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久保田博幸


82年、慶応義塾大学法学部卒業後、国内の証券会社に入社。86年、国債現物および国債先物取引のディーリングを担当。 89年、ニューヨーク研修を経て、シリーズ3(米国先物オプション外務員資格)を取得する。94年、証券アナリスト検定会員となる。 これまで国債現物・先物ディーリングに10年以上従事、現在は株式会社フィスコでチーフアナリストとして、国債を主体とした債券相場の動向と日銀の金融政策などの分析を行っている。

久保田博幸の「債券投資日記」

「日本の夜明けは勘違い」

03月31日
28日のフィナンシャル・タイムズの社説は、日本の夜明けは勘違いだったとの内容となっていた。昨年8月の選挙で国をぬかるみから引っ張り出してもらうため、有権者は民主党にチャンスを与えた。そして、日本の有権者には実はもう一つ別の思惑があったとし、それは二大政党制の誕生である。

つまり、期待以下の働きしかしない政権を追い出す機会を、有権者に与える仕組みを期待していた。ところが、権力という接着剤を失った自民党が分裂の危機に瀕し、かつてないほど細分化の度合いを深め、おまけに与党の民主党も相変わらず、政治思想的にごたまぜの状態で、それが混乱に拍車をかけていると指摘している。

さらに政治思想がくっきり鮮明化することを期待する人もいたが、それは日本には不向きなことなのかもしれないともFTは指摘している。日本がほかの民主国家と比べて人種や宗教の分断、ひいては階級の分断さえ少ない、合意重視型の国であるとしているが、このあたりは外から指摘してもらわないと、なかなか気付きにくい部分でもある。

日本において政党は、社会福祉対健全財政、近隣諸国との友好対強固な日米同盟などといった明確な政治思想の違いをもとに成り立っているというより、個人的な人間関係や、力と金の取り引きをもとに成り立っているのだと指摘しており、それが大きな問題であることは確かであろう。

日本の経済力が心許ないことになりつつある時、そうした政党の在り方は、断固とした決断力あふれる行動をとるには不向きだとFTは指摘していたが、この指摘はかなり的を射たものであろう。
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「EUとIMFによるギリシャ支援」

03月30日
欧州連合(EU)の欧州単一通貨ユーロ圏16カ国の首脳会合が25日、ベルギーのブリュッセルで開かれ、緊急時のギリシャ支援について二国間融資と国際通貨基金(IMF)の援助を組み合わせた支援の枠組みを決定した。

EU加盟国ではハンガリーやラトビア、ルーマニアが金融危機でIMFの融資を受けたが、ユーロ圏の国がIMFの融資を受けることになれば、1999年のユーロ導入以来、初めてとなる。

支援策では、ギリシャが4〜5月に、総額220億ユーロ(2兆7100億円)の国債を自力で償還できない場合、ユーロ圏16カ国による2国間融資と、IMF融資を併用し実施するという内容。6カ国は全融資額の3分の2を負担、IMFは3分の1を引き受ける。16カ国のそれぞれの負担割合は、欧州中央銀行(ECB)への出資比率に応じて決める(産経新聞)。

ただし、実際の発動には欧州中央銀行と欧州委員会が是非を判断し、ユーロ圏16か国の全会一致の決定が必要となり、補助金と受け取られないような比較的高い金利を適用との厳しい条件もつけられている(日経新聞)。

単一通貨で為替調整が不可能であり、国を跨ぐ中央銀行の存在による金利調節もできない状況下、こういった枠組みを取らざるを得なかったが、なにはともあれこれによりギリシャの財政問題への懸念はいったん後退した。

しかし、フィッチはポルトガルの格付けをAAからAAマイナスに引き下げるなどしており、英米などを含めての財政問題は今後の大きな課題となりうる。ギリシャについては債務規模を隠蔽するなど財政問題そのもの以外の問題を抱えていたことで、やや特殊な事例との指摘もあるが、それでも根底にはリーマン・ショック以降の先進諸国の財政出動による財政悪化が影響していたことも確かである。
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「世界的にソブリンリスクが意識される」

03月25日
世界的に債券市場の様子が少しおかしくなってきた。格付会社のフィッチは、ポルトガルの格付けをAAからAAマイナスに引き下げた。見通しはネガティブに。これまでだったら、これにより質への逃避で米国債やドイツ連邦債は買われると思われるが、昨日は米国債は反対に大幅に下落し、この余波でドイツ連邦債も下落した。もちろんポルトガル国債も下落している。

