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林知之
うねり取り 基本と実践 1963年東京都杉並区生まれ。1976年から商品のサヤ取りを始め、相場の世界に入る。FAIクラブの誕生とともに株式へ移行、証券会社3社で営業を経て、2000年に林投資研究所の代表取締役に就任する。
一般社団法人投資顧問業協会において、業務第五部会員、自主規制第五部会員、関東部会幹事を兼任。
『林知之の相場「確信ある自分流」』

ゼッタイ避けたい、高値で売らずに居過ごし

03月30日
買った株が上がった!

よろこばしいことですが、自ら決断し、自らの手で利食い手仕舞いしないかぎり、「含み益」という状態。いわば、絵に描いた餅。

ここで迷います。
もう逃げるべきか、いや、もっとねばって利を伸ばすべきか……

ズバリ、結論から言いましょう。
このように迷ったら、一気に売って手仕舞いが正解です。

相場には「悩み」しかありませんが、禁物なのは「迷い」です。
だから、迷った場合は、いえ「迷いそうになった」時点で、その迷いが大きくならないようズバッと断ち切るしかないのです。

迷ったら手仕舞い、迷ったらポジションを増やさない!
これが、相場の鉄則なのです。

サイアクは売り損ないです。
天井をつけて下げていく様子を、指をくわえてみていることです。

もちろん、上げの勢いを失って下げトレンドに移った段階で、「あっ」と思うものです。
でも、「戻ったら売ろう」なんて思いついてしまうのです。
そんな中途半端な気持ちを満足させてくれる値段まで戻ったら、むしろ再び上に抜ける勢いだと思いますよ。

では、「とりあえず半分を売り手仕舞い」というのは?
なんだか、これこそ中途半端です。
自分で仕込んで持っていた銘柄、利食い手仕舞いを考えるほど上昇した銘柄、つまり長く深くかかわっていたのですから、ちゃんと白黒はっきりさせて、売るなら売って完全撤退、売らないならリスク覚悟で持続(もちろん、いつでも売ることが可能)と決めるべきです。

たしかに、手仕舞い売りの難しさはあります。
特に、買った株が上がってきたときは、値動きが格段に激しくなっている状態です。
1日待てばストップ高連続、なんてこともあり得ます。
持っていた期間に比べてほんのわずかの差で、利益の額が大きく変わります。

そもそも、損切りより利食いのほうが難しいのです。

損切りは、ダメな玉、可能性を感じないポジションだと判断したあとのことですから、単に切ってしまうだけのことです。

ところが、利食い手仕舞いは、自分の判断と行動が正しかった、めっちゃ正解だったことを証明しているポジションを、自らの手で消してしまう行為です。抵抗があって当然です。

では、現物を維持したまま信用で売る「ツナギ」はどうでしょうか?
ビシッとした狙いがあって、事前に決めておいた選択肢のひとつなら“あり”です。でも、思いつきでやる場合は、「半分売る」よりもよろしくない先送り的な発想です。

現金が余っていると、すぐに別の銘柄を買ってしまう「ポジポジ病」の人には、ツナギがいいかもしれませんが、へんな先送りになりやすいことだけは忘れないでください。

ビシッと、メリハリをつけて売買する習慣を身につける、そんな覚悟を決めることが必要です。

行動に移せない場合、資金が大きすぎる可能性があります。
土台の部分から見直すことを強くおすすめします。

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自分の都合

03月23日
多くの投資家が、マーケット情報で次の3つを意識すると思います。
「現在値」と「前日比」、そして「自分の買い値」。

そして、「現在の株価が自分の買い値を上回っているかどうか」が重要です。

でも、株価は、そんな個人的都合とは全く関係なく動きます。
マーケットは、個人の都合などいっさい聞いてくれません。

対処が遅れて「あっ」と思っても、誰も待ってくれません。
誰かが言い訳を聞いてくれることもありません。
1秒前には戻ることのできない、非情な世界です。

例えば、「平均値がキリよくなるようにナンピンする」という発想。
最初の買い値が313円、2回目が287年……どちらも中途半端な数字ですが、同じ株数ならば平均はちょうど300円!

