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林知之
うねり取り 基本と実践 1963年東京都杉並区生まれ。1976年から商品のサヤ取りを始め、相場の世界に入る。FAIクラブの誕生とともに株式へ移行、証券会社3社で営業を経て、2000年に林投資研究所の代表取締役に就任する。
一般社団法人投資顧問業協会において、業務第五部会員、自主規制第五部会員、関東部会幹事を兼任。
『林知之の相場「確信ある自分流」』

自分で決めたルールなのに守れない

02月22日
株の売買で、自分なりに決めていることがあると思います。

システムトレードのようにカチッとした売買ルールでなくても、例えば「安くなった(下がった)だけでは買わない」とか、「短期狙いに徹して、1週間が経過したら無条件でポジションを落とす」といった事柄です。

あるいは、その都度のルールとして、「300円を割ったら損切り」とか。

でも、こういったルールを自分で決めておきながら、つい破ってしまいます。
「ここは特別な場面だ」とか、「今回だけ」と言い訳して。
言い訳する必要などなく、自分が困るだけなのに……。

つまり、決めたことを守るのが大切だと理解しながら破ってしまうのです。
ということで、今回は「ルールの重要性」について考えてみましょう。

といっても、「ルールを守らないとダメだぞ」という抑圧的なイメージは効果が薄い、いや逆効果なので、「ルールを守ると気持ちいい」という結論を導きたいと思います。

私たち個人投資家は、なにもかもが自由です。
組織に属するプロのように、ガチガチのルールがありません。
自由すぎて、自分で決めたことすら守れないのです。
ある意味、自然な真理によるものですが、ポジションが汚れます。利益のチャンスを逃すばかりか、不要な損失を出してしまいます。

不思議なことで、例えば「500円を上に抜けたら順張りで買い」みたいに、積極的にポジションを増やす行動だけは守ります。そして、損切りを含むポジションを減らす行動について、事前の決めを破ります。

ということで、「制約を設ける」ことに意味がある、という部分を再確認してみます。

私の場合だと、裁量で低位株を買う売買では、「月曜日の新規売買禁止」というルールを守っています。
月曜日には、ポジションを増やす売買は絶対に行わない、というものです。
ただし、月曜日でも手仕舞いはOKです。

減らしたポジションを建て直すことはできても、「切ろうかな」と迷って先送りしたポジションは切れなくなってしまいます。だから、手仕舞いはOKで増やすのは禁止なのです。

では、なぜ月曜日なのか?
土日は、十分に考える時間があり、繰り返し考えているうちに、考えてもわかるはずのない近未来が見えたような錯覚に陥る可能性があります。妄想が、頭のなかで膨らんでしまうのです。

常に寄付で売買しているので、週5日すべて売買しても、ポジションを増やす買いが5回、ポジションを減らす売りが5回、合計10回です。そのうちの1回だけを禁止するのです。

これによって、土日に新しいことを考える姿勢を最初から放棄することができます。
「たっぷり考えて名案が浮かぶ」という発想もありますが、マーケット参加者全員が平等にもっている条件なので、自分だけトクするなんて妄想です。根拠のない“おごり”です。

だから、ミスの可能性を減らすために設けているルールです。

こういった発想は、ふだんの生活にも応用して役に立っています。

例えば、駅のホームを歩くとき、絶対に端を通らないようにしています。
シラフのときでも、中央寄りを歩きます。
万が一ころんでも、誰かとぶつかってふらついても、線路に落ちる可能性がないようにしているのです。こう考えること自体を「めんどくさい」と感じるかもしれませんが、習慣になれば苦労などなく、安心感につながります。