米国債の大幅続落の原因は、5年国債入札の結果が不調と受け止められたことによる。落札利回りが2.605%と入札締め切り時点での入札前取引での利回り2.560&近辺を大きく上回った。応札倍率は2.55倍と前回の2.75倍を下回り、昨年9月以来の低いものとなり、間接入札の比率も39.7%と前回の40.3%を下回り、昨年7月以来で最低を記録した。

間接入札の比率の低さの要因は、年度末控えて日本の機関投資家が応札を控えたからとの見方もあるようだが、それはどうであろうか。一方、米政府が中国に対する人民元切り上げ圧力を再び強め始めたことが影響しているとの指摘もあった、さらにソブリン債を保有するリスクが意識されたとの指摘もあった。

米債券市場では前日の2年債入札の結果も低調なものとなっており、今日の7年債入札への警戒感も強まり、米10年債利回りは前日比0.17%高い3.85%、2年債利回りは同0.06%高い1.09%となった。前日に続いて、昨日も10年物の米ドルスワップ金利が米10年債の利回りを一時下回る場面があった。スワップスプレッド・ポジションのアンワインドで米国債の売りに拍車をかけた側面もあったようである。

いずれにせよこの米債の下落を受けて、ドイツ連邦債10年物利回りも一時3.1%台に上昇した。そして、イギリスでは25億ポンドの予算案を発表し、日本と同様に本格的な財政再建は先送りされている。

世界的にソブリンリスクが意識され、当然ながら日本国債も例外とはなるとは考え辛い。日銀の追加緩和がアンカーとなり中短期債はしっかりするとみられるが、長期・超長期債にはあらためて売りが入る可能性がある。
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2009年12月末現在の国債保有者別残高

03月25日
3月23日に日銀が発表した2009年10〜12月資金循環勘定速報によると、家計の金融資産は2009年9月末(速報値)の1439兆4837億円から、2009年12月末は1456兆円3740億円となった。前期比で増加するとともに、年末ベースでは3年ぶりの増加となった。

この家計の金融資産のうち、株式(出資金を含む)は前年末比16.2%増の96兆6933億円、投資信託については前年末比10.8%増の53兆9435億円となっていた。

2008年12月末の日経平均は10546.44円、そして209年12月末は10824.72円と上昇した。

2009年12月末時点での家計の現預金は803兆5149億円、保険準備金は216兆1092億円、年金準備金は181兆4278億円。

この資金循環勘定速報をもとに 2009年12月末現在日本における国債所有別内訳を算出してみた。

国債の残高そのものは、682兆7125億円となった。海外投資家のシェアは、5.2%と9月末の5.8%からさらに減少し、金額ベースでは3兆7739億円の減少となった。海外投資家は引き続き日本国債においてもポジション解消の動きを強めたとみられる。家計の国債全体に占めるシェアは5.1%となり、9月末の5.2%から小幅減少。

9月に比べ全体の残高が増加したが、最大の増加額となったのは民間の保険・年金で9月末比で3兆4557億円増加した。次に投信など金融仲介機関が2兆7814億円の増加、銀行など民間預金取扱機関が2兆1947億円の増加となった。減少で目立つのは海外投資家の3兆7739億円の減少。またシェア順位では投信など金融仲介機関がシェアを伸ばし、海外を上回った。

全体に占めるシェアとしては、民間預金取扱機関が254兆0992億円で37.2%、民間の保険・年金が168兆0599億円で24.6%、公的年金が79兆1085億円で11.6%、日本銀行が50兆2241億円で7.4%、投信など金融仲介機関が36兆2270億円で5.3%、海外が35兆6664億円で5.2%、家計が35兆0250億円で5.1%、財政融資資金が1兆1219億円で0.2%、その他が23兆1805億円で3.4%となった。
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「債券先物で11月9日につけた137円29銭が目先の下値目処か」

03月19日
10年債利回りは18日に1.370%まで上昇し、2月4日につけた1.380%が視野に入ってきており、ここを抜けて1.4%台に乗せる可能性がある。18日の債券先物の急落の背景には、追加経済対策論が浮上との報道もあった。6月に向けて財政再建に向けた目標をまとめるべき時に、このような追加対策への思惑が出ると、たとえ国債増発は回避されても財政規律の緩みが意識されかねず、それが債券売りに繋がる懸念がある。

