小口幸伸の「外国為替の考え方」
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ギリシャ問題とドイツ問題 05月06日
学校のクラスには優等生もいれば劣等生もいる。
だがこの差が大きいと教える方は大変だ。どこに照準を合わせたらいいかわからない。
下手をするとどちらからも不満が出て学級崩壊になりかねない。
理想的には劣等生が努力をして少しでも授業についていけるようにし、
優等生は劣等生の学力向上のために手を差し伸べてやればいい。
だが実際はなかなかそういうわけにはいかない。
優等生は劣等生を全く信頼しておらず、
助けても時間やお金の無駄だと心の中では思っているからだ。
劣等生のほうは勉強が性に会わず、もっと遊んだり楽しんだりする方が好きだからだ。
優等生との学力差に絶望感を抱いているが、心の中では彼らを軽蔑している。
昨年後半から表面化したギリシャの資金繰り問題は、EU自身では解決できず、
ついにIMFの支援を仰ぐことになった。
ユーロクラスの中では劣等生の代表はギリシャだが、他にも
ポルトガル、スペイン、アイルランド、イタリアもこのグループだ。
優等生の代表はドイツだ。ドイツの優等生ぶりは突出していている。
今回は国債の成績で顕著に表れた。
こうした図式はユーロ誕生前からも続いている。そのときは通貨で成績が表れた。
ユーロ誕生前欧州各国通貨は互いに一定の変動幅内で動くシステム(ERM)になっていたが、
ドイツマルクに対して、スペインペセタ、ポルトガルエスクード、
イタリアリラ、アイリッシュポンド、フレンチフランなどが売られるパターンが繰り返された。
特に激しかったのが90年代初めの欧州通貨危機のときで、
当局は市場介入や金利操作で変動幅を護ろうとしたが、
英国ポンドとリラのERMからの離脱、変動幅の拡大を余儀なくされた。
結局ドイツとその他の国々との経済のファンダメンタルズの格差が一定以上開き、
市場がそれに眼を向けた時、欧州は危機的な状況になる。その繰り返しだ。
今回ドイツは労働市場の改革の効果もあり、輸出競争力を高めた。
それで金融経済危機からの立ち直りが早かった。
一方でギリシャは公的部門のコストが高く、競争力は弱い。
外国からの借り入れで消費を増やしてきた。
ドイツはギリシャに資金を貸し、ギリシャはそのカネで
ドイツからモノやサービスを買っていた。
それが信用危機でギリシャの借金が困難になった。途端に経済が回らなくなった。
今回の危機はギリシャ問題とされるが、逆から見ればドイツ問題と見ることもできる。
ドイツとその他の国との格差が構造的になっていることだ。
フランスなどはドイツに賃上げを求めたが、ドイツは競争力をそぐような措置に応じることはない。
ユーロ圏には劣等生のほうが多い。
時には徒党を組んで優等生のドイツにもっと自分たちのことを考えろと文句を言う。
この優等生は劣等生たちの怠けぶりには業を煮やしている。
本音では最劣等生のギリシャにはクラスをやめてほしいと思っている。
基本から勉強し直して成績が上がればクラスに戻ればいいと思っている。
当面の資金繰りに目途が立てば債券市場は落ち着くだろうが、
競争力の格差が是正されない以上ユーロが危機を内包していることに変わりない。
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