キモチいいし、わかりやすいのですが、「平均が300円ちょうどになるように」と意識すること、それを狙って2回目の買い注文を出そうかと思いつくこと自体が、問題だと提起します。

すでに述べたように、マーケットは個人的な都合を聞いてくれません。
そして、株価は、常に予測を裏切るように激しく動きます。

平均値が300円ちょうどだろうが、299円だろうが、299.666……と割り切れない数字だろうが、純粋な気持ちで株価変動を見て「このポジションを持続するか否か」を考えるのが、相場・トレードという行為です。

平均値を有利にするよう意識しますが、仕込み終わったあとの段階で株価を見ながら“次の一手”を考える際には、意識しません。いや、意識しないようにして、株価を見なければならないのです。

私たち投資家は、つかみどころのない株価変動に、上げ・下げといった「トレンド」を見出して戦略を立てます。その際に考えるべきは、どんなときも「近未来の株価」です。決して、過去のことではありません。

自分の買い値というのは、値動きを予測して“次の一手”を考えるうえで全く役に立たないデータです。それどころか、判断を狂わせる要素です。

なおかつ、未来に目を向ける姿勢を壊し得る、単なる過去の出来事です。

枝葉末節なことだと思うかもしれませんが、常に無限の選択肢を抱えた状態でデリケートな判断をするのが、私たち個人投資家のシゴトです。だから、少しでもマイナスに働く可能性のある要素は、徹底して排除しておくべきなのです。

ほかにも、売買の判断に持ち込みたくない「個人的な都合」はあります。

●指し値

指し値が必要なケースもあるでしょう。

でも、指し値を出し、約定できるかチェックしながら必要に応じて指値変更……手間はかかりますが、有利になる値幅は意外と小さいものです。一方、株価は思った以上に大きく変動します。それに、その大きな変動こそが狙いであり、利益を生む要素です。

相手との交渉が効かない金融マーケットで、指し値は矛盾する行動ともいえます。
「価格は市場まかせ」と考え、自分でコントロール可能な2つの事柄、「数量」と「タイミング」に神経を集中させるべきです。

「今、この価格で買うのか、買わないのか」
「どれだけの株数を買うか」

この最も肝心なことにエネルギーを使うと、指し値に手間をかけていられなくなります。
だから、成り行き注文が基本です。


●あと少しで「今年10%の成績」

12月に入り、年の区切りが近づくと、来年のことを想像しながら年内のことを振り返るのが自然です。

そこで、「あと○○万円の利益が出れば、年間の成績が10%に届く」なんて計算するかもしれません。これこそ自分の都合……株価の観測を大きく混乱させます。

持ち株が上がって利食いを考えている際に、「あと20円上で売れたら、この銘柄の利益が100万円に達する」なんてのも、全く同じですね。意味のないことを判断材料にせず、純粋に値動きを眺めながら、「利益を最大にするべく、可能なだけねばる」「でも、確実に売り逃げる」という難しいことを成し遂げなければならないのです。


●この銘柄が上がらないとヤバい……

決め打ちして、資金を突っ込みすぎて、「この銘柄が、予測どおりに上がらないとヤバい」なんて、そんな状況をつくってはいけません。

例えば、レバレッジを効かせて資金以上の大きなポジションを取るなんて、言語道断です。

あたりまえに起こる、ちょっとした見込み違いや、当然に発生する値動きのアヤで、再起不能のケガを負うことになります。


最後に、まとめておきましょう。

株式投資・トレードは、公の市場を通じて、不特定多数の参加者と競争する行為です。
厳しい世界、カネの取り合いです。

でも、対戦相手の姿は見えません。
だから、「マーケットと自分」というように簡略化して、自分だけの戦略を整えるよう努めます。それが、シンプルかつ実践的な方法に結びつくはずです。常に自分が軸だし、予測も行動も自分勝手に思い描く「期待」をもとにしています。

とはいえ、そんな「自分だけ」一辺倒になると、利益を出す行動が実現しません。
ただの「独りよがり」になってしまいます。

なかなかビミョーな問題ですが、こうしたテーマに向き合って深く考える時間も必要です。




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持ち株が暴落しても指をくわえて見ている

03月17日
株式市場では、マーケット参加者全員がカネの取り合いをしているので、予測は当たったり当たらなかったり……つまり、当てて儲けることがあたりまえである一方、「株価が逆に動いて負けるのもあたりまえ」なのです。