3月期末を控えて銀行や証券などは動きづらくなる。利付国債の入札も25日の2年債入札が予定されている程度であり、国内投資家は様子見気分を強めてくる可能性がある。国内投資家が動きづらい中、海外ファンドなどによる先物主導での仕掛け的な動きが入り、波乱含みの展開となる可能性がありうる。もし、仕掛け的な動きが入るとすれば売りか。

ここにきて日本の経済は緩やかな回復基調を続けており、これは米国なども同様である。4月1日に発表される日銀短観などでは思いのほか強い数字が出てくる可能性もありうる(大企業製造業DI予想はマイナス14、前回はマイナス24)。ここにきての日経平均株価も堅調地合となっており、11000円台の回復もありうる。日銀の追加緩和策が実施されても債券への買いは限定的で、むしろ戻り売りが入るなど、どちらかと言えば売りに傾きやすい状況にある。債券先物で11月9日につけた137円29銭、長期金利で1.45%あたりが目先の下値目処か。
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「Debt-to-GDP ratio」

03月17日
昨年末に出席させていただいた「平成22年度予算等に関する説明会」大串政務官が何度も使っていた用語が、Debt-to-GDPであった。Debt-to-GDP ratioとは政府債務の対GDP比である。

菅直人副総理兼財務相は3月16日の参院財政金融委員会で、今すぐプライマリーバランスの目標を立てるにはやや早すぎるとし、まずは(公的債務残高の)GDP比の安定を目指すと述べた。ということは、6月に向けてまとめる財政再建に向けた目標は、公的債務残高の対GDP比ということになるのであろうか。

ユーロ導入時に締結された財政安定化成長協定では、ユーロ導入後のインフレ抑制のために、参加各国の財政赤字を対GDP比3%、政府債務残高を同60%以内に抑制することが定められている。この財政赤字の対GDP比3%、政府債務残高を同60%というものがひとつの目安になる。

OECDの2009年12月時の「Economic Outlook 86」によると2009年の対GDP比の財政赤字は日本が8.3%、米国が11.6%、英国が13.3%、ドイツが5.3%などとなっている。また、1997年に財政黒字となったカナダも2009年には4.8%の赤字となっている

単年度で見た対GDP比の財政赤字では主要国で最悪とされる英国でも、やはり財政再建策が大きな焦点となっている。2010年以降の4年間で財政赤字の対GDP比率を半減させることを目指しているが、財政再建への道はかなり厳しい。

2009年度の債務残高の対GDP比をみると、日本は189.3%となっており、イタリアの127.0%をも大きく上回りG7諸国の中で最悪の水準となっている。米国や英国も急速に悪化し、米国は83.9%、英国は71.0%となってはいますが、日本と比較すればまたまだ少ない。

経済協力開発機構(OECD)の2009年12月時点でのまとめによると、日本の一般政府ベースの「純債務」のGDP比率は2010年に104.6%と初めて100%台に乗せるとともに、イタリアの100.8%を抜いてG7諸国中最悪となった。他のG7諸国では米国が65.2%、英国が59.0%、ドイツが54.7%、フランスが60.7%、カナダが32.6%。注目されているギリシャは2010年は94.6%だが、2011年予測では101.2%となり100%台入りする。

すでに日本は総債務残高のGDP比率が1999年に先進国中最悪となっていたが「純債務」でも最悪となり、日本の財政が極めて深刻な状況にあることをあらためて示した格好となっている。

国債と借入金、政府短期証券を合わせた国の債務残高が2010年度末で、973兆1625億円に上る見通しなども示されているが、果たして6月に向けてまとめる財政再建に向けた目標はどの程度の数値になるのであろうか。

ユーロの財政安定化成長協定における数値である財政赤字の対GDP比3%、政府債務(純債務ではなく総債務)残高の対GDP比60%が目安になるが、さすがにすでに200%近い政府債務残高の対GDPを60%に抑えるのはかなり難しい。目標としては英国の目標値と同様現状の半減となる財政赤字の対GDP比4%、政府債務残高の対GDP比100%あたりが目標値の目安となるのではなかろうか。それもかなり厳しい数字であることに違いはないが。
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「日銀の審議委員に前東京電力副社長の森本宜久氏」

03月15日
政府は12日に日銀の審議委員に前東京電力副社長の森本宜久・電気事業連合会副会長を起用する人事案を衆参両院に提示した。衆参両院の同意を得れば7月1日付で就任する。今月末に、水野前委員の後任として宮尾龍蔵神戸大経済経営研究所長が就任することで、7月1日からは金融政策を決める政策委員は定数の9人がそろうかたちとなる

