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足立武志


公認会計士、税理士、ファイナンシャル・プランナー(AFP)
株式会社マーケットチェカー取締役 1975年生まれ 神奈川県出身
一橋大学商学部経営学科卒業。資産運用に精通した公認会計士として、執筆活 動、セミナー講師等を通じ、個人投資家が資産運用で成功するために必要な知識や情 報の提供に努めている。主な著書に、『知識ゼロからの経営分析入門』(幻冬舎)ほか多数

足立武志の「中長期投資家のための“超・実践的”ヒント集」

表面上の「高配当利回り」に注意

03月25日
今年の3月決算の権利付最終売買日は、本日3月25日です。この日までに3月決算の銘柄を取得すれば、期末配当や株主優待などの権利を得ることができます。

昨年夏から続く株価の大幅な下落により、株価で1株当たり配当金を割った「配当利回り」が全体的に上昇しています。東証1部銘柄の平均値でも、長期国債利回りを大きく上回る状態で、銘柄によっては配当利回りが4%、5%に達するものも出ています。
しかし、この配当利回りに使用される1株当たり配当金は、あくまで「予想値」であることに、十分な注意が必要です。

例えば、丸三証券は、2006年3月期に110円、2007年3月期に70円の1株当たり配当を出した実績から、2008年3月期も、2007年3月期と同額程度の、多額の配当が期待できるものとして、株価が形成されていました。
ところが、予想配当70円で計算した配当利回りは8%近くに達していました。もし、確実に70円の配当金が受け取れるのだとしたならば、配当利回りが8%になるまで株価が下落することは考えられません。
つまり、多くの市場参加者は、丸三証券の今期の配当は、70円よりかなり少なくなると予想していたのです。

そして、3月14日付けで会社側から、2008年3月期の配当は15円とするとの発表がありました。
これを受けて株価は急落し、発表前の886円から、連続ストップ安を交え、一週間後の3月21日には545にまで下落しました。

こうした事実から以下のことがいえます。
・「配当利回り」の算出に使われる1株当たり配当金の額は、予測値に過ぎない
・したがって、実際には「配当利回り」よりはるかに低い利回りしか得られない可能性がある。
・「配当利回り」が他に比べて明らかに高い銘柄は、投資家が、実際の配当が予想値よりも低くなる可能性が高いと予測している表れである。
・そのため、表面上「配当利回り」が高いという理由でその銘柄へ投資した場合、実際の配当が予想値より低くなることが明らかになった時点で、期待していたよりも少ない配当しか得られないばかりか、株価の下落による損失を被る恐れがある。

高い配当利回りを鵜呑みにして飛びつくと、結果的に、配当の減額や株価の下落により、大きなダメージを受けることにもなりかねません。
配当利回りが他に比べてかなり高いような銘柄は、業績変動が大きく配当金額が安定しないだけでなく、業績の急速な悪化に伴う配当の大幅な減額などにより株価自体が大きく下落するリスクもあります。
配当利回りを重視して銘柄選びをするのであれば、業績が安定しており、過去の実績からも配当金の額が安定している銘柄を選びましょう。ただし、そうした銘柄の配当利回りは良くて2%台後半でしょう。
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リスクを抱え込むな

03月23日
月曜日(3月17日)に、日経平均株価は11,600円台まで下落しました。日経平均リンク型ファンド(リスク限定型ファンド)のノックインも新たに発生した模様です。

代表的な「日経平均リンク型ファンド」の仕組みは、次のようなものです。
一定期間、当初定められた価格(=ノックイン価格)を割り込まなければ元本の100%が償還される一方、ノックイン価格を一度でも割り込めば、償還価格が日経平均株価に連動し、大幅な元本割れの恐れもある、という仕組みのファンドです。

このノックイン価格は、一般的にファンド設定時の日経平均株価から3〜4割ほど低い価格に設定されます。これを2〜3年程度の期間、割り込まなければ元本が全額償還されます。
特に株式市場が堅調なときは、2〜3年の間に日経平均株価が3割も下落することなど考えもつかない個人投資家が多いようです。
しかし、過去の株価の値動きからみれば、2〜3年で日経平均株価が3割下落することは結構頻繁に発生していることが分かります。

さて、筆者が「日経平均リンク型ファンド」のデメリットとして考えるのは、リスクが高い割にリターンが低いということももちろんですが、第一には、「リスクを丸ごと抱え込んでしまう商品である」という点があります。

この日経平均リンク型ファンドは、原則として解約できません。解約できたとしても、大幅な元本割れの状態での解約になります。
つまり、日経平均リンク型ファンドに投資した投資家は、その後の日経平均株価がノックイン価格割れにならないことを「祈る」しか成す術がないということを意味します。