だから、見込み違いは当然に起こることで、対処が遅れて損が膨らむケースだって単に「ヘタクソなんだ」と片づけられない現実があります。

その都度の結果論ではなく、根本的な原因を解明し、誰でも実行可能な実践的対応を考えてみましょう。

持ち株が下がったのに対処(損切りまたはヘッジ)が遅れて損が膨らむ原因は、2つあります。

ひとつは株式市場の構造で、もうひとつは私たち人間の心理です。

株を買うとき、「上がるはずだ」という予測、つまりは自分なりの確信があります。
でも、買うことができる=売る人もいる、ということです。
真剣に「売りだ」と考える人がいるから、そもそも値段がつくのです。

これが、前述したように、そうカンタンに予測が当たらない理由です。
しかも、上がる予測に対して「下がった」という結果だけでなく、「動かなかった」場合も、ほかの銘柄で利益を取るチャンスを逃したわけで、実際に予測が当たる確率は相当に低いのです。

でも、確信があって買う以上、心情的にかなりの期待があります。
現実(予測の的中率は意外と低い)と、心の中(当たるはずだ)には、かなりのギャップがあるのです。

では、感情に左右されずに合理的な判断を下す“売買マシン”のような人間を目指すとか、そのために滝に打たれて修行しますか? やめたほうがいいでしょう。
もっと現実的に考え、ふつうの感覚で俗っぽくて、でも、そんなものがダメな売買に直結しない(ちょっとだけ器用)投資家を目指すべきです。

持ち株が下がってきた、明らかに弱い──この時点で、頭では状況を理解しているのです。「これはマズいな」と。でも、そんな厳しい状況を心が認めないから行動できないのです。

というわけで、「動ける状態を常にキープする」ことが、最初に宣言した「誰でも実行可能な実践的対応」です。

いくつものアプローチがあり得ますが、基本は「資金管理」です。

資金管理……この言葉を出すだけで、小難しい座学をイメージしたり、銘柄情報のようなワクワクがないと感じるなどの理由から、多くの個人投資家が耳を傾けようとしません。でも、「この銘柄を買いたい」だけではコドモの発想、資金を何%動かすか、株数の上限をどれだけか、という当然のことを考えますよね。

こうして、「予測+予測どおりの売買」と「資金配分」をセットで考えるのが自然です。
資金管理とは、このあたりまえのことを、利益を想像してコーフンするだけでなく、意識して考えようというだけのことです。

資金管理では、予測が当たったときの利益を最大化するようにします。
でも、ただ株数を多くするだけでは、株価が予測と逆に動いたときの損失が大きくなるので、相反することですが、この両方を考えて“計画的”にポジションを取ることが必須です。

これによって、「マズいな」という状況でも、イヤな気分と切り離して冷静に「減らすか、とりあえず全部切ってしまうか」といったことを判断できます。もちろん、そこで細かい予測をしても当たらないのですが、公開しない決断を下すことができます。

少なくとも、最初の予測に固執したり、意地になってポジションを持続したり、そんなことは激減するはずです。

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買うと天井、売ると底 〜そんなことある?

03月10日
「オレが買うと、必ず天井なんだよ……」

こんな嘆きを聞いたことはありませんか?
出ると負け──出る(出動する)と必ず負けるので、こう呼ぶのですが、本人だって負けようと思っているわけではありません。これから説明しますが、実に素直な感覚の持ち主だと思うのです。

株価が安いうちは、「割安だ」とか「上がったら大きい」といった評価も受ける一方、やはり動かないので、興味をもつ人は少数です。ちょっと注目している人も、なかなか手を出しません。だから、安い値段のままなのです。

でも、あきらめて売る人を、ジワジワとくる新規参入者が上回ると、株価は上げはじめます。それに気づいた人たちが買うことで、株価はさらに上昇します。

最後に、最も腰の重い人まで参加すれば、もう新規参入者の増加は見込めません。
好材料が並び、実際に株価も上昇してピカピカに光っているのですが、残念ながら天井圏に達しているのです。

