできる。
普遍的で唯一のトレーディング・システムなどというものが存在しないということは、既に明らかだろう。トレーダーというものは、みんな自分の個性に合ったものにシステムを作り上げていくのである。しかし、次項で比較がなされているように、自由裁量トレーダーと100%メカニカルなシステムトレーダーに境界線を引くことはできる。
表1.1はトレーディングにおける両極端、すなわち自由裁量トレーダーと100%機械的にトレードするシステムトレーダーを比較したものである。自由裁量トレーダーは、ファンダメンタル・データ、テクニカル分析、ニュース、業界紙、月の満ち欠けといったものに至るまで、トレードに有効だと思われるものはすべて利用しようとする。このようなトレーダーにとっての限界とは、彼らの想像力の限界と言える。一方、システムトレーダーはどんなことがあっても、隷属的ともいえる従順さをもってメカニカル・システムに従うのである。彼らはどんな変化・例外・修正・適応といったものも受け入れず、システムをあるがままのものとして利用することだけに集中する。
例外的に優れたトレーダーには自由裁量型のトレーダーが多い。恐らく彼らはすべてのメカニカル・システムトレーダーを上回る成績を残すことが可能かもしれない。彼ら自由裁量トレーダーの最も大きな武器は、各トレードを仕掛けるカギとなる変数を変幻自在に操れることであり、結果的にメカニカル・システムよりも巧妙に取引サイズを変えることができるのである。自由裁量トレーダーは、彼らがトレーディングに用いる変数の相対的な重要度をその都度変えることができるため、トレンドフォロー(順張り)とカウンタートレンド(逆張り)の2つの手法を容易に使い分けることができるのである。また、トレード機会に対する評価の変化に合わせて、5分間チャートから週足チャートへと分析の時間枠を即座に変更することもできる。
自由裁量トレーダーは、価格以外のマーケット情報をよりうまく利用することができる。例えば、ニュースやファンダメンタル情報をもとにベット(掛け金)のサイズを変えることもできる。彼らは常にリスクの大きさを把握し、それに沿ってメカニカル・システムトレーダーよりもうまくポジション・サイズを変更することができる。自由裁量トレーダーにとっては、ときどき現れる“ホームラン”にその結果の如何がかかっているといえる。しかし、恐らく平均的なトレーダーにとっては、メカニカル・システムトレーダーを目指すことで成功する確率を最大化することになるであろう。
メカニカル・システムトレーダーのゴールは、時間枠(例えば時間、日、週など)を決め、トレンドの状態を判断し、将来トレンドが発展していく方向を予測することである。そして予測したトレンドの方向にポジションを取り、損失をコントロールしながら利益を上げなければならない。ルールは明確、かつトレーディングにかかわるすべての面をカバーしている必要がある。例えば、ルールは仕掛けるポジションの大きさの決め方から、どのような注文方法を使うかまで明確に示されていなければならない。またマネー・マネジメント・ストップ(損切りポイント)をどこに置くかを指示する必要もある。トレーダーは、トレードの実行に関してどんな曖昧さも残さず、“自動的”にトレードする必要がある。
メカニカル・システムトレーダーは客観的で、比較的少ないルールを用い、損得にかかわらずトレードの結果に対して感情的にならないことが大切である。メカニカル・システムの最も顕著な特徴とは、そのルールが常に一定であるということである。システムはマーケットの状態にかかわらず、カギとなる変数を常に同じ方法で計算する。いくつかの指標はボラティリティの変化によってその分析(計算)期間が変わることもあるが、システム内のルール自体は一定で事前に分かっている。そのため、メカニカル・システムトレーダーは、背景にある出来事に合わせてルールを変更したり、より効果的にマーケット状況に合わせるためにポジション・サイズを変化させることもない。これは時と場合により、強みになったり弱みになったりする。システムトレーダーにとって最大の利点とは、自由裁量トレーダーより多くのマーケットをトレードすることができ、恐らく他の方法では実現できないリスク分散を図れる、ということである。
わずかに限られた裁量を用いてトレーディング・システムに個々の特色を出すことも可能である。例えば、ポジション・サイズを増やす基準を設定することもできる。ファンダメンタル情報を用いてもテクニカル情報を用いても構わない。明確でありさえすれば、常に一貫性を失わずにいられる。この議論の続きとして「なぜ、トレーディング・システムが必要なのか?」という疑問が生まれることは当然であり、次項でその問いに対する答えを明らかにしていく。
