足立武志
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公認会計士、税理士、ファイナンシャル・プランナー(AFP)
株式会社マーケットチェカー取締役 1975年生まれ 神奈川県出身
一橋大学商学部経営学科卒業。資産運用に精通した公認会計士として、執筆活
動、セミナー講師等を通じ、個人投資家が資産運用で成功するために必要な知識や情
報の提供に努めている。主な著書に、『知識ゼロからの経営分析入門』(幻冬舎)ほか多数
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足立武志の「中長期投資家のための“超・実践的”ヒント集」
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JR東海の株価下落に思うこと 12月27日
JR東海の株価が、急激に下落しています。12月25日の終値113万円に対し、本日27日の終値は95万9千円と、たった2日で実に15%の下落率となっています。
株価急落の原因は、12月25日に発表された「リニア方式による中央新幹線建設」です。これによれば、5兆1千億円の投資資金を全額自己資金によりまかない、2025年度を目標に開通させるとのことです。
JR東海では、このリニア新幹線開通により、経常利益が2026年度で700億円、2026〜35年度の10年平均で1,400億円になると想定しています。これは、現状の経常利益を大きく下回る水準です。
ともかく、この発表により株価が急落しているということは、投資家がリニア新幹線の建設につきマイナスの評価をしているからに他なりません。経常利益が減少する見通しであることもマイナス評価の一因でしょう。また、いくら全額を自己資金でまかなうといっても、毎年のフリー・キャッシュ・フロー(=自由に使えるお金)を、借金の削減に充てずにリニア新幹線への投資に回すわけですから、財務体質の健全化が遅れることには変わりありません。
今回の株価急落で、私は以前ファーストリテイリング(ユニクロ)がバーニーズの買収をしようとした時のことを思い出します。買収の発表後、ファーストリテイリングの株価は下落をしました。このときは、UAEの投資会社との間で買収を争いましたが、ファーストリテイリングが優勢、というニュースが発表されると株価が下がり、逆にUAEの投資会社が買収価格を引き上げ、というニュースに対しては株価が上昇する、という有様でした。結局、ファーストリテイリングは、株価下落にも促されて、バーニーズの買収を断念したのです。
つまり、投資家は、ファーストリテイリングのバーニーズ買収に、「株価下落」という形で「NO」を突きつけたわけです。
企業が新技術、新製品を発表したり、買収を発表すると、多くは株価上昇という形で反応します。結果はどうであれ、その企業の将来の業績が向上する、と投資家が期待しているからです。ITバブルのときは、ITと全く関係ない企業がIT関連の子会社を設立する、と発表しただけで株価が暴騰しました。このときの反応は今思えば異常だったとはいえますが、投資家の「期待」はあったのは事実です。
しかしながら、今回のJR東海のケースのように、企業が将来の成長のために社運をかけて行う大プロジェクトに対して株価は大幅な下落という反応を見せたことは、少なくとも現時点では株主や投資家からは歓迎されていないのです。
企業の所有者は株主です。今回のJR東海の件では、株主が「株価下落」という形で、今回発表された計画に「不信任」を突きつけているわけですから、会社側も、もう一度計画を再検討してみてもよいのではないだろうか、と個人的には思います。
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過去のデータを過信するな 12月24日
昨日12月23日に、競馬の有馬記念が行われました。ファン投票1位で選ばれた3歳牝馬のウォッカはなんと大外16枠。実は、過去のデータでは、フルゲートの16頭だてで行われた有馬記念で、大外16枠の馬は優勝ゼロどころか、8位が最高着順なのです。
そしてレース本番。実際、ウォッカは3番人気とファンの期待を集めたものの、11着と惨敗に終わりました。「大外枠は勝てない」というジンクスを破ることはできませんでした。
実は、株式投資の世界でも、過去のデータを投資行動の参考にすることはよくあります。例えば、「12月の相場は安いが1月の相場は高い」とか、「戌年は株価上昇することが多い」という類のものです。こうした動きは、理論的に説明できないことから、「アノマリー」と呼ばれています。
でも、仮に、ここ10年間で1月は株価が毎回上昇しているとして、「12月の終わりに株を買って1月末に売れば必ず儲かる」といえるでしょうか。残念ながら、必ずしもそうなるとは言い切れません。
株式投資では、過去のデータは当然参考になります。しかし、それが将来にも必ず当てはまるとはいえないのも事実です。過去のデータは「過信」するのではなく「参考」に留めるようにすべきです。