・多くの人が安心して株価を見ている
・さらなる値上がりを期待している

こんな状況が、株価の天井圏なのです。
多数の人から高評価を受けているのですが、買っている参加者の多くは売り場を待ち構えている状態で、新規に買ってくる人は非常に少なくなっているわけです。
そして、さきほどの「ミスター出ると負け」が、買い出動するのです。

ある日、そんなミスター出ると負けが言いました。
「この銘柄、買いたいね。でも、オレが買いたいと思うんだから天井かな? じゃあ、カラ売りしよう」
その銘柄は、そのあと大きく上がりました。

最初は「買い」と思ったのですが、ミスターのファイナルアンサーは「売り」だったので、逆に動いたという結末です。

こんな人がいて笑っちゃう、という話ではありません。
前述したように、この人は実に素直なのです。
また、誰もが同じ心理要素を持ち合わせています。

ただ、株式市場では参加者の売買で価格が動くため、素直な感覚とは逆に動く皮肉が当然だということです。

また別のケースを紹介します。

なかなかよい銘柄を見つけて、安値圏で動きのないうちに上手に仕込む投資家、ミスターベテランには、親しい投資家がたくさんいます。そしてミスターベテランは、みんなと一緒に儲けたいと純粋に考えています。

ところが、自分が仕込んだ銘柄が一定の値上がりをみせるまで、黙っています。
なぜでしょうか?

自分自身が買いを決断し、実際にポジションを取っても、そんな当初の予測が当たるかどうかはわかりません。でも、一定の値上がりをみせた時点では「どうやら当たったようだ」という感触が得られます。だから、自信をもって紹介できる、という心理です。

別に、周囲の人に買わせて自分が売り逃げようということではありません。

ミスターベテランの行動の理由は、実は、安いうちは自信がないということよりも、動きがないうちは、話を聞いてもなかなか買わない、という投資家の一般的な心理が大きいでしょう。安いうちに自分の予測を伝えても反応せず、それを忘れて、上がってから「なんで教えてくれなかったの?」なんて……人間あるあるですよね。

だから、不特定多数を対象にした投資関連情報は、実際に上昇をみせ、誰もが素直に反応する好材料を並べやすい銘柄、すなわち天井圏に近づいている銘柄が多くなる、という仮説が成り立つわけです。構造的な問題ですね。

高値づかみと同じように、安値をたたいてしまうケースも多々あります。

・買った銘柄が下がって苦しい
・でもガマンして持ちつづける
・どうにも耐えられなくなって投げると、その直後に上昇スタート

さて、つい高値を買ってしまうのは、やはり素直な感覚の結果だと説明しました。
安値たたきも同様です。
上がる直前は、最も暗いからです。

素直な結果、高値づかみや安値たたきをすることが多い──こういう人はいるでしょう。
でも、かなりの確率でそうなってしまうことなんて、あり得ないのです。

もし、かなりの確率で天井買い、底値売りを実行するのなら、売り買いを逆にすることで、べらぼうに儲かる売買ルールが完成します。そんなものがあったら、世界中の金融マーケットを破壊することさえ可能です。だから、あり得ないのです。

ただ、説明したような心理は誰にでもあります。
そして、それは自然な感覚なのです。

だから、そんな感覚がゼロの“売買マシン”なんて目指さないでください。
正常な感覚をもち、俗っぽくて、素直な人でいてください。

でも、相場のことを理解し、素直な感覚と行動が大損に直結することなく、一定期間の成績がどうにかプラスになる“やり方”を考えてください。それが、相場の王道だと思います。

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価格が近づくと指し値変更……

03月02日
買うことを決めて買い指し値を出したのに、下がって値段が近づくと買い指し値を変更して下げてしまう。あるいは、持ち株が上がって売り指し値に近づいてきた状況で「もっと上がる」気がして指し値を上げてしまう……。

つまり、出しておいた指し値が出来そうになると、指し値変更して遠ざけてしまう行為です。

「状況が変わった」という理由で指し値を変更するのかもしれませんが、この行動にブレはないのでしょうか? 指し値注文の使い方、指し値のあり方を考えてみましょう。

まず気になるのは、「自分が決めたことを実行しない」という部分です。

持ち株が上がったら、売って利益を確定し、現金ポジションに戻ります。この区切りは大切です。だから、勢いがあるうちに確実に売るために「○○円で売り」と決めたのに、その値段に近づいたら指し値を上げてしまうというのは、自分で決めたことを守らないということです。買い指し値の場合も同じです。