トレーディング・システムを使う最も重要な理由は、「統計的優位性」を得ることである。この言葉は頻繁に用いられるが、単純にシステムを検証し、勝ちトレードと負けトレードすべて一緒に計算した1回当たりの平均損益がプラスになっているということを意味する。このトレード1回当たりの平均利益がそのシステムを使用するのに十分値すると判断すれば、すなわちトレードにかかわるコストやスリッページを差し引いても十分な利益が出ているのであれば、平均してそのシステムは他のシステムよりも良い成績を残す可能性が高いということである。このような基準に関しては本書の後半で詳細に解説していく。
統計的優位性は“破産の確率”と呼ばれるもうひとつの統計値と関連している。この数値は小さければ小さいほど、ペーパー上ではあるが、マーケットで生き残り、成功する確率が高くなる。例えば、破産の確率が仮に1%だとすると、リスク管理に関する基準やシステムのパフォーマンスを測る他の基準を使っても、「そのシステムを用いて運用している取引口座がすぐに破綻してしまうようなことはない」といった結果を出すはずである。
こういった統計値に対して著者個人が最も懸念するのは、検証したシステムを何の例外も設けず、全く同じように使い続けることを前提としていることである。この前提は、現実にはかなり難しいことである。そのため実際の破滅の確率は、現実に破産するまではリスクであるのだが、事前の計算結果よりも高くなる可能性がある。こうした懸念は残るものの、しっかりとした統計基準を満たすシステムを開発すべきである。なぜなら、そうすることで成功する確率が非常に高まるためである。もちろん何の保障もないのだが、少なくともオッズ(確率=Odds、神のGodsとかけている)は自分についてくれるはずである。
多種多様なマーケットや時間枠の中で刻々と変化するマーケットの状態に耐え得るトレーディング・システムのことを堅牢であるという。堅牢なシステムであるということは、パフォーマンスがパラメータに使う数値に過度に依存しているようなシステム構造ではないということである。堅牢なシステムとは長い期間(およそ2年以上)を通して見る限り、パフォーマンスが最高、または最低になるようなものではない。堅牢なシステムはトレンドフォロー(トレンド追随型)システムであるケースが多く、損切りは素早く、利益は伸ばすといった特徴がある。これを“トップス・コーラ”(TOPS COLA)の哲学と呼ぶことにする。これは単純に“利食いはゆっくり”(Take Our Profits Slowly)と“損切りは一気に”(Cut Off Losses At once)の頭文字をつなげたものである。
移動平均線のクロスオーバーシステムと、値動きレンジのブレイクアウトシステムが堅牢なシステムの例として挙げられる。どちらも有名であり、バリエーションが広く利用されている。この種のシステムの典型的なトレード期間は20日以上となる。そこで筆者は、この種のシステムを“中期システム”と位置づけている。それらのシステムはトレンドフォローの特質を備えているため、トレンドが現れるときには利益を上げることが可能だが、トレンドのない状態では損失を被ることになってしまう。この種のシステムの典型的な勝率は35~45%であり、トレード1回当たりの平均利益は200ドルを超える。この種のシステムの詳細については後に触れる。
ここで特筆すべきことは、堅牢なシステムであれば、長期間にわたり数多くのマーケットで一貫して利用すれば、総じて利益を出すことが可能であるということ。正確にトレードが執行される限り、そうしたシステムは中期トレンドに沿ってポジションを建て、損切りは素早く、利を伸ばすということが保証されている。こういったシステムのバリエーションは数限りなく存在し、トレンドフォロー・システムを利用する割合はプロの投資家の間でもかなりの部分を占めているとみられる。
堅牢なシステムとは、マーケットの動向に対して予想をめぐらすものではなく、利用する変数やパラメータの数が限られ、マーケット動向に反応してパラメータの数値を変えるようなこともしない。それゆえ、システム内で利用される変数を少しいじった程度では、パフォーマンスが大幅に悪化するというようなこともない。そのようなシステムであればほとんどのポートフォリオにとって一考に値するであろうし、その信頼性も十分だろう。その上、そうしたシステムは実際に利用しやすい。
