戦略コンサルタント&ベトナム株道先案内人 福森哲也
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株式会社STIサポート代表取締役/コーポレイトディレクション(アジアビジネスユニット)シニアアドバイザー/アサヒ衛陶(東証2部)常務取締役他。
日欧の戦略コンサルティング会社にて、“第2の創業支援”プロジェクト(上場前後のベンチャー企業/中堅・準大手企業/地方有力企業)や M&Aプロジェクトに数多く従事。その後、上場ITベンチャーの執行役員や大手家電グループ企業の経営会議メンバーを経て、独立。現在は、企業内部に入り込む形での上場・未上場企業の“第2の創業支援”と、ベトナムを中心としたアセアンでの“事業&人材開発”支援に注力している。
ベトナムとベトナムビジネスの入門書『ベトナムのことがマンガで3時間でわかる本』(明日香出版)は、2012年に出したミャンマー・カンボジア・ラオス版と共に、アジア事業担当者・駐在員に幅広く活用されている。また、日本にベトナム株投資を最初に紹介した『日本人が知らなかったベトナム株』(翔泳社)などもある。
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福森哲也のベトナム株投資
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ベトナムの真実090126 01月25日
明けましておめでとうございます!2009年の旧正月(テト)は今日(1月26日)なので、1月23日(金)が旧正月前の最終取引でした。ホーチミン証券市場は、2ポイント強上昇して303ポイントで取引を終えました。上昇銘柄がちょうど100社、下落銘柄が44社でした。時価総額上位15社では、前日比変わらずが5社、微上昇が10社という結果でした。ハノイ市場では、殆ど前日と変わらずに99.9ポイントで旧正月を迎えることになりました。26日から1週間市場も閉まり、2月2日の月曜日から09年度の取引がスタートします。
ベトナムの旧正月はベトナム人にとって最も大事な祭事です。普段はホーチミン等の都市に住んでいる人たちも、一斉にバスや電車、乗り合いの車などで田舎に帰省します。新しい型のバスなどは早めに埋ってしまい、かなりおんぼろバスで田舎道を何時間もかけて帰省しなくてはならないようです。
外国人が旧正月にベトナムにいると、親しい友人の家に招待されたりします。ベトナム人のボーイフレンドやガールフレンドがいる人などは、このタイミングでありとあらゆる親戚・縁者に引き合わされることになります。出会う殆ど全ての親類・縁者の子供たちには『ラッキーマネー』を渡すことになります。ベトナムで、しかも外国人で、『あの人はけちだ』と思われてしまうと、その後の名誉回復が大変になってしまうからです。
ホーチミンやハノイ市内では、地元企業の協賛金で花火が打ち上げられます。今年はホーチミンで6箇所、ハノイで16箇所から花火が打ち上げられるようです。多くの人が帰省しているので普段よりは相当静かなベトナムの都会で、帰省する場所の無いホーチミンっ子やハノイっ子と一緒に花火を楽しむのも素敵な時間だと思います。
例年、”帰省先で事業や投資の自慢話に華が咲き、その話を聞いた人が旧正月明けに自分も投資や事業を始める”ことがよくありました。しかし、今年は『いかに損したか』の自慢?話に華が咲く可能性が高いのでしょう。常に前向きで、したたかなベトナム人たちが、損をした話から何か金儲けの匂いをかぎつけて、旧正月明けに積極的に投資に乗り出してくれるといいのですが。
ヘンカップライ
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ベトナムの真実090122 01月22日
今日も日経新聞はびっくりするような暗いニュースのオンパレードです。ソニーのリストラ(ここ数年ずっと早期退職者プログラムを実施してきていますが、更に正社員2000人。契約社員も多い会社なので、今年の契約満了時には相当数の更新されない契約社員が出てくるのでしょう(女性中心に。。。)。
もっとずしっときた数字は、米国の昨年の数字達。260万人の雇用喪失+1000兆円の資産消失(住宅と金融資産価値/GDPの70%相当)。そして13年ぶりのドル安(87円10銭)。GMがトヨタに抜かれて世界販売首位転落。ほぼ確実に今年の世界経済の成長率はマイナスでしょう。
中国次第のところは大きいですが、ベトナムはさすがにプラス成長を維持するはずです。インフレも大きく抑制されています。9000万の若い国内人口の内需&疲弊していない農村部=サバイバビリティの高さ(ホーチミン等で失敗した人たちも田舎に一端戻って再起を目指せます)、不動産・金・株投資にのめりこんだ一部の富裕層と外国人は痛んでいますが、それ以外は結構元気です。年末の寿司レストランやディスコは、ベトナム人で待たないとは入れない状況でした。
メイコーがハノイで電子機器の受託製造サービスを稼動させるニュースも。景気回復後を見据えた仕込みのようです。明日、日本のベンチャー市場に上場している会社さんのベトナム進出の相談でMTGをしに行きます。以前のように『ベトナムに投資したら2倍は当たり前。3倍〜5倍のリターンを期待する』世界はもう来ないかもしれませんが、投資に見合ったリターンは期待できる国ではあるように思います。