これにより政策委員の新体制は産業界出身3人(中村清次氏、亀崎英敏氏、森本宜久氏)、学識経験者3人(西村清彦氏、須田美矢子氏、宮尾龍蔵氏)、日銀出身2人(白川方明氏、山口廣秀氏)銀行1人(野田忠男氏)の構成になる。

今回の人事により、市場に通じているストラテジストやエコノミストらが起用されなかったことはやや気掛かりである。今後は財政悪化による債券市場動向などが金融政策に影響を与えることも多くなると思われる。その際の日銀の舵取りには市場との対話も欠かせないものとなり、それには市場の動向に精通した委員の存在が欠かせないのではなかろうかと思うのだが。
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「ギリシャのデモはいずれ日本でも」

03月12日
ギリシャ全土での官民の二大労組連合組織による24時間のゼネストにより、ギリシャの社会機能はマヒ状態になった。空港、鉄道、病院、学校、銀行などが一斉に休止したそうである。首都アテネでは警官や消防士も参加し約2万人がデモ行進し、投石により警官隊と衝突した。これは財政危機からの回復のため、給与凍結、増税などの緊縮策を進めるパパンドレウ政権に対しての抗議だけに、警備している警察官も複雑な心境とも思われる。

実は先日、霞ヶ関で久しぶりにデモ行進を見かけた。そのデモに参加していたのは昔のデモの第一線にいたような世代、つまりかなりの年配の方々の行進であり乗っていたタクシーの運転手も驚いていた。日本でのデモがニュースで報じられることもなくなってきている。しかし、ギリシャの問題は対岸の火事ではなく、いずれ日本でも同様のことが起こりうる。

日本ではユーロに属しているギリシャのように財政規律に対して明確なルールがない。その分、もし本当に国債が消化できないという事態になったときには、すでに対処のしようがない状態になってしまっている可能性がある。

そういった状況を国民も薄々は感じているものの、本当の意味での危機意識が薄いと思われる。そのために、政府の対応も真剣さが感じられない気がする。政府は6月初めを目途に「成長戦略実行計画」(工程表)を含めた「成長戦略」のとりまとめを行う予定としており、また中期財政フレームについても6月を目処にまとめる予定となっている。

しかし、中期財政フレームに関して具体的な数値目標が出される気配が今のところ感じられない。成長戦略にせよ、菅副総理の発言などを見る限り、デフレ対策として日銀の金融政策頼みの姿勢を強めているようにすら感じる。

具体的な数値目標を出すとなれば消費税引き上げがその前提条件となるため、鳩山首相が在任中には引き上げないとの公約に反することが、数値目標が出せない要因であろう。

危機的な財政の中にあって、こういった公約やマニフェストに縛られて身動きできない現政権に対し、夏の参院選に向けて国民の審判がどのように下されるのか。注意深く見守って行きたい。
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「日本国債先物取引が登場して今年で四半世紀」

03月11日
長期国債先物取引が東京証券取引所に上場したのが1985年10月であり、まもなく四半世紀を迎える。何故、日本の金融市場で初めての先物市場が四半世紀前に登場したのか、当時の様子を振り返ってみたい。

1985年6月、銀行による国債の「フルディーリング」が認められた。これにより、銀行が大量に保有する国債を市場で自由に売り買いできるようになった。ところが、当時はまだレポ取引といった債券の貸借取引が整備されておらず、国債の価格変動リスクをヘッジする手段がなかった。金融市場の国際化や自由化の進展もあり、そこで米国市場などで活発に利用されていた先物取引を、まずは債券市場で導入しようとの機運が高まったのである。

1984年の証券取引審議会公社債特別部会で、市場創設に向けての具体的な検討が行われ「債券先物市場の創設について」と題する報告書が大蔵大臣に提出された。同報告書には債券先物市場の経済的な意義について次のようなコメントがある。
1.債券の保有者、運用者、資金調達者、資金運用予定者に対して低コストで金利変動リスクを回避する有効な手段を提供する。
2.債券ディーラーによる十分な在庫の保有が可能になり、流通市場の安定と拡大に役立つ。
3.引受リスク回避手段として活用できることから、発行市場の安定と拡大につながる。
4.将来価格に関する情報が提供されることで、資産運用手段の多様化・取引の活発化に寄与する。
また先物の仕組みとして、対象を長期国債とすること、標準物方式が望ましいこと、証券取引所において行うこと、そしてディーリング認可金融機関(つまり銀行)を直接参加させること、当面は機関投資家中心の市場とすること、証拠金・値洗い・制限値幅等の投資家保護ための制度を設けることなどが提言された。(東証『債券先物取引市場10年間のあゆみ』より)