まず信頼しているトレーディング・システムが必要である。十分検証することで、そのシステムに必要なリスク管理戦略を決めることが可能となる。リスク管理戦略とは、売買シグナルが現れた時点で何枚取引するのか、また1枚当たりのリスクをいくらに設定するのかということを明確にすることを指す。さらに、値洗い益が数日間にもわたり膨らみ続ける場合、当初設定したストップ(逆指値の仕切り注文)をどのように変更するのかということもリスク管理戦略に含まれる。
個々の取引口座の目的に沿ったマーケット数やマーケットの種類を明確にすることも、システムには不可欠である。また、まだ取引を始めていない口座に対して、いつ、どのように取引を始めるかかということも明確に決めておく必要がある。
トレードプランを立てることこそがシステムを実行に移す上で最重要点となる。統計的優位性を証明された仕掛け、仕切り、リスク管理のルールを明確にしたものがトレードプランである。自分の感情やトレード実行の精度、さらにプラン通りに実行できなかったこととその理由を記録しておくべきである。また、各ポジションが抱えるリスクと仕切り条件をモニターし続けることも大切である。
最後に長期的な視野で物事を考えることが重要である。要するにたった1回だけトレードするのではなく、このプランに沿って今後100回トレードを行うといった考え方が必要だという意味である。そうすることで個々のトレード結果について一喜一憂しなくなり、忠実にトレードプランを実行に移すことに集中できる。この種の問題点やトレード実行に伴う問題点については第9章で詳細に説明する。
トゥエルズ、ハーロウ、ストーンによる著書の中には、ブレアー・スチュアート氏が1930年代に8922口座を対象に行った調査についての記述がある。かなり昔に行われた調査ではあるが、恐怖、希望、欲に対する人間の心理自体は、その後これまで60年ほど経た現在でもほとんど変わっていない。そのためスチュアート氏の調査は真剣に検討してみる価値がある。
スチュアート氏はその調査結果として、投機家によって犯される3つの過ちを指摘している。①投機家は利食いを急ぎ、損切りを遅らせる明確な傾向がある、②投機家は売りよりも買いを好む傾向があり、9年にわたる調査期間を通じ、価格はおおむね下落傾向にあったにもかかわらずである、③相場が弱いときに買い、強いときに売る傾向があり、これは投機家が値動きよりも値位置を基準にトレードすることを示している。
こうした結果を前述したトップス・コーラの哲学と比較してみるべきだろう。利を伸ばし、損切りを一気に行うことで、スチュアート氏の第一の指摘を回避することができる。2つ目として、トレンドフォロー型のトレーダーであれば、第2と第3の過ちも避けることが可能である。トレンドに追随する限り、中期のトレンドが現れるたびに買い、または売りのポジションをしっかりと建てるため、トレードが買いにばかり集中するということは避けられる。3つ目に、トレンドに追随するということは、値位置ではなく、値動きに沿ってトレードすることを意味する。
必要となるすべてのことが細部にわたって考慮されたレードプランを用意することによって、このビジネスで成功する可能性が生まれるのである。可能な限り、正確かつ一貫してトレードプランを実行に移すことだけに努力とエネルギーの大半を費やすべきである。このように、このビジネスで勝者になるためには“テクニカル分析”から卒業し、トレード管理や系統立ったトレーディングという新たなレベルに踏み込んでいく必要がある。
テクニカルトレーダーに対するアドバイスとして一般的なものは、例外に満ちあふれたルールを組み合わせるということである。そのようなルールは事前に検証し、その観察結果を数値化することが難しい。トレーディングにおけるアート(芸術)の部分をトレーディング・システムとして具現化することで“テクニカル分析”から脱却し、システムを実行することにみなさんが持つ最高の能力を割いていただくことを願っている。トレーディングとは走りながら分析することに他ならない。したがって、本書の目的はトレーディング・システムの開発とそれを実行に移すことの橋渡しとなることである。
|
|
|
|
|
|
システムトレード 検証と実践 |
システムトレード 基本と原則 |
強気でも弱気でも横ばいでも機能する高リターン・低ドローダウン戦略 |
世界一簡単なアルゴリズムトレードの構築方法 |
高勝率システムの考え方と作り方と検証 |
トレードシステムの法則 |