ヘンカップライ
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ベトナムの真実090120 01月20日
今日は世界史に残るであろうオバマ新大統領の即位式です。色々な意味での歴史的転換の日でしょう。良い方向に転換して欲しいものです。日本でも平沼さんが新党構想を発表しています。平沼さん&民主党が軸になって骨のある責任政党が出来上がることを心から願ってやみません。。。。
さて、香港上海銀行(HSBC)は定期的にベトナムモニターレポートを発表しています。日本人と同じように外国の声に敏感なベトナム人投資家達に、このレポートは従来大きな影響を与えてきました。HSBCは、ベトナムにいち早く進出し、今年の1月5日にはベトナム初の外資100%銀行の営業も開始しました。ベトナム人にとってなじみもあり、高いブランド力を持った銀行と言えます。
今回のレポートでは、1:海外機関投資家や大手ファンドの投資対象となり得る時価総額10億ドル以上の上場企業の消失(主要市場であるホーチミン証券取引所全体の時価総額も1兆3000億円程度に縮小)、2:海外からの資金流入の減少、3:世界金融恐慌の実体経済への悪影響による09年度の輸出の低迷(対前年度の輸出の伸びが、08年度の30%が09年には3%になると予想)、4:09年度のPERは10倍程度で他のアジア諸国と比べて特に低い水準ではない、といった理由から、09年度末のベトナムインデックスを300ポイントと予測しています。
現時点においては全く尤もなレポートだと思います。1などは06年にベトナム市場の議論をする時に常に指摘されていたことです(でもその後06年末から07年にかけてベトナムインデックスは暴騰しましたが)。2に関しては間接投資のみならず、直接投資実行額、ODAやODAに匹敵する規模だった海外在住ベトナム人(越僑や海外への出稼ぎ労働者)からの送金も激減する可能性が高いと思います。今年の旧正月商戦が振るわないのは、海外在住ベトナム人からの送金の減少も影響しているかと思われます。3,4も現時点ではその通りです。
一方で、ベトナム国内でも、HSBCのようなブランド力のある海外金融機関のレポートと言えどもそのまま鵜呑みにしてしまっていいのか、というある意味健全な議論が最近ではなされています。
HSBCの定期的なモニターレポートも、昨年の2月にはベトナムを投資対象のベスト6ヶ国に上げ、3月には08年年末のインデックス予想を1100ポイントと予想し、4月に08年末予想を600ポイント/09年末予想を750ポイントに引き下げています。その後も7月にそれぞれ400ポイントと450ポイントに大幅に下方修正し、10月に逆に450ポイントと550ポイントに上方修正しています。
個人的には、”旧正月前の300ポイントを底に、600ポイント近くまで1度上げて、年末にかけて下げて500ポイント台で09年末を迎える”という楽観シナリオを期待しています。10年度の発射台としては500ポイントぐらいは回復しておいて欲しいものです。ベトナム投資に実績のあるグローバルリンクアドバイザーズ株式会社が、投資運用業の認可を受け新規にベトナムファンドを組成するようですし、海外でも1億ドル規模のベトナムファンドの設立準備はかなりされているようです。楽観シナリオの可能性も決して小さくないと思っています。
逆にベトナム証券市場壊滅の懸念材料は、1:オバマ新大統領の暗殺(アメリカの総力をあげて守って欲しいものです)、2:鳥インフルエンザ(ベトナムは鳥インフルエンザ先進国です。鳥肉大好きの国ですが国の総力をあげて対策に取り組んでいます)、3:アメリカドルの暴落(ベトナム政府、国家銀行が十分なシミュレーションや準備をしていてくれることを願っています)の3つだと考えています。
ヘンカップライ
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ベトナムの真実090115 01月15日
ベトナム証券市場にとって残酷な1年が終わりました。ホーチミン証券取引所のインデックスは315ポイント、年初に比べ65%を越える大幅な下落に終わりました。日経平均は42%マイナスで戦後初の悲惨は状況だと言われていますが、ベトナム市場はそれ以上の大幅な下落を記録してしまいました。
そんな中で、大手銀行の株式会社化に伴うIPO(民間への株式放出オークション)が行われています。12月26日にベトナム商工業銀行(ベトインバンク)のIPOが実施され、ほぼ全株最低公募価格の2万ドン(=100円〜120円)で落札されました。ベトナム投資開発銀行(BIDV)も延期していたIPOを09年度中には行う方針のようです。
一方で、ここ2年ぐらい業容拡大に走っていた株式商業銀行は、不動産融資にはまりこんでしまったのと、支店網の構築などのインフラ投資や預金獲得競争、金利のあまりに激しい変動などに翻弄されて、”疲弊”しているのではないかと見ています。国家中央銀行の発表では、『現時点での銀行業界の不良債権率は貸付残高の3.5%に過ぎない』ということになっていますが、本当でしょうか?
