羽根英樹
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通信講座『イベント投資倶楽部』主宰。 兼業投資家。投資歴30年以上。現在は株の売買をメインに、年2〜3割のペースで資産を増やし現在の運用資産は数億円となる。 1993年からコモディティ市場でサヤ取りを始める。コモディティの出来高が減ってからは、サヤ取りの技術を応用し、リスク管理を徹底したトレードを実践している。現在はイベントトレードをメインに売買し着実に利益を積み重ね過去十年以上年間プラスを維持し続けている。 サヤ取りの秘密を暴露しすぎと一部の投資家から怒られた話題の本『サヤ取り入門』のリニューアル版『サヤ取り入門 [増補版] 』は、発売以来ベストヒットを続けている。そのほか、著書に『マンガ サヤ取り入門の入門』、『マンガ 商品先物取引入門の入門』、『イベントドリブントレード入門』(全てパンローリング)などがある。
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『羽根英樹のイベントドリブントレードブログ』
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8月29日投資戦略フェア イベントドリブンの世界の捕捉 08月31日
8月29日投資戦略フェアをご視聴いただき様ありがとうございました。
時間の関係もあり、当日充分に説明できなかったところをこの場で捕捉させていただきます。不明点等あればコメント欄でご質問ください。
●ヘッジについての補足
今回はボラティリティニュートラルで、ヘッジする方法をお話ししましたが、これのメリットについて補足します。よく使用されるベータニュートラルでは、ベータ値が公開されている日経225やTOPIXであるなら、それを使えばいいのですがあまり公開されていない指数先物。例えば日経400などでヘッジする場合自分で計算する必要があります。更に言えば、公開されているベータ値は算出期間が1年以上と長いので、直近の動きで過去のベータ値から大きく外れていても反映されにくいです。従って短期の売買で使うに場合に注意が必要になります。この点ボラティリティニュートラルなら、自分でATRの期間を短く設定すればより直近の動きが反映されます。また個別株の空売り。例えばファーストリテイリングをショートするなど個別株をヘッジに使うことも可能になります。もっともこれはサヤ取りの範疇に入るかと思います。個別株には会社独自のイベントリスクがあるので、あまりお勧めはできません。
また損切りの代わりにヘッジが良いのではという意見をいただきましたが、これは違います。損切りとヘッジは全く別物です。損切りのタイミングでヘッジしたのでは遅すぎます。またヘッジしていても損切りする必要に迫られる場合もあります。
●ニチイ学館のMBOの補足
ニチイ学館のMBOについては、TOB発表後、市場の株価が公開買い付け価格を超えました。この時点で大口のアクティビストかファンドが買っているのでは?と考えていましたが、どこからも大量保有報告書が提出されませんでした。そしてそれは最後まで出て来なかったのです。通常、市場株価が公開買い付け価格を超えてそれが続く場合は、買っているアクティビストなりファンドなりの持ち株が発行株式数の5%を超えた時点で大量保有報告書が出てきます。持ち株が5%を超えた場合には5営業日以内に提出することが義務付けられているからです。例えば一昨年の廣済堂のTOBの時には、旧村上ファンドのレノや南青山不動産から提出されました。ですからニチイ学館のTOBはちょっとした不気味さがありました。正体不明のどこかが何かを仕掛けてくるのでは?という期待が常にあったと言えます。またこのTOBは、当初からニチイ学館創業家の相続対策だと報じた経済誌があり、これが本当だとすると是が非でもMBOを成功させなければならないという足かせがあったことになります。従って、更なる高値での買付け価格の変更や敵対的TOBを仕掛けられるのではないかという期待があり、市場価格が公開買い付け価格を上回っていても、買う価値はあると判断しました。結局ニチイ学館は買付け期間の延長と買付け価格の上乗せを実施しさらに、同社の大株主のエフィッシモと応募契約を結びました。これで成立の可能性は非常に高くなりましたが、この時点では正体不明の買い上がった主体が敵対的TOBを仕掛けてくるかもしれないという期待がまだ少し残っていたのです。しかしそれも、翌日からの市場株価が新たに引き上げられたTOB価格を割ってきたことから、ほぼ可能性はなくなったと考えました。