横断歩道で信号待ちするときも、車が突っ込んできた場合でも被害に遭わない場所に立ちます。車の進行方向に対して電柱の反対側とか。

これも、場所をチェックする習慣がついているので、ちっとも苦ではありません。そして、ケガの可能性をゼロに近づけている自分に満足して、気持ちがいいのです。

売買の話に戻ります。

裁量の売買で私は、逆張りで手稲に買うことを基本としながらも、順張りで飛び乗ることもします。でも、事前に一定の条件を決めて、OKの範囲を定めているのです。

あるいは、「銘柄に惚れるな」という戒めの言葉があります。
特定に銘柄に惚れ込んでしまうことなく、常に淡々と売買しろという意味です。

でも人間なので、惚れてしまうことはあります。
そういった銘柄は、別の取引口座で買って全体の株数を増やします。
メインの口座で株数を増やすと、秩序がなくなってしまうからです。
別口座で買ううえでのルールがあるので、歯止めがなくなることはありません。

あとは損切りですね。
株数をそろえておいて、「将来のために、今のポジションをベストな状態にする」という気持ちを大切にしていると、「ちくしょ〜」と言いながら、たたき切ることができます。

冒頭で、相手がいないのに言い訳するという、私たちの不思議に触れました。
たぶん、別の自分と対話しているんでしょうね。
それなら、その別の自分が「カッコいい」と言ってくれる行動を取る、そう言わせるようなプロフェッショナルな行動を取ることを心がけると、気持ちがいいうえに得をするということです。


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短期トレードのつもりが長期保有

02月16日
3日勝負のつもりで株を買ったのに、なんとなく持ちっぱなし。
結果が出なくても1週間で売ると決めたのに、買ったまま持っている。

こういったこと、ありませんか?
自分なりに理由があるでしょうが、これキケンです!

どれくらいキケンかを考えながら、こういった状況をムリなく防止する観点を紹介します。

まず、株式投資・トレードでは「時間」が大切な要素だ、という説明をします。

500円で買った株が550円に値上がりしたとします。
つまり、1割上がったわけです。
「成功した」と感じるでしょうが、もし1割の上昇に5年もかかっていたら「だからなに?」と感じるはずです。

日々、株価を見ながら重視するのは、「現在値」「前日比」「自分の買い値」の3つでしょう。どれも「価格」です。つい、時間を考える感覚が抜け落ちます。

株価チャートに盛り込まれている情報は、たった2つの要素です。
ひとつは当然、「価格」ですが、もうひとつの要素は「時間」です。
そうです。チャートのヨコ軸です。「日柄」という表現もあります。

じっくり保有する投資でも、わりと短期の値動きを追うトレードでも、「価格」と「時間」の2つですべてを考えるのです。「時間」(日柄)は、めちゃくちゃ重要な要素なのです。

個人投資家の売買には、管理者もコーチもいません。
なにもかも、自分で決めるのです。

それだけ自由ですが、大切な要素である「時間」を無視して、短期トレードの予定だったポジションをダラダラと持ちっぱなしにしたら、すべてをぶち壊します。

おそらく、思うとおりに上がらず、だらしなく「先送り」したい心理です。
だから、うまい言い訳を考えるのです。誰の制約も受けないのに……。

「このモタモタは、例外的に地合いがわるかったから」
「この会社には、長期に持っても大丈夫な魅力がある」
「財務状況がよくて、配当利回りも高いんだ」

ちょっとちょっと、買った理由が変わってませんか?

予測が当たって「波に乗れた!」というときに、売り手仕舞いをガマンしてねばることはあります。よい状況では、時間をかけてもいいのです。
(逆に損切りは、時間をかけないほうが、ヤラレ幅も小さく精神的ダメージも小さい)

予測は当たったり曲がったりなので、損を抑えて利を伸ばす「損小利大」を追求するのが王道です。その際、損の売買には時間をかけず、利益の売買には時間をかけるのが(もちろん、短期で十分な値幅が取れればベター)原則ですよね。

ちなみに、サイアクの手は、自分で決めたことを破って長持ちに変更した銘柄がそこそこ下がった時点で、予定外に買い増しすることです。「やられナンピン」といって、かなりヤバい禁じ手です。だって、売れない不良在庫を、さらに仕入れるのと同じですから。

もういちど述べます。
「時間」についてカチッと考え、事前に自分で決めたことを守れば、「グズッ」とした状況にはなりませんし、やられナンピンみたいに「グズグズのグダグダ」になど絶対になりません。

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投資家の「様子見」はたいていキケン

02月09日
「様子見」という言葉には、厳重な注意が必要です!