こうして、債券先物の参加者としては、東京証券取引所会員の証券会社だけではなく、国債を大量に保有している銀行の参入が、特別会員という資格で認められた。国債の自己売買が認められている金融機関であるディーリング認可行と非会員証券会社のうち、一定の資格条件を満たしたものについては「特別会員」として債券先物の取引所取引ができるようになったのである。

先物の対象(標準物)となる債券としては、発行主体の支払能力が高く、債務不履行リスクが低く、発行量や残存が多く、現物の取引が活発に行われ、現物市場で価格情報が広く継続的に提供されているなどの性質が求められた。これに合致するのは国債、なかでも当時最も発行量や残存が多かった10年の長期国債であった。

こうして1985年10月に日本初の金融先物として長期国債先物が東証に上場したのである(「日本国債先物入門」より)。
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「ソブリンCDSへの規制強化」

03月10日
日経新聞によると、欧州主要国は財政リスクを取引するデリバティブ(金融派生商品)を対象に新たな規制策を導入する検討に入ったそうである。過大な債務を抱えるギリシャやスペインを狙った投機が債券市場の混乱を招いたと判断し、ドイツのメルケル首相は8日に記者団に対して「制限が必要だ」と表明した。ドイツやフランスなどの主要国で調整を進め、4月中にも規制の大枠を固める方向だ。日本や米国を含めた国際的な取引規制になる可能性もあるとか。

この規制対象として検討されるのは「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」である。つまりソブリンCDSと呼ばれるものであり、財政の健全度を示す目安となるとされるが、元々CDS市場では参加者も限定的なところに一部の思惑的な動きが強く反映されるなどしており、欧州でも短期的な投機資金がCDSを使って債券市場に流入している可能性が指摘されている。

主要国は財政の実態が正確に反映されていないと不満を強めているそうであるが、これは日本についても同様である。

ドイツは欧州市場でCDS取引に一定の制限を設ける方向でフランスなどと調整する考えであり、仏サルコジ大統領も規制には前向きとされ、ユーロ圏財務相会合の議長であるユンケル・ルクセンブルク首相も同調する見込みと日経新聞が伝えている。

すでに金融市場に大きな影響力を持つデリバティブ商品に関しての過度な規制については意見の分かれるところではあるが、ことソブリンCDSについては国債市場に対してはむしろノイズとしての作用しかないと思っており、今回の動きについては個人的には賛同したい。そもそも誰が何を根拠にトレードしているかすら分からないものでもあり、市場関係者もそれほどは意識はしていないはず。ただし、マスコミなどが取り上げやすいものであるため、数値だけが妙な一人歩きをしているものでもある。
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「追加緩和と円高」

03月08日
5日の日経新聞では「日銀、追加緩和を検討」との記事があり、それによると日銀は追加の金融緩和策の検討に入り、3月16日から17日に開催される決定会合で、追加緩和について本格的な議論を始めるそうである。ただし、一部の審議委員が慎重姿勢なため3月の決定は見送り、4月に具体策を詰める可能性があるとした。

この内容については、新型オペの期間を現行の3か月から6か月程度、供給規模を現行の10兆円から拡大することが、議論の中心になるそうである。つまり昨年12月1日の臨時の金融政策決定会合で決定した新型オペをバージョンアップを計るようである。

しかし、何故このタイミングで先々の決定予定がスクープされたかたちとなったのか。一面トップというからには観測記事ながらもそれなりの裏を取ってのものであるはずである。このタイミングの発表の背景には、どうやら今回も「円高」が影響していたものと思われる。ギリシャの財政問題などによるリスク回避の動きなどから、3月に入りドル円は88円台前半をつけ、ユーロ円は3月2日に一時120円を割り込んでいた。

この円高を受けての日銀の動きが結果として記事として現れた可能性がある。その理由としては12月1日の臨時会合の背景を再確認すると垣間見れる。当時の様子を振り返ってみたい。

政府がデフレを宣言した2009年11月20日、日銀の金融政策決定会合が開催されたが、日銀は景気判断を上方修正させた。日銀にはデフレを宣言した政府と距離を置こうとの意見が多かったそうである(日経新聞)。