何故ならセミナーでもお話ししたように、個人も法人も市場株価がTOB価格より上回っている間は応募しないというインセンティブがはたらくのですが、TOB価格を割り込んでしまえば、応募したほうが有利なわけですから、応募数がぐっと増えるはずです。そして締め切り日の前日、ベアリングという投資会社がニチイ学館の創業家に現在価格を上回るTOBを提案しているというニュースが流れました。おそらくはベアリング社のリークであろうこのスクープを受けて市場株価は大きく値上がりしました。しかしニチイ学館からIRが出て、そんな接触は受けていないという完全否定されてしまいました。株価は市場価格を上回ったまま、TOBの成否発表を待ちます。そして成立の発表が流れ株価はTOB価格を再び下回る水準まで下げました。このスクープはかなり不可解です。本気でにニチイ学館に対してMBOを持ちかけているなら、情報の発表はニチイ学館がTOB価格の引き上げを発表した直後でしょう。株価が下がって、締め切り直前のタイミングでは遅すぎます。結局私は、この締め切り直前の上がったタイミングで9割ほど売却しました。TOBはほぼ成立すると考えたからです。では何故1割残したかと言えば、未だ大量保有報告書が出ていない不気味さがあったからです。何かを仕掛けてくるかもしれないという思いが発表まで1割残したということです。
●ファミリーマート
ファミリーマートのMBOはセミナーでも言った通り、初めから成立可能性が非常に高い案件でした。というのも通常設定するマジョリティオブマイノリティ条件も設定せず10%ほどの応募があれば成立してしまうというものです。TOB発表後、市場株価はTOB価格を超えます。実はここで私は一般信用を使って空売りを仕掛けたのですが、見事に踏み上げられ損切りさせられます。その後も上昇し、今度は押し目を買いに行ったらそのまま下がってしまうという「往復ビンタ」をくらいます。その後は、伊藤忠の頑固なまでの押しで買付け価格は据え置きです。締め切り直前にTOB不成立の不安からかTOB価格を割って下がりました。そこは成立の可能性が非常に高いとみて買いました。そして成立。なんとか一矢報うことができました。直前の下げがなければ、損失の大きい案件になるところでした。
●チャットで質問いただきながらお答えできなかった大戸屋のTOBについて
コロワイドが大戸屋に対して買取株式数上限下限ありのTOBを仕掛けています。大戸屋は反対しているので敵対的TOBです。当初の締め切りは8月25日でしたが、9月8日まで延長すると同時に下限買取数を引き下げました。これは、当初最低買付け数より応募がすくなかったからだと考えられます。通常このような上限と下限のついたTOBで市場価格が買取価格を下回っている状態ですと、上限も超えて成立し、TOBに応募しても全数は買い取ってもらえず、買い取られなかった株は返却されるというケースが多いのです。ところが今回は応募数が下限にも届かなかったという事でレアなケースだと思います。大戸屋は、株主優待の条件も良く、手放さなかった個人投資家が多かったと考えられます。次回締め切りまでに応募が下げられた下限に達すれば成立します。成立する可能性は高いのですが、万一成立しないと、市場価格は下がることになるでしょう。また上限を超えた場合は超えた分は買い取られないので一部返却されるリスクもあります。それらを割り引いても資金的に余裕があるのなら市場で買って応募するというのは悪くないと思います。
●半沢直樹の倍返し饅頭はどこに売っているのかとDMをいただきました
東京駅八重洲口地下のTBSストアで買いました。もちろん赤坂のTBSの中でも売っているはずです。
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投資戦略フェア2020オンライン 08月28日
明日8月29日投資戦略フェアがオンラインで行われます。
事前登録が必要で下記URLでお願いします。
http://www.tradersshop.com/topics/expo2020/
ライブ配信で私は15時15分から、イベントドリブンの世界をお話ししたいと思います。
今回はヘッジ、イベントの考え方、TOBについてです。TOBは細心の事例をお話しする予定ですので、どうぞご期待ください。皆様のご視聴をお待ちしております。
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ファミリーマートのTOB 08月25日
ファミリーマートのTOBですが、マジョリティオブマイノリティが設定されていませんでした。マジョリティオブマイノリティとは買付側及びその関係者以外のマイノリティ株主の株数の内、半分以上の応募がないとTOBが成立しないする項目です。経産省の指針でもこれを設定することを推奨してます。もしマジョリティオブマイノリティを設定すると、パッシブの持株がマイノリティの多数を占めることになり、TOBの成立が難しくなります。そこでこのパッシブの持株が多いことを理由にマジョリティオブマイノリティを設定しませんでした。この事は公開買付説明書に明記されています。