個人投資家が資産運用を行うに当たり、株価などの大きな下落による大損失を防ぐために最も有効なのは、株式などリスク商品に投資している資金を現金化することです。「危ない」と感じたら、一旦現金化し、しばらく様子を見た上で、大丈夫そうであれば改めて投資をすればよいだけのことです。
大損失のリスクを感じたときに、損失が膨らむ前に現金化して「リスクから逃げられる」ものに投資しておくことが、リスクをコントロールするためには重要です。
リスク管理の観点からは、中途解約できない商品はなるべく手を出さないこと、仮に手を出すとしても、投資可能資金の一部にとどめておくこと。これが、思わぬ大損失を避けるための鉄則です。
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株安・円高・債券高の逆回転を見逃すな

03月14日
本日(3月13日)の日本の株式市場は、またも大きく下落し、昨年来安値を更新しました。さらに、為替市場では、12年ぶりに1ドル=100円割れとなる円高水準になりました。

1ドル=100円手前の水準は、これまで何度も円高の抵抗ラインとして機能してきたので、今回も一旦は100円手前で円高が一服するかと思いましたが、あっさり100円割れになってしまいました。

さらに、日本の長期国債は買われ続け、利回りは2年8ヶ月ぶりに1.3%割れになりました。

興味深いのは、現在、「株安」、「円高(というよりもドル安)」と「債券高」が同時に起こっていることです。さらにこれらの動きに歩調を合わせるように原油高にもなっています。つまり、市場に影響力のある大口の投資家の現在の行動パターンとして、株式を売り、ドルを売り、債券を買い、原油を買っていることが想像できます。

そもそも、マスコミで騒がれているほど円高は悪いことではなく、原油をはじめドル建ての資源、材料を安く輸入できるという面ではプラスに働きます。さらに、今回の円高ドル安は、「円高」よりも「ドル安」の傾向が強いものとなっています。現に、対ユーロでは、ほとんど円高になっていません。つまり、ヨーロッパへ輸出する分には円高の悪影響は受けずに済むのです。

ですから、個人的な感覚としては、そこまで円高(というよりドル安)を悲観する必要はなく、株価も過剰反応しすぎと思います。
しかしながら、今、世界中の市場を動かす大きな資金の流れは、「円高・ドル安」、「債券高」、「原油高」であれば、日本株は下落するという図式になってしまっています。

とはいえ、原油価格は急速に上昇し、ユーロ・ドルの為替レートは史上最高の水準にまでドル安が進行しています。さすがにこの動きは行き過ぎのように感じます。どこかで円高・ドル安や原油高の動きが逆に回転するはずであり、そうなれば、今まで下げ続けていた日本株も上昇することになります。

日本株は下げがとまらぬ泥沼の様相を呈していますが、遠くない将来、日本株も反発局面に入るでしょう。そのサインは「ドル高」、「原油価格下落」そして「債券安」になるはずです。
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旬を過ぎた銘柄には手出し無用

03月09日
3月に入り、日本の株式市場も再び荒れた展開になってきました。日経平均株価も、1月の安値まであとわずかの水準まで下落しています。

一方、個別銘柄に目を向ければ、株価の動きはまちまちです。中でも最近弱い値動きなのが新日鉄です。
新日鉄の株価は、日経平均株価が安値をつけた1月下旬以降も下げ続け、先週末(3月7日)には479円にまで下落しました。
昨年7月の高値が964円ですから、約7ヶ月で株価は半値になった計算です。

ここで投資家が陥りやすい罠として、「高値おぼえ」というものがあります。つまり、高値から短期間で半分になったので、そろそろ反転上昇するだろう、という考えのもと、その株を買ってしまうというものです。
その買いが、単にリバウンド狙いで、1割・2割とれればよし、というのであれば、それも1つの戦略です。
しかし、長期保有目的であるならば、このような、当面の天井をつけたと思われる銘柄に手を出すことは考え物です。
100%当面の天井をつけたとはもちろん言い切れません。でも、2002年の安値から5年近く上げ続けていたことや、高値がバブル時の水準にまでなったこと、業績自体も頭打ちになってきていることを考慮すると、当面の天井をつけた可能性は高いと思います。

株式投資では、「資金効率」も重要な点になります。特に、中長期投資であれば、当面の天井をつけ、しばらくの間高値更新の見込みが低い銘柄は避けるべきです。
最近は、「新たな息吹」も出始めています。三洋電機をはじめ、OKI、パイオニア、東光など、1月下旬の安値まで、何年も低迷したあと、強い動きを維持している銘柄もいくつかあります。

株式市場では、同じ銘柄がいつまでも上げ続けることはありません。何年も上げ続けて来たような「旬の過ぎた銘柄」より、何年も株価が低迷を続けた銘柄の方が、今後の上昇局面ではより高いパフォーマンスをもたらしてくれることでしょう。
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