株価の動きを見ながら、自分のポジションを確認する──誰もが行うことです。
その際、特に打つ手を思いつかずに「ここは様子見だ」とつぶやいていることはありませんか?

そんなときの状況を思い出し、厳しくチェックしてみてほしいのです。
非常にキケンなケースが潜んでいるかもしれません。

・どのようにキケンな可能性があるのか、なぜキケンか?
・その原因はなにか?

この2つを解明しましょう。

まず、私たち人間の認知が正確ではない、という事実を考えてみます。
認知とは、「ものごとを知覚して、判断したり解釈すること」です。

状況を見て、「キケンかどうか」を判断しようとしても、私たちの思考は意外と不合理であり、正確な判断をしていることが少ないといわれます。

例えば2003年に起きた韓国の地下鉄放火事件では、200人近い犠牲者が生まれたのですが、煙が充満する車両内で多くの人が静かに座っている写真が公開され、話題となりました。

経験のない事態に対してスイッチが入らず「大丈夫だ」と考えてしまう「正常性バイアス」や、迷いながらも周囲と同じ行動を取ろうとする「同調性バイアス」といった心理作用があった──こう解説されています。

株を買っていて「なんだかキケンか……」と感じても、素早く損切りするといった行動に移せないのは、人間の自然な心理だということです。

切ったとたんに反転して利益を逃す、なんてこともあります。
でも、やせガマンをつづけて最後に耐えきれず損切りして最安値をたたく──こんなサイアクな展開も「相場あるある」で、最も避けたい悲劇的な結果です。

早めの損切り、それを実行する技術といったものが求められるのですが、今回のテーマは認知、状況の判断です。少なくとも、ポジションを持っていて「マズいかも」と感じているのに「様子見」なんて言葉を使う心理は問題、という部分を掘り下げていきましょう。

人間の心理として、「なにもしないのがラク」という説明もあります。
現状を維持する、特に変化をつくらない──「今までの自分の判断や行動を否定しない」ということです。

仮に「問題がある」と認識しても、それを打ち消そうとするのが自然な心理です。

これを可能にするのが、魔法の言葉「様子見」です。

さて、私たち人間の心理面を考えてみましたが、「様子見」という言葉を投資家に与えた存在にも目を向けてみましょう。それは、市況解説を提供するメディアです。

日々の値動きについて、とりあえず日経平均などの株価指数を基準に、「上がった」「下がった」と2つに分けます。個別株の上げ下げを無視しているので、これだけで十分に乱暴ですが、さらには、上がった理由、下がった理由を簡潔な言葉で表現します。

業界内の多くの人間が納得する説明だってありますが、たいていは取って付けたような解説です。ドナルド・トランプ氏が大統領選挙で勝利した時も、直前まで「彼が大統領になったら暴落必至」なんて書き立てておきながら、選挙後に株価が上がると「トランプラリーがはじまった」と投資家をあおっていました。いいかげんなものです。

新型コロナと株価の騰落を結びつけた解説も、一定の期間の複数の記事を並べてみればわかります。「コロナで売られた」とあったかと思うと、「コロナ対策を期待して買われた」とか。経済記者というのは、記憶に問題でもあるのでしょうか……。

長くなりましたが、本題に移ります。

こうして、子どもだましのような解説を毎日送り出すのが、メディアの仕事です。
でも、目立った騰落がなかったら、どうするか──必ずころがっている懸念材料や、FOMC(米国の連邦公開市場委員会)といった経済イベントを持ち出し、「○○を控えて様子見」というのが常套句です。