しかし、26日には今年1月21日につけた87円10銭を割り込み一気に86円台に突入し1995年7月以来の水準をつけた。ドバイショックも加わって、27日にドル円は一時85円割れとなった。

この急激な円高とそれを受けた株安に対し、政府は日銀に理解を示す藤井財務相と古川元久、大塚耕平の両内閣副大臣らが、日銀との調整役となり、27日に藤井財務相と白川総裁が都内で極秘会談を行なった(日経)。

29日には首相官邸で、12月2日の首相と日銀総裁の会談でデフレ克服での強調で足並みを揃える段取りを確認したそうで、それが30日の日銀総裁による突然のデフレ発言に繋がったとみられる。

さらに、日銀には金融面から経済を下支えるようにと、政府からもう一押しもあり、政府との対立が決定的となるのを回避するため、講じた政策が12月1日の新オペということになったものとみられる。

藤井財務相は前日に日銀が追加緩和すれば効果ある、量的緩和ということなら経済効果あると発言していたが、日銀が臨時の決定会合を開いてなんらかの量的緩和策をとるであることを知っていたような発言であった。

「量的緩和策」という言葉から2001年3月から2006年3月まで続いた量的緩和策と同様のリザーブ・ターゲットへの移行もあるかと個人的には見ていたが、実際に12月1 日に発表されたものは、国債や社債、CPを担保に0.1%の固定金利で3か月程度の期間で10兆円規模の資金供給資金を供給する新たなオペであった。日銀の白川総裁はその後の会見で「広義の量的緩和策」と発言した。

昨年の円高の背景のひとつは、LIBORの6か月物の金利まで日米逆転となっていたことも指摘されており、国債も担保に出来て10兆円規模の新オペで、ターム物とよばれる3か月や6か月などやや長めの金利の低下を促すことも期待できる。間接的ながら円高に対応し、企業金融支援オペと違って国債や地方債も担保にできることで国債などの保有をしやすくなる利点もある。そして、政府に日銀が協力してデフレや円高に対応する姿勢を示したともいえたのである。
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日銀の国債引受を禁じた財政法

03月03日
高橋是清は首相や蔵相を歴任し、積極財政によって当時の日本の経済を立て直してきました。1931年再び81歳で蔵相となった高橋是清は日銀引受の国債を発行したのです。それによって得た資金で政府が物資を買うことなどにより経済の状況が回復し、物価も少しずつ上昇しました。政府は日銀が引受けた国債を市中に売却することで余剰な資金を回収するという巧みな政策を実施してきました。

この積極財政の仕組みは、成功するかに見えたのですが、軍部予算の急膨張によってバランスを失いました。すでにインフレの兆候も出てきたこともあり、1936年の予算編成で高橋蔵相は公債漸減方針を強調しました。

しかし、健全財政を堅持しようとする大蔵省と軍部との対立が頂点に達したことにより、軍事費の膨張を抑制しようとした高橋是清は二・二六事件により凶弾に倒れました。

第二次世界大戦による軍事費の膨張により政府の借入金は増大し戦時国債など国債が濫発されました。増税政策も強行されたもの財源は不足したため国債が発行され、これらの国債は公募されずに日銀引受となったのです。このために、日銀の保有国債残高が増加し、日本銀行券の発行高も激増しました。

1945年8月15日に日本はポツダム宣言の受託により敗戦を迎えました。第二次世界大戦後の大きな痛手を蒙った日本経済は、主食の米不足など消費財の欠乏に加え、終戦処理費として巨額の財政支出などが実施されたことでさらに激しいインフレに見舞われましたのです。

1946年2月に政府はインフレの進行に歯止めをかけることを目指し、金融緊急措置令および日本銀行券預入令を公布しました。5円以上の日本銀行券を預金、あるいは貯金、金銭信託として強制的に金融機関に預入させ、既存の預金とともに封鎖のうえ、生活費や事業費などに限って新銀行券による払い出しを認める、いわゆる「新円切り替え」を実施されました。

そして1947年制定された財政法では、「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。」(第四条)として国債の発行を制限するとともに、「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。」(第5条)として日銀による国債の直接引き受けを禁じたのです。

これは、戦前において日銀による国債引受などを通じ、安易に公債の発行による財政運営を許したことが戦争の遂行・拡大を支える一因となったことを反省するという趣旨に由来するものとされています。
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