現地の銀行や銀行系証券会社、ファンドマネジメント会社で、『来年、銀行は潰れますか?』と聞いて回ったところ、『潰れないと思いますが、中央銀行主導で統合や再編は行われると思います』というのが各社の共通した回答でした。銀行口座を開くのがまだまだ一般的にはなっていないベトナムで、ここ2年ほど雨後の筍のように見知らぬ銀行の支店ができていたのはやはり異常だったように思います。未上場株市場(OTC)でも銀行株は低迷しています。
銀行以上に統合・再編が確実なのは証券会社です。100社近い証券会社が既に認可されて営業している状況の中で、さらに20社近い証券会社が認可待ちもしくは設立準備中と言われています。08年の厳しい状況の中でも、最大手のサイゴン証券やアジアコマーシャルバンク証券は1000億ドン〜3000億ドン(5億円〜18億円)程度の利益を確保しているようですが、サイゴン証券以外の上場証券会社3社(バオベト証券、ハイフォン証券、キムロン証券)は数千億ドンの赤字を計上する見通しです。
また、証券会社が証券業務全般を行うためには、3000億ドン(15億円〜18億円)の法定資本金を満たす必要があるのですが、未だに3分の1の証券会社はこの資本金を満たしていません。国家証券委員会が増資計画の提出を求めていますが、かなり厳しいのが実状ではないでしょうか。
大手による中小証券会社の吸収合併や、外資による買収が今後行われることが期待されていますが、韓国を初め証券会社の買収に熱心だった外資も今はそれどころではないかもしれません。潰れる(早くも廃業する)証券会社も出てくるのではないでしょうか。
以前、有名な投資家の先生がベトナムに日本人向け証券会社を設立する準備をしていましたが、今なら二束三文で買えますよ。。。日本の証券会社や投資ファンドなどは、ベトナムの証券会社を5年後を見据えて買収したりはしないのでしょうか?ティンベトコンサルティングでいくらでもお手伝いできるのですが。。。
ヘンカップライ
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ベトナムの真実090110 01月10日
ベトナムの証券市場がホーチミンに開設された2000年7月から昨年年末まで、ベトナムでは個人の証券取引には一切所得税はかかっていませんでした。証券取引だけではなく、ベトナムでは個人レベルや家業に対する課税は殆どなされていない状況です。一部の高額所得者(しかも所得が明確に捕捉されてしまう人たち)のみが所得税を払っていました。日越経済交流センターによると、現行の課税対象者は約30万人、税収は年額6兆ドン(=約330億円前後)程度のようです。
若者もお年よりも皆が携帯電話を持ち、新品・中古のバイクを持ち、夕方には目的もなく走り回ってガソリンを浪費し、かなりおしゃれな服装をして、結婚式には何百人も招待し、エネルギー・活気に満ちた生活をしている一方で、”政府にはほとんど税収が無い”のがベトナムでした。
お店をやっている人も、路上の屋台も、税金を払う代わりに公安の担当者に毎月お金を渡しています。定期的にサイゴン川のほとりに行って、コーヒーをすすりながら情報交換しつつお金を渡します。もちろんそれ以外にも正式の調査や検査がはいると、別途にかなりの金額を支払うことになります。
そんな状況を打破すべく新たに導入される体系的な新所得税法が07年11月21日、第12期第2回ベトナム国会で採択されました。しかしあまりに影響の大きい法律なので、国民の意見を聞いたり、国会等で更に細則を議論するなどの準備のために、施行日は09年1月1日とされていました。この法律の第13条で資本譲渡による収益にも課税されることが決められていたのです。日越経済交流センターによると、新所得税法では、課税対象者が230万人に、税収が13兆ドンに増える見通しとのことです。
ご存知のように08年のベトナム株式市場は悲惨でした。年初から66%下落して08年年末を迎えました。当然ながら、このような環境下での個人所得税の導入に対しては多くの反対意見が出され、ベトナム政府・財務省も証券取引に関する導入を延期する方向で議論を重ねてきていました。昨年年末にベトナム最大の証券会社サイゴン証券を訪問した際には。『少なくとも導入時期は延期されるはずだ』と明言されたほどでした。
しかしながら法律の施行に関する事項なので、あくまでも主管は国会になるため、最終的には国会常任委員会・国会財政予算委員会の議論に委ねられていました。そして、12月27日の国会常任委員会での結論は「予定通りの施行」でした。現場はかなり混乱していますし、未だ国会・政府で議論が続いています。
非常に大事な法律・方針を政府が決めきれない。こんなところも日本と同じ匂いがします。。。離党している平沼氏を中心に小池百合子さんや旧日本新党のグループが結集して政界再編でも起きない限り、日本の政治も閉塞状況を打破できないと思いますが、ベトナムも結構頑張らないといけない政治状況です。何故か最前列の細川氏(後の首相)の隣に座って日本新党の結党大会に参加したことを、最近思い出したりします。
サイゴン証券からメールで1月からの個人所得税の処理について知らせてきました。納税者の対象は、すべての投資家(ベトナム人と外国人)/証券会社の義務は、投資家の代わりに課税収入を申告し、規制通りに控除することと、投資家の要求の通りに必要な書類を提供すること。非在留者の所得税は、配当の5%の源泉徴収(現金配当も株式配当も)と証券売却時の売却金額の0.1%の源泉徴収になるようです。
ヘンカップライ
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