「今日からダイエットだったけど……明日からでいいや」
というのと似ていて、問題があると感じます。

実際、こういった指し値変更をしていたら、バタつくことがあるでしょう。
手仕舞い売りの指し値を値上げしているうちに株価が下げ傾向になり、こんどは、下がっていく株価を追いかけるように売り指し値を下げていく──こんなバカげたことになりかねません。

あるいは、いくらでも安く買えたのに、丁寧に買うつもりで指し値を変更して買いそびれ、結局は動きはじめてから飛びつき買いをする、とか。

たしかに相場は、刻一刻と状況が変化していきます。
だから、“臨機応変な対応”が必要です。
でも、私の感覚では、「それなら、そもそも指し値をしてはいけないのではないか」と思うのです。

状況が刻一刻と変化する、ときには急変する──これが相場の現実です。
その急変が利益につながる魅力であると同時に、想定外の損失にもつながります。

そんな価格の急変とつき合ううえで、“自分都合”の指し値が有効なのか、という疑問です。

例えば「○○円で買い」と買い指し値を出しても、相手方である売り手は答えてくれません。それどころか、誰が売り手になるかも決まっていません。つまり、交渉の余地はないのです。そんな状況に対して指し値をしても、単なる独り言、空回りするだけと考えることも可能です。

「価格」にフォーカスして、大切な部分が見えなくなる、価格変動の変化を検知する姿勢が薄くなってしまうという懸念が浮かび上がります。

この考え方は、指し値の否定論に行き着きます。
「価格は常に市場まかせ」「コントロールできるのは数量とタイミング」という考えを重視し、『そのときの価格で、自分が考えるとおりの株数にする』という発想です。

でも、「今日買う」と決めて、その日のザラ場のブレを利用した指し値で、売買価格が少し有利になるのではないか──こんな反論もありそうです。一理あります。1回で平均1%有利にすることができたら、いや0.5%でもバカにできない、という理屈は成立しそうです。

でも、先ほど述べた、「価格変動の変化を検知する姿勢が薄くなる」という懸念を重視したら、成り行きで売り買いするほうがいいとの考え方に落ち着きます。少なくとも、ポジションを落とす手仕舞いは成り行き、即撤退の損切りは絶対に成り行き、といえるはずです。

もしも、チームプレーで分業だったら、指し値も肯定できるでしょう。
あなたが「買う」と決めたら、執行係の人が「確実に買う」ことを絶対として、市場の動向を見ながら有利な価格で約定を決める、といった流れです。

しかし、自分で決めて自分で売買を実行するうえでは、指し値にエネルギーを使わず、肝心な部分に集中するべきだと思うのです。これが、指し値の否定論、成り行き注文を好む論理です。

最後にひとつ。
指し値を変更するといっても、私のような指し値否定論者が認める範囲もあります。
それは、「トレーリングストップ」と呼ばれるテクニックです。

株価変動でコワいのは、さきほども触れた「急変」です。

順調に上昇してきた状況でねばっていた、当たった予測を育てる発想で買いポジションを維持していた、しかし、急落で状況が一変した──こうした場合にポジションを自動的に落とすのが、ストップロスオーダー(逆指し値)です。

持ち株が上がってきた状況で、急変で下げたときに逆指し値で売ってポジションをゼロにする。価格がさらに上昇した場合、この逆指し値を上げて現在値に近づけていく、という対応です。

この方法は、近づいたら「買い指し値を下げる」「売り指し値を上げる」行為と真逆です。だから、「いいのではないか」と感じるのです。ただ、少し長めの期間で売買している場合、一時的なブレで下げた場面は絶好の買い場ではないか、そこでポジションを消してしまっていいのか、選択肢を狭めるのが正解なのか、という、指値否定派の意見も聞こえてきそうです。

私は、「逆指し値を出しておかないと不安」なポジションは、つくらないほうがいいと考えます。状況を見て、計算だけでなく感覚的に判断して、「撤退だな」(利食いでも損切りでも)と思ったら成り行きで手仕舞いするのが正解ではないかと思っています。

あなたの哲学、経験、感性によって、指値注文の使い方、あり方を見直してみてください。

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