しかしこれを理由にすると、大型株でパッシブが多く持っている銘柄、特に日経225の指数寄与度の高い銘柄は、マジョリティオブマイノリティを設定しなくてもTOBを実施して構わないのかという事になります。変な前例を作った事にならないと良いのですが。
通常はマジョリティオブマイノリティを設定しないと、アクティビストから叩かれやすくなるので、設定しているTOBの案件が多いです。
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ニチイ学館のTOB-二つの不可解な点 08月18日
ニチイ学館のTOBは8月18日に成立の発表がありました。公開買い付け発表当初より、市場価格が買い付け価格を超えた状態が続き、また買い付け価格の引き上げもあり、久々に盛り上がったTOBだったと言えます。しかしいくつかこのTOBには不可解な点があります。一つ目は、公開買い付け価格を超えて買っていた主体がよくわからないということです。公開買い付け価格よりも上で市場価格をキープするにはそれなりの資金が必要です。通常このような場合、保有割合が5%を越えると大量保有報告書の提出が必要になります。したがってこれを提出した時点で誰が買っているのかが判明します。例えば一昨年今回と同じベインキャピタルが手がけた廣済堂のTOBの場合は、レノ、南青山不動産といった旧村上ファンド系から大量保有報告書が提出されました。しかし今回のTOB期間中どこからも大量保有報告書は出ませんでした。では、既存のニチイ学館の大株主が買ったのでしょうか?ニチイ学館の大株主には、アクティビストで有名なエフィッシモがいます。当初、エフィッシモが買い増しているのではないかとも思いました。既存の保有割合が5%を超える株主は1%の変動があれば、変更報告書を提出する必要があります。この変更報告書もどこからも出ませんでした。これでエフィッシモの買い増し説も消えます。他に考えられるのは、複数のどこかのファンドが大量保有報告書を提出しなくてよいギリギリのラインで買っているか、もしくは単に大勢の個人が群がって買って株価を支えているかです。後者は非常に考えにくいです。個人の資力ではニチイ学館ほどの時価総額の会社を買い支えるのは、ほぼ不可能です。1日2日なら支えられるかもしれませんが、それなりの期間、買い続けるのは非常に困難です。私の推測ですが、保有割合5%未満をキープしながら買っていたファンドの一つが、買い付け価格の値上げを要求していた、リムアドバイザーではないでしょうか。もちろん他にも買っていたファンドが複数あると考えます。
もうひとつ不可解な点があります。買い付け最終日前日、ベアリング・プライベート・エクイティ・アジアという投資会社が、ニチイ学館の創業家に対して現在の価格を上回る水準でのTOBを提案しているというニュースが流れました。これのどこが不可解なのかというと、情報を発信するならもっと早い段階でするのが普通だと思われるからです。ニチイ学館側が買い付け価格を引き上げた後から、株価は新しい買い付け価格を割っていました。TOBが成功してしまったら、全ては終わるのですから、この時点で発表するのが妥当だと思うのです。投資家はTOBに応募するかどうかは、市場価格と買い付け価格を天秤にかけます。株主が上場企業の場合でも、市場価格より買い付け価格が上回ってこそ応募することに合理性が生まれます。市場価格より買い付け価格が低い状態で応募をすれば、株主から背任行為ととられかねないからです。逆に言えば、TOBの買い付け価格の値上げ交渉をするには、市場の株価を公開買い付け価格より下がってはマズイのです。
このニュースに対してニチイ学館側からは、そんな話は聞いていない旨のけんもほろろな、IRが出されました。つまり、ベアリング・プライベート・エクイティ・アジアはあくまで創業家に対してコンタクトを取っていたのであって、ニチイ学館の経営陣とは話をしていないことになります。しかしこのニュースによって、実際に買い付け最終日に株価が大きく値上がりしました。これにより売り抜けることができた人がいた反面、買い付け価格の値上げを期待して当日買い付け価格以上で買った人は損失を被ったわけです。うがった見方をすれば、TOBの可否など関係なく一時的に株価を上げるためだけに、メディアにニュースをリークしたのだとすればファンドの行為は非常にアンフェアです。この点後味の悪いTOBになってしまいました。
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