様子見って……目立った上げ下げがなかっただけで、買った人も売った人もそれなりにいるから値段がついているのに、どういうことでしょうか? 私は、「様子見」と書くのは、大反則の仕事放棄だと思っています。たとえ“その場かぎりの読みもの”であっても、それはそれとして、「ちゃんと成立させてよ」「グッとくる言葉をつづってよ」と感じますね。

まあ、それは置いておくとして、「様子見」という反則技の表現がよく使われ、それが読者である投資家に浸透し、その言葉で逃げることが“オトナの判断”という勘違いが根づいてしまった──こんな推測はいかがでしょう。

ポジションがない、あるいは極めて少ない状況なら「様子見」、つまり「なにもしない」「アイデアがないから動かない」という選択肢はあります。でも、一定のポジションがあったら、様子見なんて決断はあり得ないはずです。

株を買っていて、そのポジションを維持する(そのままにする)ということは、「売らない」という確固たる決断をしているはずなのです。「もしも現金しかなかったら、この株を、この値段で買ってもいい。必ず買うよ」と確信しているはずなのです。

株式投資、資産運用は、自分の大切なカネを動かす行為です。
ひとつの仕事、りっぱな事業です。
うっかりインプットしてしまった「様子見」などという言葉を誤って使うことなく、自分がトクする思考パターンを、バランスよく構築してください。


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テクニカル分析の三原則

02月04日
テクニカル分析、つまり「チャートを見て将来を予測する」とき、注意すべき3つの原則があります。いわゆる知識ですが、値動きを見て心が揺れ動くことを抑えてくれる理論です。


1.価格はすべてを織り込んでいる

材料・ニュース……顕在化している株価変動要素を、すべて織り込んでいるのが現在の株価だと考えます。

チャート分析をすることで、あらゆるファンダメンタルも分析している──こう考えることが可能だと定義してしまうのです。

少し余地を残さないと、例えば「この銘柄は割安だ」(=これから上がる)といった予測そのものが成立しなくなりますが、チャートで価格を見る際に材料を追加してしまうと、過去の値動きを見ている意味がなくなってしまうので注意が必要です。

材料の追加を許すと、マーケットに届かない自分の都合、例えば自分の買い値などをチャートに書き込んだりします。値動きを感覚的に眺める行為を、大きくジャマする要素です。


2.価格はトレンドを形成する

トレンドとは、傾向です。
上げ、下げ、横ばい(保合)といった、値動きの流れです。

日々の動きは激しく、細かく見るとジグザグばかりが目立ちますが、超短期で「天井→底」「底→天井」なんてことはありません。やはり、「一定期間」で上げ傾向がみられたり、下げ傾向を見いだすことができたりします。

いったん生まれたトレンドは継続する──こう考えるのがチャート分析の原則です。

マーケットの価格は、いつも決まった参加者が売り買いして決めているわけではありません。それに、常に個別に売りと買いが出合って決まっています。

だから、値動きを「連続した事象のようにチャートにするのは誤りだ」という意見もあります。それはそれで正しいと思いますが、トレンドを見いだして考えないと予測は生まれません。ポジションを取ることはできません。だから私たちプレーヤーは、トレンドを意識するのが正しいのです。


3.歴史は繰り返す

私たちが知り得るのは、過去だけです。
でも、その過去のデータから未来を考えるのが株式投資・トレードです。

必然的に、「値動きパターン」を考えることになります。
未知の未来を考えるうえで、過去の値動きパターンしか頼りにならないのです。

とはいえ、安易に“法則”を見いだそうとするとキケンです。

この銘柄は去年、この価格帯で下げ止まってから暴騰した
この銘柄は、○○が動いた少しあとに動き出す
この銘柄は、上げ下げのサイクルが短めだ

いろいろな過去データがあります。
これらを手がかりに、売買戦略を立てます。
ただし、数式に落とし込んで盲信することは避けなければいけません。

チャート分析は、値動きを視覚的に捉えて感覚的に判断する、とてもデリケートな作業です。
だからこそ、上記3つの原則を言葉で頭にインプットし、知らないうちにブレてしまうことのないよう気をつけるべきです。


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