もっと突き詰めてしまえば、「ここ数十年間の日本株の平均リターンが8%」というデータを用いて、将来の日本株への期待リターンを8%、同様に日本債券の期待リターンは過去のデータから5%・・・・と考えてポートフォリオを組んでいく行為自体、結構当てにならない、と思いませんか?過去は過去であり、その結果は将来を約束するものではないのですから。しかし、残念なことに多くのファイナンシャル・プランナーの資産運用アドバイスでは、将来得られると期待できるリターンを、過去のデータを元に計算しているのが実情です。
確かに、資産運用や株式投資の知識もなく、資産運用に時間も手間も掛けたくない、という人には、過去のデータをもとにポートフォリオを組んで分散投資していく方法しか選択肢がないのも事実です。
しかし、淡々と、安いときに買い、高いときに売る、この繰り返しを実践することができれば、自ずと満足の行くリターンがついてくるはずです。
折しも、今は「日本株の配当利回りが、長期金利を上回っている」状態です。1998年、2003年、2005年に起きた同様のケースでは、その後日本株は大きく上昇しています。過去のデータだけで判断すれば、今の日本株は割安という評価につながります。それが事実なら、まさに「安いときに買う」を実践できるのですが・・・。過去のデータを信じるかどうかは、皆さん次第です。
※来年、新しいメルマガにてコラム執筆を予定しています。詳細が決まり次第こちらのブログにてご案内させていただきますので、よろしくお願いします。
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あなたの株券が紙くずになる 12月21日
2009年1月(予定)以降、上場会社のすべての株券が「紙くず」になってしまいます。
これは、2009年1月より、上場会社の株券が電子化されることにより、従来発行されている上場会社の株券が無効になるためです。
購入等で取得した株券が、保管振替機構(ほふり)に預けられている場合は特段問題ありません。
しかし、上場会社の株券自体が手元にある場合は、要注意です。
その株券が本人の名義になっていれば、2009年1月以降、株券自体は無効になりますが、株主としての権利を確保するために自動的に「特別口座」が開設されます。したがって、株主の権利を失うことはありません。ただし、株式を売却する場合は、特別口座から、証券会社に開設した口座に移し替えた上でないと売却できません。
株券が他人の名義になっている場合は早急に名義書き換えをする必要があります。仮に、名義書き換えをせずに株券の電子化を迎えると、場合によっては株主としての権利自体が失われることになりかねません。
日本証券業協会によれば、2007年3月末時点で479億株分の株券がどこかで眠っているそうです。
特に、高齢者の方は、ほふりに預けず、ご自身の手元に株券を残しておく方が多いので注意が必要です。実際、相続が発生した場合、被相続人の貸金庫に大量の株券が保管されていたということはよくあることです。
これを機会に、是非、ご家族の皆さんも一緒に、タンスの奥や貸金庫などに上場会社の株券が眠っていないか再確認することをお勧めします。
詳しくは、下記の日本証券業協会のホームページなどをご参照ください。
http://www.kessaicenter.com/densi/index.html
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「株安=円高」の図式が崩れる日 12月18日
2007年の日本の株式市場は、3月、8月、11月と何度も急落に見舞われました。そして、ここ最近までの特徴といえば、為替相場と株価との高い連動性が挙げられます。
つまり、円安になれば株価は上がるが、円高になると株価が下がる、という図式です。例えば、3月、8月、11月のいずれの急落時も、株価の下落と円高とがセットで発生しています。
ところが、先週(12月10日の週)から今週にかけて、これまでとは違った動きが生じています。日経平均株価が短期間で1000円以上下げているにもかかわらず、為替相場は逆に円安基調にあったのです。
このことは、実は今後の日本の株式市場を占う上で非常に重要なポイントとなる可能性があります。つまり、将来的に、「円高=株高」の動きに変わっていくことが十分に考えられるのです。
2007年夏ごろまでの相場の牽引役は、輸出関連の企業など、円安のメリットを享受できる企業が中心でした。しかし、株式市場においては、いつまでも同じ業種・テーマで株が買われることはありません。鉄鋼、海運、非鉄金属、商社、自動車など、ここ何年かの間上昇を続けてきた業種・銘柄とは異なる業種・銘柄が中心になる時が近づいているはずです。そのポイントは、「円高が業績に及ぼす悪影響の有無」にあるとみています。
変化の兆しは至るところに現れ始めています。最も端的に現れているのは、9月下旬から1ヶ月で東証マザーズ指数が50%以上も上昇したように、新興市場の銘柄です。新興市場の銘柄は、日本国内で事業を展開している企業が多いですから、為替市場が円高になっても業績の影響を受けないわけです。
今後、もし本格的に「株高=円高」の図式に変化していくとするならば、当然、円高がメリットになる業種(=原材料を大量に輸入するような業種)や、円高が業績に影響を及ぼさない銘柄(=例えばいわゆる内需株や新興市場銘柄)が買われると考えるのが自然です。
