ETFブログ −世界鏡−
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ETFとインデックスファンドのコスト比較または不都合な真実 08月04日
インデックスファンドを含む通常の投資信託に対するETFのメリットとして信託報酬等のコストが低いという点がよく挙げられます。ネット証券のETF紹介ページを見ても、コストの低さは必ず指摘されています。今回はコストの違いが主にどこから生じているのかを調べてみます。
ちょうどネット証券のサイト上で三菱UFJ投信の運営するインデックスファンドのキャンペーン情報が掲載されていたので、この銘柄を取り上げようと思います。キャンペーンが行われているのは三菱UFJ投信のインデックスファンド「eMAXIS」シリーズです。このシリーズの中には日経平均に連動するものから海外株式を連動対象とするものまであります。一方、三菱UFJ投信は「MAXIS」ブランドでETFを運営しており、この中にも日経平均への連動を目指した銘柄があります。名前がちょっと紛らわしいですが、シリーズ名の頭に”e”が付くかどうかが重要です。
早速、両銘柄の信託報酬(税抜)を較べてみましょう。
eMAXIS 0.40%
MAXIS 0.17%
信託報酬はなんと二倍以上の差があることが分かります。運用目標は両銘柄とも基準価額の変動率を日経平均株価の変動率に一致させることです。運用方式はeMAXISがマザーファンドを通して、ETFの方は直接投資といった違いがありますが、資産の大半が指数を構成する企業の株式に投資されている点も同じです(eMAXISは2〜3%程度の割合で先物も使用していますが)。運用方針が同じなのにどうして信託報酬にこれだけの差が出るのでしょうか。この点を探るため、目論見書で信託報酬の内訳をみてみましょう。
販売会社 委託会社 受託会社 合計
eMAXIS 0.175% 0.175% 0.05% 0.40%
MAXIS - 0.100% 0.07% 0.17%
信託報酬の違いを生み出している一番大きな要素が販売会社に対する分だということが一目瞭然です。次に大きいのは委託会社の取り分の差です。
三菱UFJ投信に限らず、どのアセットマネジメント会社でも傘下のインデックスファンドとETFの信託報酬の違いの大きな割合が販売会社の取り分から生じます。
インデックスファンドは主に証券会社や銀行を通して多数の個人顧客に販売されます。そうした販売行為に対する報酬に値するのが信託報酬における販売会社の取り分になります。一方、ETFでは(基本的には)数億円単位の現物出資が出来る機関投資家に販売先が限られることもあってか、信託報酬の中に販売会社に対する取り分は設定されていません。
国内ETFの普及がなかなか進まないのはこの点が大きく関係していると言われます。インデックスファンドを一度販売すれば、投資家がその銘柄を保有している間、販売会社である証券会社や銀行は一定の報酬を得ることが出来ます。一方、ETFにおいては販売会社の収入は販売手数料のみです。証券会社を通して個人投資家がETFを売買した場合も証券会社が得るのは売買委託手数料のみです。ですので、販売会社である証券会社や銀行としてはインデックスファンドを販売する方がメリットが大きくなります。こうして、インデックスファンドはキャンペーン等を行い積極的に販売するけど、ETFは商品ラインナップにこっそり加えておくだけで投資家に聞かれたら販売するという程度の扱いになってしまうのです。
でもネット証券は海外ETFの販売には積極的なのではと思う方もおられるでしょう。これには、国内証券会社を通して海外ETFを購入する場合、販売手数料に加えて為替手数料も必要となることが多いことから、証券会社としても十分な収入が見込めるという事情もあるように思います。
信託報酬の違いに話を戻すと、委託会社に対する報酬率にもかなりの差があります。信託事務に要する費用が別枠になっていることも考えると、販売会社向けの販売補助資料等の作成コストや多数の投資家の管理に要する人件費が嵩むといった点が反映されているのかもしれません。
以上をまとめると、ETFに較べてインデックスファンドの信託報酬が割高になるのは販売にかかる中間フィーの影響が大きいと言えるでしょう。投資家に利点の大きい商品を販売すると、証券会社としては収入が減少してしまう。そんな不都合な真実を抱える証券会社がETFの良さを積極的にアピールすることを期待するよりも、投資家の方からETFの普及を促す活動をしていくことが必要な気がします。
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