世界中が株高に沸く中、2006年、2007年と完全に取り残された日本の株式市場。しかし、客観的に見ても、かなり株価に割安感が出ているのも事実です。そして、株式市場での中心銘柄が、今までとがらっと変わる直前のような、そんな空気も感じられます。それを見極めるためには、「株高=円高」になったときに、どのような銘柄が買われるのかを注意深く観察することが重要です。
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「金持ち優遇の証券税制」は日本国民にとってプラス 12月17日
12月13日、自由民主党が平成20年度税制改正大綱を発表しました。
個人投資家にとって最も気になる証券税制は、譲渡益および配当金とも、10%の軽減税率を上限付で2年間(平成21年、22年)延長するという、なんとも中途半端な結果になりました。
平成21年、22年は、上場株式等の譲渡益は、500万円以下までは10%の税率で、それ以上は20%の税率となります。また、上場株式等の配当金の税率は、100万円以下までは10%、それ以上は20%です。
このように、上限付きで軽減税率を認めるという、どっちつかずな結末になったのは、参議院で過半数の議席を持つ野党からの「証券税制の軽減措置は金持ち優遇だ」という批判に配慮したからだと思われます。
確かに、株式投資にまでお金が回らないという家計も多くあるでしょうが、解散総選挙をにらんで「金持ち優遇はNO」という姿勢をアピールして、多くの票を獲得したいというのが民主党をはじめとした野党の思惑なのかも知れません。
しかし、「証券税制の軽減措置廃止」となれば、株式投資に向かう資金が減少することも大いに考えられます。そうなれば、日本の株式市場が長期的に低迷するかも知れません。
実は、「日本国民は全員が株式投資している」ことはご存知でしょうか。つまり、日本国民が支払っている国民年金や厚生年金の保険料は、将来の年金支給に備えて、日本株や、国内債券、外国株式、外国債券などで運用されているのです。これは、私たちは将来の年金受取のために、間接的に株式投資や資産運用をしているのと同じことです。
いまや、公的年金は将来の給付水準引き下げや、支給開始年齢の先延ばしの懸念だけでなく、「宙に浮いた年金記録」などの問題も多発し、崩壊寸前の様相を呈しています。
そんな中、国民から集めた保険料を運用で殖やさなければならないのに、日本の株式市場が低迷を続けたなら、年金制度そのものが本当に成り立たなくなるかもしれません。
そうなれば、本当に困るのは、老後の生活を年金に頼らざるを得ない大多数の国民です。
ちょっと視点を変えてみれば、実は証券税制の軽減措置は、個人投資家のみならず、日本国民としてみんなが「賛成」すべきものなのです。
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「証券税制の優遇措置廃止」はこうして乗り切ろう 12月03日
先日の新聞にて、「原則として証券税制の優遇措置は延長せずに撤廃」という記事が掲載されていました。
株式の売却益や配当金の税率は原則として20%です。ただし、上場株式の売却益は2008年末まで、配当金や株式投資信託の分配金は2009年3月末まで、それぞれ税率を10%とする優遇措置が設けられています。これが廃止される公算が高くなっているのです。
しかし、個人投資家からすれば、優遇措置の廃止は実質的な増税であり、大きなマイナスの影響があります。現在10%の税率が20%に戻れば、税引後の実質的なリターンが10%も減ることになってしまいます。
そもそも、日本政府が掲げる「貯蓄から投資へ」というスローガンに完全に逆行している、優遇措置の廃止です。あるアンケートによれば、税率が10%から20%になったら株式投資をやめる、あるいは株式投資をこれまでより手控える、という回答が50%を超えていたそうです。これでは逆に個人投資家の株式投資離れが加速してしまいます。
実は、株価と景気というのは密接に関係しています。景気は国民の心理状態にも大きく影響されるからです。株価が上昇すれば、国民の気分も良くなり、景気も良くなるのです。おそらく、上場株式の売却益や配当金の税率をゼロにしたならば、株価は大きく上昇、景気も急回復し、国にとっては逆に税収が増えることになるでしょう。
個人投資家や証券界などから多くの反対意見があるにもかかわらず、優遇措置を廃止するということは、多少うがった見方をすれば、日本株を安く買い仕込みたい勢力からの圧力がかかっているのかもしれません。優遇措置の廃止によって、個人投資家からの大量の売りで株価が下がれば、日本株を欲しい投資家からみれば好都合です。
そう考えれば、いくら個人投資家が「優遇措置廃止反対」と声高に叫んでも、何も変わることはないといえるでしょう。そんな時は、我々個人投資家としても気持ちを切り替えなければなりません。つまり、優遇措置が廃止されることを前提として、それでも株式投資で利益を上げる方策を考えるべきなのです。
といっても、そんなに難しく考えることはなく、「優遇措置が廃止されても株式投資をやめない」、そして「優遇措置廃止に伴い株価が大きく下がったところで安く買い仕込む」ということを実行すればよいのです。たとえ税率が20%になったとしても、安く買っておくことさえできれば、税率上昇の影響を上回るキャピタルゲインを得ることが可能なのですから。
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